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02-02-27 特訓

「まずは、動きをどうにかしないと黒鼠に近付くことも出来ないかなー」


 そんな風に言いながら、マジリオがいつの間にか手にしていた小石を弾く。


「!」

「なっ」

「おっと」


 トクタが最初に反応して余裕を持って避け、ラヴィはかろうじてかわし、カイタは腕につけた盾で弾く。


「とりあえず及第点だけど、カイタはまずは盾禁止」

「え?」

「盾の扱い方はこのあと教えるけど、まずは避ける!盾使いは、状況に応じて受け止める、弾く、流す、そして避ける。少なくともこれくらいは即座に判断する必要があるけど、これくらいは避けれないとダメだからね!」

「はい」

「でも盾を外しちゃダメだよ!」


 マジリオ盾を外そうとしたカイタを止めた。


「盾は付けたまま、武器や防具は付けたまま。これ、基本だからね」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

「よろしーい。じゃあ、どんどん行くから避けてねー」


 そして喋りながら石を飛ばし始める。

 その石が魔法で作られた石であることに三人が気付いたのは、五分以上石が飛ばされ続いてからだった。





「はい終わり!」


 一五分程度石除けの訓練が行われ、受けていた三人のうち二人は肩で息をしている。


「いよっしゃ!」


 一人元気なトクタが腕を振り上げてガッツポーズをしていた。

 そんな三人に飛ぶ小石。

 今までより威力の弱いそれをトクタは避け、カイタは思わず盾で弾き返し、ラヴィは当たってしまった。


「へー」

「いまのは、ずるいー」


 しゃがみこむラヴィ。

 マジリオはそんなラヴィには目も向けずにトクタに近寄り、自分より少しだけ背の高い彼の顔と身体をじろじろと見た。


「な、なんすか」

「いや、これは良い拾いものだったかもって思って」


 怪訝な顔とトクタと、笑顔のマジリオ。


「よしよしよしよし」


 そしてマジリオは元の場所に戻り、改めて三人の前に立つ。


「最後まで全部避けたトクタは、文句なしの優勝合格!」

「よっし!」

「カイタは何発か盾で弾いたけど、それ以外は全部避けてたから合格!でも、盾使いとは半端かな」

「お?え?」

「で、片手細剣使いちゃん、ことラヴィちゃんは、ちゃんと避けられたのは七割くらいで本当なら不合格だけど、避けられなかったうちの半分は手や剣で弾いたし、普通に当たっちゃったのも急所や動きを悪くするような馬車ではなかったから、ギリギリのギリッギリで、合格にしてあげようかな」

「うれしく、ない」


 呼吸を整えつつ立ち上がるラヴィ。マジリオをにらむその顔を見て、カイタとトクタは苦笑いを浮かべる。


「[魔力操作]はね、無心になったり一つのことに意識を集中するのが取得者の早道なんだよ」

「何を、言って?」

「魔力操作がですか?」

「うん」

「?」


 マジリオは自分の言葉に反応したカイタに、笑顔で頷く。

 いまいちよく分かっていないトクタは首を傾げ、ラヴィは少しだけ悔しそうに唇の橋を歪めている。


「[魔力操作]はね、自分の中の魔力を引き出したり、自分の外にある自分の魔力と自分の中にある魔力を同化させたりとかいくつか方法があるんだけど、結局は集中していたり無心であったりする方が修得は早いんだ」

「……」


 カイタはインベントリにしまってある魔力石と、何も考えずにしていた石回しや、集中したアイスネークとの戦いを思い出す。


「でね、使い手が未熟な魔力は、強い魔力に引っ張られることもあるんだよ」


 カイタを思考の渦から引っ張り出したマジリオの言葉。

 トクタとラヴィはしっかりと理解は出来ていないが黙って聞いている。


「だから、魔力を強めに込めた石でやったんだよね」

「!」

「!」

「?」


 無言でステータスウインドウを出すカイタとラヴィ。トクタは、何かをしているように見える二人を見ている。


「上がってる」

「付いてる」


 結果に驚き思わず口にした二人。


「黒鼠は素早いからねー。それがないと次に進めなくて、餌とか罠とか用意しなきゃいけなくてめんどくさいんだよ」


 肩をすくめるマジリオ。

 一人分かっていないトクタがカイタをつついた。


「えっと、二人とも何してる?」

「ステータス確認してるの。あんたも技能のところ確認しなさい」

「お、おう」


 ラヴィに叱られ、トクタもステータスウインドウを開く。


「あー。増えた……のか。けど、グレーになってて他と違う」

「やっぱりダメだった?」

「え?あ、はい」


 そばに寄ってきたマジリオ。トクタの顔をじっと見る。


「トクタは一回も当たらなかったし、すれすれで避けるのも少なかったからね。そこまでいったらもうすぐなんだけど……」


 そしてニヤッと笑う。


「もうちょっと、特訓しようか」

「え?」

「それを使えるようにならないと、黒鼠に近寄ることも出来ないよ?特訓、するよね」

「……はい」

「よしよし。じゃあそこに立って、あ、剣も構えて。今度は剣で弾いても良いよ。あ、カイタとラヴィちゃんは横に行って見ててねー」

「お、はい」

「……はい」


 不服そうなラヴィの手を掴んで離れるカイタ。

 本当はマジリオの後ろに行きたいところだが、ラヴィが無言で訴えるため二人を同等に見れる真横に移動した。最後のあがきとして出来るだけ離れてはいるが。


「んー?構えはそれで良い?」

「え?あ……」


 やったことのない剣道のように片手剣を青眼の構えで持っているトクタ。数瞬考えた後に、片手剣の持ち手を確認した後にテニスラケットのように持ち、サーブを待つテニス選手のように構えた。


「え?何やってるのあいつ」

「そういえばトクタって中学の時は軟式テニス部だったよね。高校ではやめてるけど」

「いや、それは知ってるけど!」

「へー。それで良いの?」

「打ち返して良いならこれで」


 カイタとラヴィが騒ぐ中マジリオが問いかけ、トクタは普通に返答した。


「それじゃあ、もうちょっと持ち方変えてみなよ。たぶんその方が手にしっくりくるよ」

「は、はい」


 今は身体に対して剣もまっすぐになるように持っていたが、それを少しずつ回転させて持ち直していく。


「ここ……かな」

「決まったら始めるよー」

「はい!」

「『無数の小石よ我が周囲に浮かべ』」


 トクタの返事と共に、マジリオの周囲に無数の小石が浮かぶ。


「『小石よ、我が意のままに、飛べ』」

「へ?」

「いっくよー」

「いやっ!ちょっ!」

「それ!」


 マジリオかけ声にあわせ、小石がトクタに向かって先ほどよりも早く飛んだ。


 


 

 

 


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