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連覇、最近モテモテなんですけど!(SS2)

バスに乗った四人は一番後ろの長い座席に座った。

連覇を挟んでエリと杏は左右に座る。

「あー!!もう!杏、連覇にくっつきすぎ!!」

「いいじゃーん。連覇だって嫌がってないし?」

「ね・・・ねぇ!二人共・・・喧嘩しないでよぉ・・・。」

今日も連覇を挟んで杏とエリは喧嘩をしている。

あの事件以来、杏は連覇にべったりと付きまとうようになった。

それをよく思ってないエリは連覇を挟んでいつも喧嘩になる。

(しー!!バスの中は静かに・・・!)

心琴は慌てて二人を小声でなだめるが一向に収まらない。

「ヤダ!!今日はエリ、連覇と遊ぶ!!」

「ウチだって連覇と遊ぶし?エリは背が低いから幼児用のプールに行ってればいいじゃない!」

徐々に言い合いは悪質になっていく。

エリと杏のやり取りは連覇を挟んでどんどんエスカレートする。

そんな二人を心琴はもう少し大きな声で注意した。

「二人共!!ダメだよ?ほら、周りの人もこっち見てる!」

エリと杏はそれでも口論を止めない。

「ヒドイ!!エリ、背低い、気にしてる!!杏は意地悪!!」

「意地悪!?いじわるって何よ。本当の事じゃない!」

「杏の馬鹿!!」

「エリなんか嫌い!!!」

もうただの悪口の言い合いにしかなっていない。

すると突然、間にいた連覇が立ち上がった。

「・・・ねぇ!!!・・・止めてってば!!」

珍しく連覇が声を荒げて怒った。

その表情はとても真剣だった。

「え・・・?」

「連覇?」

二人は目を丸くして連覇の顔を見る。

今まで連覇がそういう風に怒ったことは無かった。

「僕・・・マナーを守れない人・・・嫌い。友達の悪口を言う人はもっと嫌い!!」

二人をにらみつけるように言って連覇は違う席へと移動した。

「え・・。どこ行くの・・・?」

「連覇・・・?」

女の子二人はあっけにとられた。

心琴もいつもの優しい連覇から出る言葉とは思えず驚きを隠せない。

呆然とする二人に心琴はなんとか仲直りしてほしくてそっと声をかけた。

「・・・ほら。二人共?何かさ、お互いに言うべきことがあると思うよ?」

心琴に促されてエリは杏をちょっと見た。

けれども杏は連覇をじっと見るばかりでエリの事を見向きもしない。

杏のその様子にエリも再び心を閉じる。

「・・・・。」

「・・・・。」

杏とエリと連覇は一言も話さずにそっぽを向いてしまった。

(ど・・・どうしよう!?!?こんなはずじゃなかったのに!!)

心琴だけがその様子に焦るのだった。


「終着ー。市営プール前ー。」


バスのアナウンスを受けて4人は静かにバスを降りた。

「ね、ねぇ・・・みんな?」

おずおずと心琴が声をかける。

「仲直り・・・しない?このままじゃプール楽しくないよ?」

そう言うも、杏も連覇もエリも一言も発さない。

(うー・・・まいったなぁ!!)

心琴の内心はパニック状態だ。

何とか丸く収まる方法を考えるが、いい方法は浮かばない。

「とにかく、着替え行こうか!えっと、あっちが更衣室ね?連覇君は男子用だけど、一人で大丈夫?」

「・・・・うん。」

連覇は小さくつぶやくようにうなずいた。

そして男子用更衣室に一人で入っていく。

その背中を見送ってから少女2人を女子更衣室に連れて行く。

「・・・。」

「・・・。」

エリも杏も落ち込んだ様子で黙々と着替えをした。

年上の心琴はすでに水着を着ていたので上着を脱いで二人が着替え終わるのを待った。

その間も心琴は説得を止めない。

「ねぇ・・・。ちょっと聞いてくれる?」

心琴はなるべく優しく話しかける。

「どうして連覇君があんなこと言ったか、解るかな?」

黙って着替える杏とエリは一瞬だけ手が止まる。

「大事な友達が喧嘩して悪口を言いあってたらどう思うかな?」

「・・・それは・・・。」

「・・・嫌・・・だよね。」

エリと杏は少しだけお互いを見る。

けれどもすぐには素直になれないらしく、また二人は黙ってしまった。

その様子に心琴は軽く息を吐いた。

「よし着替え終わったね?連覇君も待ってるだろうし、行こうか!プール!」

明るい声でそう言うと心琴達は女子更衣室を出た。

男子更衣室の入り口では連覇が地面を見たまま立っていた。

3人が来たのを見てゆっくりと付いてくる。

連覇もまだ素直になれそうにない。

(時間が解決してくれる・・・かなぁ?)

首を傾げる。

今日は保護者枠が自分しかいない事に心細ささえ感じる。

誰もが一言も発さず更衣室を後にした。


◇◇


市営プールは結構広かった。

大人用の流れるプールに、競泳用のプール。そして小学生くらいが遊べる深さのプールに、幼児用のプールの4種類がある。

心琴は3人を小学生くらいの子を対象に作られたプールエリアへと連れて行った。

「さ!!みんな、ここで泳ごうっか!」

軽く準備運動をさせた後、心琴は皆を自由に泳がせてみることにした。

連覇は元からプールに入りたかったのもあり、さっそくプールに入っていった。

プールに入ると気持ちよさそうな顔で笑っている。

(あ、良かった。連覇君少し笑ってる。)

心琴はその表情に安堵した。

杏も連覇に続く。

胸くらいの水位で足が付くようで、水に徐々に体を慣らしながら入る。

「うーん!気持ちい!」

杏は独り言を言うとめいいっぱい伸びをした。

(杏ちゃんも気持ちよさそうだし、大丈夫だね!)

杏は普通に立って胸くらいの水位で、連覇は首くらいの水位で足が地面に届く。

しかし、背の小さいエリはプールに入って驚いた。

ハシゴの最後の段から足を離した瞬間、頭まですっぽりと水に浸かってしまったのだ。

「わ!!!」

エリは浮き上がって慌ててプールの縁に捕まった。

「プッ・・・。」

その様子を横目で見ていた杏が噴き出した。

悪気があったわけではないが、本当に頭まですっぽりと入るとは思っていなかったので可笑しかった。

さっき言ってた悪口が現実のものになってしまったのだ。

「・・・ひどい・・・。」

それを見たエリは悔しそうな顔で怒った。

すぐにプールから出て行ってしまう。

「エリちゃん!?」

心琴は丁度その時エリを見ていなくて何が起きたかわからなかった。

けれども、慌てる杏を見てなんとなく想像はついた。

「あ!待って!今のは違うの!!」

杏は悪気があったわけじゃない事を言おうとしたが、もうすでに遅かった。

エリは走り去ってしまった。

「あ・・・。」

エリの背中が小さくなる。

周りを見ると心琴と連覇が少し怒り気味な目で杏を見ていた。

「今のは・・・流石に傷つけちゃったよね・・・。」

そう言うと、杏はプールから出て、エリを追いかけるのだった。


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