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02-02-36 合流・サツカ

 サツカとシーシアが三人と合流するために移動してきたとき、まだトクタは唸っていた。


「……魔力纏化の練習?」

「うんそう」


 トクタを見ながら呟いたサツカの横に並ぶマジリオ。サツカは驚く事もなくそのまま会話を続けた。


「なんで光ってるんですか?」

「不思議だよね」

「いや、不思議って」

「身体強化はちゃんと出来てるのに、何故か光るんだよ。君は何故だと思う?」

「……分かってますよね?」

「なんのことかな?」


 首だけで横を向いたサツカの目に映るのは、こちらを向いて首を傾げているマジリオ。


「……俺が話す分には大丈夫ですか?」

「んー。本当は自分で気付いてほしいところだけど、君が何を言うのか気になるからよしにしちゃおうかな」

「ありがとうございます」


 身体もマジリオに向けて軽くお辞儀をし、トクタに向かって歩くサツカ。


「真面目だねー」

「ああ」


 サツカのいた場所に立つマサオ。いつの間にかシーシアはサツカの後ろを歩いていた。


「おー。一瞬僕も気付かなかったよ。彼女、凄いね」

「サツカもなかなかだった」

「やっぱり[指揮]持ち?」

「ああ。おそらくは二人とも『技能』じゃなくて『能力』だ」

「[指揮]じゃなくて【指揮】はともかく、[気配隠蔽]じゃなくて?」

「おそらくは【隠蔽】だろうな。気配だけじゃなく、覚えたばかりの魔力を完全に隠している」

「……どこの暗殺者?」

「俺もびっくりした」


 シーシアの後ろ姿を見て苦笑いを浮かべるマサオと、驚きを隠していないマジリオ。


「僕でさえ[隠蔽]覚えるの面倒くさかったのに、『能力』かー」

「天賦の才なのか、ここにくるまでに修行して才能を開花させたのかは分からないが」

「天賦の才だと思いたいね」

「そうだな」


 じっと見ているはずなのに時折消えるシーシアの後ろ姿に、今度はマジリオも苦笑いした。





「トクタ」

「ん?おお。つっじゃない、サツカ」


 唸っているトクタとその近くで武器に魔力を流す練習をしていたカイタとラヴィが声のした方向を向く。


「……もう終わったの?」

「ああ。一応身体強化と武器への魔力纏化までは覚えた。黒鼠もシーシアと二人で三十匹くらい狩ったよって、え?なんで不機嫌?何故睨まれる?」

「はははー。こっちはちょっと苦戦したからね」

「二人は大丈夫みたいだけど?」

「色々あったんだよ」


 サツカは、乾いた笑みを見せたカイタと、目をそらすラヴィ、我関せずと唸っているトクタの三人をそれぞれに見つつもトクタに近づいた。


「今はトクタが引っかかってる感じ?」

「なんかうまくいかねー」

「んー?」


 トクタをじっと見ていたサツカが、腰につけていた短剣を右手に持った。


「片手剣腰にして、これでやってみて」

「短剣?」


 言われた通り片手剣を腰に差し、短剣を使って練習するトクタ。


「……ダメだ」

「いや、それで出来てるよ?」

「は?」


 片手剣が光っているのを見て意気消沈したトクタ。しかしサツカは真逆の事を告げた。


「どこがだよ?」


 バカにされているように感じてしまったトクタがサツカを睨むが、サツカは黙って指差す。


「あ?」


 その視線の先にある、自分の腰に差した片手剣。


「え?」

「分からない?」

「いや……自分のみ魔力だから、分かる。なんで、なんでだ?」


 腰に差した片手剣は、光らずに自分の魔力でつつんでいた。


「多分、張り切りすぎたんじゃないかな」

「え?」

「身体強化の魔法用に身体に魔力を巡らせてるだけじゃなく、服とか防具にもちゃんと魔力纏化をしてるのになんで剣には出来いのか、見てて不思議だったから、もしかしてと思って短剣渡してそっちを意識しないようにさせてみた」

「そっか……。サツカ、ありがとう」


 真剣な顔で短剣を差し出すトクタ。


「おう」


 その短剣を受け取り、剣を逆手に持ったままサムズアップする。


「トクタなら出来るよ」

「ああ。頑張る」

「いやいや、頑張りすぎない程度で」

「あ、そっか」


 トクタは引き締めていた表情を少しだけ穏やかにして、サツカにサムズアップを返す。


「そんな感じそんな感じ」

「ね、ちょっと、サツカ」

「ん?」


 トクタが魔力を纏った片手剣を恐る恐る持っているのを見ながら、話しかけてきたラヴィに意識を向けた。


「サツカ、隠してる人の魔力が見えるの?」

「いや、隠してる魔力は見えないよ?」

「でも、トクタの魔力見てるじゃない」

「んーっと、光らせないと、隠してるは違うから、多分そういう技能を持たない人のは、魔力操作のレベルによって見えるんだと思う」

「え?そうなの!?」

「多分」

「多分なのか」


 ラヴィの横にカイタが立つ。


「他に理由が見当たらないし」

「まぁ、それもそうか」


 既に自分のステータスを確認しているラヴィを見て、同じ様にウインドウを開くカイタ。


「で、あんたはいくつなのよ。私は十だった」


 顔を寄せて小声で話すラヴィ。カイタもそれにならって顔を寄せる。


「俺は十六」


 カイタの数値を聞いて眉をひそめたラヴィ。


「俺は二十六……かな」

「は?」

「は?」


 しかしサツカの数字を聞くと二人ともサツカの顔を見た。


「いや、ほら、俺の武器弓だからさ。矢が魔物に刺さるまで、矢に魔力纏化をしてないといけなくて、それが出来るようになったら上がってて」


 頭をかきつつ二人を見るサツカ。

 後ろでは再びトクタが唸り始めていた。

 






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