7.その少年は2
タイトルを変えました。
「さて、これが一体なんなのか教えてくれるかしら」
ルシュさんは機械を手に持ちながら、そう尋ねてきた。
「これは、簡単に言えば発言禁止ワードを発言したときに、その人を殺す機械ですね」
「盗聴されているってこと?」
「いえ、盗聴しているのではなく、機械が言葉を認識しているようです」
僕も詳しい仕組みは知らないが、体内を伝わる音を認識しているらしい。
あと、一応生体反応も感知して、生きているかどうかも情報が行くようになっているが、これを話すとどこに情報が行っているのか聞かれるだろうから、黙っておこう。
もしかしたら、もうわかっているかもしれないが、巻き込みすぎるのもよくない。オリヴィアの話をした時も、「調査隊により監禁されていたから連れ出したが、調査隊はオリヴィアを連れ戻そうとしている」と少し誤魔化した。
「盗聴されていないならよかったわ。でも、殺す機械だなんて物騒ね」
「中に刃物が入っていて、それで首を切るようです」
「調べたの?」
「えぇ。一応…」
「ふーん。刃物が入っているのは危ないわね。気を付けて調べないとね。…さて、機械も外したし、これで何か話してくれるのかしら」
危ないとわかってても調べるのか…。
「オリヴィア、この後どうするの?」
オリヴィアが自分でやるって言ってたけど、どうするつもりなんだ?
「話してくれルのをマツ」
「「「え」」」
「てっきり吐かせるんだと思ってたんだけど」
ルシュさんがそういうとオリヴィアは
「それハできない。したくない」
「じゃあ、さっきは何してのかしら」
オリヴィア曰く、催眠術をかけて力が抜けた状態にし、血流や反射などを見ていたそうだ。機械がある場合、通常よりも状態は少し悪くなるらしい。おそらく、敏感なオリヴィアだからこそわかることだろう。
オリヴィアはまず彼が自分と同じ立場の人かそうではないのか確かめたかったようだ。こちら側であれば、機械が埋め込まれている可能性が高いはずで、話したくても話せない状況かもしれないと思ったそうだ。こちら側でなければ、諦めるつもりだったらしい。
いつも何考えているのかわからないし、何も考えていないのかと思っていたが、思っていた以上に色々考えているようだ。
まぁ、でも、色々話しすぎだ…。
「へー。そういうことだったのね」
「あ、あの…ルシュさん…」
「…大丈夫よ。私が追っている奴らは、君らを傷つけた奴らみたいだから」
「え…?」
「初めは証拠もなく、私の予想が外れてる可能性もあったけど、でも、この機械に書かれた文字見て確信した」
「あ…」
「エレミック帝国にあるグリア研究所」
ルシュさんは機械に書かれた文字を僕に見せながらそう言った。
なんだ、ルシュさんもそうだったのか。
というか、『君ら』ってことは、僕もグリア研究所に関係していることはバレてそうだな…。
「…ちょっと安心しました。元々、無関係な人を巻き込みすぎるのもよくないとは思っていましたしね。それにルールの1つで『突然手を切ることもある』って言われて、危険だと早々に思われて協力してもらえなくなったら嫌だなって思っていたので」
「あはは。情報は大事だもんね」
「えぇ、本当に」
「さーて、私にも重要な情報を持っているこの少年はどうしようか」
少年はまだボーっとしていた。
揺さぶったり、肩を叩いたりしたがなかなか意識が戻ってこない。麻酔は部分麻酔なので、麻酔のせいではなく、オリヴィアの催眠のせいだろう。
「オリヴィア、どうすればいいんだ?」
「んーとね、こうする」
オリヴィアはそういって、思いっきりデコピンをした。バチーンと大きな音を立て、少年は後ろに倒れた。
「ちょ、ちょっと!!オリヴィアは結構力強いんだから、そんなことしたらダメだって!!」
華奢な体に対して力はかなり強いことを知っている僕は焦り、急いで少年の元へと駆け寄った。
「な、なんだ!!?くっそいてぇ!!」
さすがに少年は起きたようだ。
まぁ、あんなデコピン食らったら起きるよな…。
「大丈夫か?」
額は赤くなっているが、頭蓋骨われてないよな?
そう思い、少年の額を触り、傷の確認をしようとしたが、
「触んな!!!」
少年は大きな声でそう叫んだ。
「意識飛んでたみてぇだが、おれに何をした」
少年は僕たちを睨みつけた。10歳くらいとは思えないほどの鋭い目つきだ。
思わずビクッとなってしまった。
「これ、なんだと思う?」
ルシュさんは少年から取り外した機械を見せながらそう言った。
少年は、初めは何を言っているのか理解できていなかったが、徐々に「もしかして」と気づき始めた。
「そ、それ…。は…?なんで…」
「そこのサングラスの彼女がこれに気付いて、取ってって言ったのよ」
ルシュさんがオリヴィアの方を見ながらそう言った。
「ワタシはそれがあるかラ話せナいって思ったから、そうしただけ。でも、コれで自由よ」
オリヴィアは少年に向かってそう言った。
すると、少年は涙を流しながら静かに泣いた。
やはり何か事情があるようだ。
まぁ、でもこれで機械によって殺される心配がないから助けを求めることもできる。ただ、機械を外したためあいつらには「死んだ」という情報は行くが、死んだとは思わないだろうな。既にオリヴィア時に僕が外すことができるっていうことがわかっているためだ。
僕らは初め、おそらくは『オリヴィアは死んだ』と思わせることができたために、数か月は普通に過ごすことができた。でも、この少年は無理だろうな。助けを求めることはできても、命は狙われる。自由だが、一般的な自由ではない。
「事情がありそうね。落ち着いたらゆっくり話しましょう」
ルシュさんはそう言って、少年の縄をほどいた。
ウィリスさんはお茶を用意し始め、オリヴィアは少年のそばにある椅子に座った。
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