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01-01-04 カイタ・シートーン 4

 道すがらいろいろ話を聞く事にする。



「ところで今どこに向かってるんだ?」

「……領都である、城塞都市アルハイト。この辺で一番でかい街だし、あんたと同じ『あらひと』もいるだろう。ギルドの本部もあるし」



「ギルドって?」

「……商業、薬術、錬金術、魔法、…冒険者、他にも色々。それぞれを職業としてる者の互助会みたいなもんだよ。それぞれに良いところ悪いところがあるから、入るなら気をつけるんだな。と言っても、『あらひと』なら最低一つは入ることになると思うけど」

「え?なんで?」

「おまえら、ここでの身分証持ってないだろ?」

「おお。やっぱり無いとだめなんだ」

「当然だな。ああ、もう二度と『はらへど』にやって来ないなら」

「何度も来るから」

「……そうか。ならどれかには入るんだな」

「良いところとか悪いところとか何があるんだ?」

「各ギルドに自分で聞きに行け」

「……はーい」




「魔法はこの『魔力石』で練習するとして、索敵はどうやって練習するんだ」

「……まわりに注意し続けろ」

「……嘘だろ?」

「全部が嘘ではない」

「ちゃんと教えてくれよー」

「……『魔力石』を回すのは順調か?」

「え?うん、特に問題はない」

「じゃあダメだ。とにかく自分を中心に周囲を注意し続けてろ」

「えー。魔力石がなんか関係あるのか?」

「やってれば分かる」

「あ、ちょっと白くなってない!?ほら、これ!」

「……気のせいだな」




「ここって成人は何歳から?」

「地域や状況によって違う。ただ、15にもなって何の職もついていなかったり、狩りの一つも出来ないようだと馬鹿にされる」

「そういう感じか」

「ま、『アイウルフ』15匹を一人で狩れなくても子供と馬鹿にされることはないから安心しろ」

「……何匹だったら馬鹿にされる?」

「アイウルフは強いからな。1匹でも馬鹿にはされないさ」

「そうなんだ」

「女にはもてないだろうけど」

「……」




「ところでさっきから何度も聞いてるけど、そろそろ名前教えてくれても良いと思うんだけど。俺の名前は」

「いらない」

「冷たいなあ」

「最初に言ったけど、オレは迷子の『あらひと』を街まで送っているだけだ。街の入口で別れたらもう会わないやつと名前を交わしても意味がない」

「ひどいなー。街で会うかもしれないし」

「ないな」

「何でだよ」

「何ででも」




 名前以外はちゃんと教えてくれる少年はマジいい子。

 でもなんで名前教えてくれないのかが謎。

 名前を知られると呪われちゃうとかだとやばいよなー。

 もしそうなら、そういうのはチュートリアルでちゃんと教えてくれないと。

 って、あれ?

 もしかして、今現在これがチュートリアル?


「魔物だ」


 おおっと!

 やっぱりこれがチュートリアルか!

 慌てて盾を構え、魔力石をズボンのポケットに入れて剣を抜きながらす少年の視線の先を見る。


「なんでこんな所にこいつが」


 視界の先にはでっかい蛇。

 遠近法狂ってない?大丈夫?運営。

 とぐろを巻いて逆方向を見てるけど、胴体の太さマックス1メートルくらいない?なんか、やばい感じがひしひしと。

 ……チュートリアル……だよね?


「アイスネーク。普通なら森の奥にいる強敵だ」


 少年が蛇から視線をそらさずに言った。

 え?森の奥?

 今ここ草原だよね?

 木は多くなってきてるけど、街に向かってるはずだし。


「……おい」

「どうすればいい?火の球飛ばしてもいい?効く?」

「いや、おまえは逃げろ」


「え?」


 少年、今なんと?


「オレが注意を引く。その間に逃げろ。このまままっすぐ、シダの輪木が増えてくる方に向かえば街にたどり着けるはずだ」

「一緒に逃げれば」

「あいつは俺達にもう気付いている俺達が逃げようとして背中を向けた瞬間忍び寄り喰われるぞ」


 何それ怖い。


「で、でも狼15匹を倒したんだし」

「アイウルフと違って、オレはアイスネークとは相性が悪い。オレの索敵距離とあいつの索敵距離が同じくらい、下手したらあいつの方が広い。これくらい距離があれば森の中なら木々を使って逃げられるけど……」


 忌々しげにつぶやく少年。

 相性って、持ってる武器の長さとか、使う魔法の種類とかの問題かな。


「やっぱり逃げよう」

「あいつは早い。このまま二人で後ろを向いて逃げても襲いかかられるし、後退りして距離を取ろうとしても、あいつの有効距離からはずれる前にこちらに向かって襲いかかってくるだろう」


 マジ詰んでる訳ですね。

 っていうかこれチュートリアルじゃなかった。

 運営何考えてるんだ。

 今日初プレイだぞおい。

 何のルートだこれ。


「わかったらさっさと逃げろ」

「え、でも」

「良いから行け。守りながら戦えない」

「う、うん」


 少年は一度も俺を見ないで、少し怒ったように俺に指示を出す。

 それに従って後退りし始めるが、名前聞いてないし本当にもう会えないかもしれないのかと思うと、何となく寂しい。

 ん?会えなくなる。


「なあ、一人で勝てるんだよな?」

「……」

「相性悪いって言ってたけど、勝てるんだよな?」

「……勝つさ」


 あ、嘘だ。

 ここ一時間くらいしか話してないけど分かる。

 こいつ今言ったのは嘘だ。

 つまり、勝てないって事か。


「分かった。一緒に戦う」


 特に考えないで参戦を表明した。


「は?」


 お、すげえ驚いてる。


「守ってくれなくて良い。一人でなら勝てなくても、二人でなら勝てるかもだろ」

「おい」

「どうせお前に会わなきゃさっきの狼で死ぬところだったんだ。ここで死んでも変わらない」


 デスペナルティってなんだろ。

 チュートリアル仕事しろ!

 運営すぐに来い!


「!お前」

「それに!」

「!」


 蛇を気にして大声ではないが、少し強めに少年の言葉を遮った。

 少しは年上の威厳を見せないと。


「俺達は、『はらへど』で死んでもそれは本当の『死』じゃない。生き返ることが出来る」

「!『あらひと』は『黄泉返る』。話にはきいていたが、本当なのか?」

「ああ、俺達は蘇る事が出来る。だから、もしものときは俺を囮にして逃げてくれ」

「そんな事はしない……が、分かった」


 こちらを向いてニヤッと笑う少年。

 お?

 最初に顔を覗き込んできたような年相応の表情っぽいぞ。


「戦ってもらう」

「ああ」

「もしもの時は骨は拾ってやるよ」

「ははは」


 死んだ時骨とか残るのかな?


「アイスネークの特徴の一つは、体に見合わぬ素早い動きだ」

「おお」


 そして再び蛇を見る少年。

 敵の特徴と打ち合わせですね。

 了解です。


「だけど、動きは直進だ。常に自分の正面にアイスネークを見ていれば、その盾でも防げる」

「顔でかくない?」

「飲み込むときは大口を開けるが、通常の攻撃はそれほど大きくは開けない。あいつはまずは致命傷にならない傷を与え、動けなくしてから生きたまま丸呑みするのを好むんだ」

「そ、れ、は」


 趣味が悪い殺し方だな。踊り食いが好きって。苦笑いもでないぞおい。

 マジで序盤にこんなの持ってくるって何考えてるんだ運営。









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