幕間 最悪の日
またまた短いです!
ご了承下さい!
粉塵と鮮血の匂いが、呼吸と共に鼻腔を擽る。
耳に聞こえるのは、人々の命がまるで灰のように奪われる、蹂躙劇の残滓のみ。
天空には一つの光源。絶対を自負する、この破壊を巻き起こした悪夢。
文字通り、夢だと思いたい現実が、無情に俺に直視させる。
手元には、愛おしい人の頽れた身体が、冷たくなりながら抱き寄せられていて。
左目に映る景色は、血で濡れているのか真紅に染まっている。
嘆きも、絶望も、後悔も、慟哭も、絶叫も、恐怖も、憤りも、怒号も、無謀も、懺悔も。
俺の中には、もはや何もなかった。
ただ現実に絶望する、無慈悲な虚構が掬い、己の内側を侵食していく。
涙も枯れ果て、理想も潰え、そして愛しい人まで失って。
残ったのは、空っぽな現実だけ。
だが。
天空に戴くそれは、こちらを見た。
空虚に押しつぶされる俺を、それは無感情に見た。
そして、右に持った剣を振り上げる。
殺される。
真っ先に、俺は感じ取った。
だが、今の俺は、それを受け入れたいと思った。
人としてあり続ける意味を失った今、俺に残されたのは空虚だけ。
そんな俺なら、ある必要もないのではないか。
白とも黒ともつかない、曖昧で蒙昧な感情が、俺の中に現れた。
だから、受け入れる。
無様な死に様を肯定する
ようやっと、楽になれるーー
ーーーーーーーーーー
目を覚ますと、俺は馬車に揺られていた。
夢だと理解するまでに、俺は数刻かかった。
久しぶりに、あの夢を見たな。
現を実感しながら、俺は馬車の外を見やる。
すると、寝る前と比べてだいぶ変わっていた。
平原だったはずの外界は、今は森林になっている。山間なのだろう、斜面の勾配は控えめながら、確かに傾いている。
この馬車に乗った時に確認した話だと、確か目的地は山の中にあるらしい。
つまりは目的地に近付いたというわけだ。
ふと気になって、乗っていた彼女の方を横目に確認する。
すると案の定、すやすやと可愛い顔をして寝てしまっていた。恐らく俺と同じで、春の陽気に当てられたクチだろう。あの陽気の中、何もやることもないのに起き続けるなんて、無茶もいいところだ。
まあ、彼女はだいぶ緊張していたようだったし、このくらいは見過ごしてやろう。
暫くして、彼女が起きて慌てるまで、俺はずっと彼女の寝顔を見て楽しんでいた。
今まで書いてきた物語を読んで、唐突な欲求に任せて生まれた幕間の物語です。
このお話で、竜鬼の過去を少しだけお話しできたかなと思います。つまりは伏線です。
さて、一体彼の過去とはどんなものなんでしょうか?
詳しくは、この第一章で語っていくつもりです。
まだまだ拙い文章ですが、コメントや評価などを下さると幸いです!
皆様と一緒に、作品を成長させていきたいと思います!
よろしくお願いします!