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02-02-18 多い方がよい

「それでも、悪いことだけではない」


 俯いたり互いの顔を見合わせたりしている四人を見ていたマサオが話を続けた。


「この課題をこなすことが出来れば、石級はおろか、鉄級の戦闘力を身に付けることが出来るはずだ」


 思わずマサオの顔を見る四人。


「本来なら石級になってから、獣を討伐しつつ魔物との戦い方を学び、魔物と戦えるようになる頃鉄級になるのが普通だ」

「それはまた……」

「それって、本当は最初は普通の動物を狩って、戦うこと、殺すことに慣れて、その後に魔物を狩れるようにてことよね?」

「でも、今回は錬金術に使う魔物を狩らなければならないから、魔物を狩れるまで実力を引き上げるって事か」

「基本的にはギルドや先輩冒険者に戦い方を習い、その後害獣の駆除などの依頼を受けるのが普通だ。魔物との戦いにはまた別の要素が必要になるが、通常は石級で経験を積んでいれば出来るようになるのがほとんどだ」


 カイタが心の中でアイスネークとの戦いを思い出していると、今まで黙って聞いていたシーシアも、思わず口を挟んだ。


「あ、あの、そそれって、物凄く、た、大変、なんじゃ……」


 途中でマサオはもちろんほかの四人の視線が向けられたことを感じ、声が小さく尻すぼみになってしまったが、それは三人も思っていたことだった。


「俺達もそう考えますが、どうですか?」

「もちろん簡単ではない」


 サツカが改めて聞き、マサオが簡潔に答えた。


「だが、『あらひと』の君達は我ら『つしおみ』よりも技能が身につくのが早いと、ドルドアからの手紙には書いてあった。それに……」


 一度言葉を区切り、横でニコニコと笑顔で黙って座っている父親を見るマサオ。しかし今回は溜め息などつくことはなく、そのまま話し始めた。


「こいつは普段はこんなだが、腐っても白金だからこの街の周辺で狩りをするなら良い護衛だ」

「え?僕護衛だけなの!?」

「は?!え?教えるのか!?」

「勿論だよ!受けたのも僕だし、ちゃんと教えてあげないと!っていうか、やらないと思ってたの?」

「俺に全部丸投げかと思ってた」

「そんな事しないよー」


 ニコニコと笑うマジリオ。


「ちゃんと本気で教えるよ?」


 横を向いたマサオの口の端と目が数度攣るように動いたが、サツカ達からは見えない方であったため四人は気付かなかった。


「あー。でも、ちょっと人数少ないかな。最低後一人、出来ればもう三人くらい居ると良かったんだけど」

「無茶を言うな」

「鍛錬の仲間は多い方が良いのにー」


 今度は呆れたように吐息をはいたマサオ。頬を膨らませたマジリオが四人をみる。


「誰かいない?」

「被害者を増やそうとするな!」

「それならいます!」


 マサオの声を遮るサツカ。


「おい」


 そして驚いたようにこちらをみるマサオに頷いた後、マジリオに視線を向けた。


「その前に先に聞きますが、他の街にいる方は無理ですか?」


 その質問に一瞬互いの顔を見るマジリオとマサオだが、すぐさまマジリオがゆっくりと首を振った。


「それは無理だねー。一番近い街でも移動に何日もかかるし、君の友人ならまだ紙級でしょ?こちらに来れれば僕が連れていけるけど、ここに来ることが無理だろうからね。それに、来るのを待つ分遅くなるしね」

「……やはり、そうですか」


 二人が一瞬視線を交わした事にサツカは気付いたが、それには触れず納得してみせる。同じ様に気付いたラヴィがサツカを見るが、言葉にはしなかった。


「シーシアは、この街にも誰かいる?」

「わ、私ですか?私はこの街の知り合いはサツカさんとギルドの受付さんと素材を集めるときに色々お聞きしたお店の方とかなので……」

「そっか」

「他の街の事を聞いて下さったのは、私の為ですよね?ありがとうございます」

「いや、気にしなくて良いよ!違うから」

「はい。ありがとうございます」

「シーシアさんは、他の街に知り合いがいるんですか?」

「はい。姉と従兄弟が」

「なるほどー」

「二人は?」


 サツカがカイタとラヴィにもふると、二人は同時に首を横に振った。


「俺らもシーシアさんと一緒。他のプ……冒険者と知り合う隙がなかった」

「私もね。街の人とは色々話したけど。あんたとシーシアの方が特殊なんじゃないの?謎解きつながりとはいえ」


 シーシアが恥ずかしそうにうつむく。


「それはいいとして、それじゃあ呼ぶのは一人だけか」

「あら、あんた他にも引っかけたの?」

「サツカ……。残念イケメンだと思ってたのに、こちらで開花したのか……」

「え?なになに?恋バナ!?」

「あんたは黙ってて」

「はーい。つまんなーい」


 会話に割り込もうとしたマジリオを一刀両断するラヴィ。


「で、どうなのよ」

「まず一つ、何故女限定なんだ?」


 苦虫を噛み潰したような表情でラヴィをみるサツカ。


「あっ」


 心底驚いたように声を上げたラヴィから、カイタに視線を移す。


「次、残念イケメンってなんだ、残念イケメンって」

「今までのクラスでの評価?女子だけじゃなくて男子も言ってる」

「なんだそれ!」

「まあまあ。イケメンなのは認められてるんだから良しとしておきなさい」

「そういう問題じゃない!っていうかお前ら忘れてるのか?」

「何を?」

「何だ?」

「え?本気で?」

「だから何をよ」

「何かあったか?」


 不思議そうにサツカをみる二人。サツカはそんな二人を驚き半分に、信じられないものを見るような目で見ている。


「だから何よ」

「トクタのこと、忘れてるのか?」

「!」

「!」


 サツカが口にした友人の名を聞いて動きが止まるカイタとラヴィ。


「おまえら……」

「わ、忘れてなんか無いわよ」

「そ、そうそう。ちょっと抜けてたというか」

「当たり前に呼ぶと思ったから、ちょっと抜けてたのよ

はらかへ」

「そうそう!そんな感じ!」

「俺より付き合い長いのに……」


 呆れたように二人を見るサツカと、ばつが悪そうに視線をさまよわせるカイタとラヴィ。


「それで、どうするんだ?」


 二人にとっての救世主となったマサオの問いかけに、サツカが前を向いた。


「それでは一人、友人を呼びたいと思います。一緒に外に出る約束をしているので、まだ紙級のはずです」

 


  

 


 


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