4.ルシュ
1時間ほど歩きニフェカに着くと、僕らはまず西にあるアスカルというカフェに向かった。
「えーっと、街の西側に来たけど、どこだ?」
「迷っタ?」
「迷った。人に聞こう」
僕は近くを通りかかった青年に道を尋ねた。
「そのカフェなら、この道をまっすぐ行って、突き当りを右。またしばらくまっすぐ進み、本屋のところで右に曲がるとありますよ」
「ありがとうございます」
思ったよりも近いところまで来ていたようだ。
本屋のところを曲がると路地裏のような薄暗い道が続いていた。
「えーっと、この辺のはず……あっ、ここだ」
カフェ アスカル。
お洒落な外観をしているが、窓はなく、少し入りにくい雰囲気がある。
カランカラン。
「いらっしゃいませー。2名様ですか?」
店に入ると、ショートヘアの金髪の若い女性が一人、働いていた。
「ルシュという方に会いたいのですが」
そう伝えると瞬時に鋭く冷たい目つきへと変わった。
「…誰の紹介でしょうか」
「シギという少年です」
「…シギですか。あなた方のお名前を教えていただけますか?」
「僕はフォルスと言います。こちらはオリヴィアです」
「ありがとうございます。少々お待ちください」
彼女はそういうと電話をかけ始めた。
「ええ、そうよ。……うん。…あー、わかった。うん……。了解」
彼女は電話を終えるとこちらに来て
「私について来てください」
と一言だけ言うと、二階へと上がっていった。
僕らも彼女について行き、二階へと上がると廊下の両側と一番奥に扉があった。
彼女が一番奥の部屋をノックする。
「連れて来たわ」
「…ありがとう、入って」
そう言われて入ると整理整頓された部屋の奥にある机でパソコン作業をする眼鏡をかけた女性がいた。
彼女が"ルシュ"か。
「要件は何かしら」
彼女は作業を続けながら僕らに尋ねた。
「シギという少年から色々サポートしていただけると聞いて来ました」
「ふーん。別にサポートしてるわけじゃないけどね。ただ、目的のために協力し合っているだけよ。私のとこに情報を持ってきてもらい、必要な人に必要な情報を渡す。初めは少人数だったからよかったけど、いつの間にか大きなコミュニティになって、管理するのが大変になっちゃったのよねぇ。ま、そんなわけで、私らはお互い協力し合ってるの。もし、情報が欲しいなら、あなたにも情報を集めてもらうけど、いいかしら?」
「は、はい。大丈夫です」
「じゃあ、まずはあなたたちのことを教えて」
僕は彼女のこと、これまでのこと、今後のことについてルシュさんに話した。
一応、研究所名は隠し、古代人であるがために研究サンプルとして扱われひどい状況だったことだけを話した。
「なるほどねぇ。また厄介なものを抱えた人たちが来たもんだ…。さて、協力関係になる前に、約束してほしいことがあるわ。まず、無理に情報を集めなくてもよいこと。私らのことは他人に言わないこと。そして、私が突然手を切ることがあっても文句を言わないこと。以上よ」
「え、最後のは一体…?」
「私も他人のことに首突っ込みすぎて死にたくないもの。危険だと思ったら関わるのやめるのは当然でしょ?」
「なるほど。それもそうですね。わかりました、お約束します」
「よし、じゃあ、今日から君らも私らのコミュニティの一員ね。情報伝達には兄が作製した通信機器を使っているわ。あなたたちにもそれを渡しておくわね」
ルシュさんから渡された通信機器はメールと通話ができ、さらに盗聴防止機能もあるらしい。ルシュさんのお兄さん何者なんだろうか…。
僕らは今ある情報をいくつか貰い、店を出た。外はもう暗くなっていた。
早く宿を見つけないとな…。オリヴィアもだいぶ疲れてそうだ。
「オリヴィア、大丈夫か?」
「う、うン。大丈夫ヨ」
僕らは街の中心地へと向かった。
最初の方書き直しました。