19.フォルスの過去⑤
「さ、こっちにおいで~」
オエンキスに無理やり引っ張られながら、手術台へと乗せられた。
こんな状況で何が起きるかなんて、よほどの馬鹿以外ある程度想像できるだろう。
「…。カレン、妹には手を出すな」
「え~。君、あたしらに指図できる立場?」
そんなことわかってる。
「手を出すんじゃねぇ」
それでもこんな目に合わせてしまったカレンをなんとか守らないと。
「ふふふ。怖い怖い。…そうねぇ。君がちゃーんと耐えて、色々実験させてくれてる間は手を出さないわ。これでいい?」
オエンキスはにやにやと人を馬鹿にするような表情でそう答えた。信頼できない。でも、これ以上はどうすることもできないのも事実だ。
「信頼できないけど、絶対守れよ」
「はいは~い」
痛い…。痛い痛い…。つらい…。体のあちこちが痛い…。
あれから週に2回、あの部屋に連れて行かれる。
よくわからない薬物を打たれ、飲まされ、体をいじられる。
いつここから抜け出せる?なんでこんなことになった?もう死-
「おにぃちゃん…?」
「あ…。カレン、どうした?」
「…だいじょーぶ?」
「…大丈夫だよ」
もう作り笑顔もできなくなった。最近は体中が痛すぎて眠ることもできない。
初めはただ何か薬物を打たれたり飲まされるだけだった。嘔吐や腹痛、発熱と色々な症状は出たが、なんとか耐えれる程度だった。しかし、1ヶ月くらい経ったときから、あちこち体をいじられるようになった。初めは右足、次は左足。同時に薬物も投与された。
いつまでこんな生活が続く?なんで僕なんだよ。もう逃げてしましたい。無理だと言ったらやめてくれるか?いや、僕の次はカレンだ。カレンはなんとしてでも守らないと…。それに、オエンキスが嫌っているここの所長が帰ってくる。そしたら、きっと…。
ーある男視点
フォルス君たちが誘拐されてから1ヶ月半が経った。
「所長。長期出張お疲れ様でした」
ここの所長が帰ってきた。
「あぁ。こっちは大丈夫だったか?イーグリー」
「あ、はい。特に問題は起きていません」
オエンキスがフォルス君にやっていること、これまでに何人か人を殺していることを話したいところだが、首に埋め込まれた機械のせいでそれができない。
「そうか。オエンキスあたりがまた何かやらかしてないか心配していたが…。君も彼女が上司で色々大変かもしれないが、倫理観を持って研究に励むように」
「はい。…あの」
「ん?なんだい?」
「オエンキスさんは色々問題行動が多い人ですけど、クビ、とかにはしないんですか?」
「…私としては彼女のような研究者にはいてほしくない。でも、私には彼女をクビにできるような権利は持っていないんだよ。そして、私達が所属するこの研究所では、彼女みたいなのが普通だ。嫌になるよ」
「そう思っているのに、なんでここに居続けるんですか」
「昔みたいに純粋に人の病に関する研究をする、人々の希望となる研究所に戻したいのと、これ以上暴走させたくないからだよ。まともな人がやめていってから、非人道的な実験があちこちで増えている。私達みたいな人間がブレーキ役となってやめさせないと、この研究所は恐怖を生み出す化け物になってしまう。それだけは嫌なんだよ」
「なるほど」
「イーグリー、君はなぜだい?なぜここに居続ける」
「僕も所長と一緒です」
「そうか」
「はい。ただ、僕には何の力もありません。もしものときは助けてください」
「?あ、あぁ」
「では、失礼します」
どうにか所長に気づかせるしかない。俺にできることはそれしかない。フォルス君、ごめんな。
ーフォルス視点
誘拐されてから半年が過ぎた。助けは来ない。でも、最近手術室に連れて行かれる頻度が減った。おそらく、ここの所長が帰って来たのだろう。もう少しだ。もう少し耐えれば助けてもらえる。
そう願い続けたがいつまで経っても、この部屋に来るのはオエンキスの部下である黒髪のガタイのいい男だけであった。
カレンには色々な昔話を聞かせたりすることで、半年くらいはどうにかなった。しかし、カレンも次第にわかってきたのだ。どういう状況なのかが。
カレンは次第に布団にくるまり、塞ぎ込むようになった。
「カレン、お兄ちゃんが面白い話をしてあげよう」
「いい。いらない」
「…」
「いつになったらかえれるの?」
「わからない」
「なんでこんなところにいなきゃいけないの?」
「わからない」
「おうちに…かえりたいよぉ…うっ…うっ…」
「ごめんな、カレン」
今の僕には何もできない。
助けを待つしかないんだ。
読んでくださりありがとうございます。
ちまちま物語を進めて行きます。
よろしくお願いします。




