18.フォルスの過去④
次の日。
ドンドン。
扉を強く叩く音で僕とカレンは目を覚ました。
「飯だ」
誰かはわからないが、そう言って扉横の下の方にある小さな扉から食事を入れてきた。
あー、これはこう使うものなのか。
人が通れる大きさではないし、ここから出るのは無理そうだな。
「おにぃちゃん?」
「あ、おはよ、カレン。ご飯食べよっか」
カレンをなるべく不安にさせたくないと思い、作り笑顔でそう言った。
「…うん」
運ばれてきた朝食はパンとスープだけだった。スープにはほとんど具はなく、非常に寂しいものである。それでも、何もないよりはマシだな。
「ん?トレーに何か書いてある。…名前?」
パンとスープが乗せられているトレーには、僕とカレンの名前が書かれていた。
少しスープの量に違いはあるが、それが理由だろうか?
「はい、カレンの分だよ」
「ありがと…」
カレンに食事を渡し、僕も朝食を食べ始めた。
こ、これは、あまり美味しくない…。スープの味は濃いし、パンはパサパサしている。
おそらくだけど、こんな生活がしばらく続くのだろう。…いや、これよりももっとひどい生活が待っている可能性は高い。あいつらがどういうつもりで僕らを監禁しているのかは知らないが、このまま家に返してはくれないだろう。
どうにか妹だけでもすぐに家に帰してあげたいけれど…。どうしよう。頼れそうなのは昨日「わりぃな」と小声で言った、長身の金髪の男とここの所長くらい…かな。
金髪の男は他の人と違って罪悪感のようなものを持っているみたいだし、助けてくれるかもしれない。所長の方は、昨日の話を聞く限り、オエンキスは所長にこのことがバレたくないと思っているようだし、こういった人の誘拐を許さない人なのかもしれない。
ただ、帰ってくるのは来月末。それまで耐えれるだろうか。もちろん、どっちも頼れないこともあり得るけど。
あー、お父さんたちも心配しているだろうなぁ…。
…あ!そうだよ。お父さんたちがただ待っているなんてことはあり得ない。必ず警察に連絡して捜索するはずだ。僕らが森でいなくなったことは、リック達が伝えるだろうし、その森を中心に捜索すればきっと…。
大丈夫、大丈夫。助かる。
朝食を食べてどれくらい経っただろう。時計がないせいで今何時なのかがわからない。
カレンはずっと暇そうにゴロゴロしたり、僕の髪で遊んだりしていた。
「んー。おなかすいた」
「お腹すいた?もう少ししたらきっとご飯くるから、もうちょっと待ってね」
「えー」
「もうちょっとだから、ね?」
「むー。わかった」
カレンはまだ幼いし、普段はわがままなところもあるが、今はすごく我慢してくれている。わがままが言えない、言ってはいけないと感じているのだろうか。
そんな風に考えていた時、ちょうど扉をドンドンと叩く音がした。
「飯だ」
また誰かはわからないが、男がそういって朝食と同様にご飯を中に入れてきた。
食事はパンとスープ、そして鶏肉。茹でた鶏肉に塩を振ってあるだけのシンプルなものだった。そして、またトレーには名前が書かれていた。
やはり美味しくない。
カレンも少し不満そうな顔をしながら食べていた。ただ、カレンには悪いが、不満を持ちながらも一生懸命モグモグしてご飯を食べる姿は、なんだか可愛くて癒されたのだった。
「ふわぁ」
昼食を食べ終わってしばらく経った時、カレンは眠そうに大きなあくびをした。
「眠い?」
「…うん」
「じゃあ、ベッドで寝ておいで」
「うん、ねる」
カレンをベッドに寝かせたすぐ後に、また扉を叩く音がした。
「来な」
オエンキスの部下の一人だ。黒髪短髪のガタイのいい男。声の感じから食事を運んでいるのは、この男だろう。
僕はその男に手錠をかけられ、彼の後ろについて行った。
手錠なんてかけなくても、何もしないっての。というか、できない。こんなに体格差があるんだ、敵うわけがない。
しかし、カレンが寝てすぐに来るなんてタイミングが良すぎる。食事に睡眠薬でも入っていたのだろうか。それとも、監視カメラでもあったのだろうか。
一応後で調べてみるか。
複雑な廊下をしばらく歩き、ある部屋に到着した。
入った瞬間にこれから何をされるのか、どんなことが自分の身に起きるかなんとなくわかった。
「ようこそぉ。我が研究室、いや、手術室へ~」
部屋の中で待っていたオエンキスがそう言った。
あぁ、家に帰りたい。
ありがとうございます!




