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02-02-17 結局誰のせいだって?

「は?」

「え?」

「お?」

「え、え、ええ?!」


 サツカ、ラヴィ、カイタがほぼ同時に、シーシアはまばたきを何回かした為少し遅れて驚きの声を上げた。


「い、いや、魔物狩りって?まだ俺達は紙級ですよ?!」

「俺もそう思うが……」


 マサオが視線を横に向き、それにつられて四人の視線もその先に注がれる。

 そこには摘まんだ白い紙をひらひらと揺らしながらこちらを見ているマジリオがいた。


「……何故か知らないが、冒険者ギルドのギルドマスターが、戦闘訓練までこちらにやれと言ってきている」

「やれなんて言ってないよー。やってくれませんかって、お願いされただけだよー」

「文章外の所に書いてあったんだよ」

「そんなものを読みとるのはこちらの勝手だから、書いてあることを文面通りに受け取るのが一番なのに」


 眉間にしわを寄せて渋い表情をするマサオを見て、マジリオが言い放つ。


「嫌なら嫌って言わなきゃー」

「俺は嫌だ」

「残念!僕がもう受けちゃったから、やらなきゃなんだなー」

「はぁ……」


 うなだれて溜息を吐いたマサオを見て、四人が心から同情するが、自分達も関わっている以上同情だけで終わらせる事は出来ない。


「魔物狩りということは、街の外に出ると言うことですよね?俺達は紙級ですから出ることは出来ないはずですけど」

「だいじょーぶ!」


 サツカがマサオに向けた問いかけに、マジリオが元気良く答える。


「ちゃちゃちゃちゃっちゃちゃー!白金の冒険者ギルドカードぉー!」

「『白金のギルドカード』?」

「ばかっ」


 おもむろに胸ポケットからギルドカードを取り出したマジリオ。その白く輝く、銀とは違う輝きを放つカードを見てカイタが首を傾げると、ラヴィが頭を叩いた。


「ちょっ何で今回は」

「調子に乗るでしょ!マサオさんが話をふるまであいつは無視よ無視!」

「ラヴィ……」

「ラヴィ……」

「……」


 本人を目の前に言い放ったラヴィに対し、流石に一言言おうとしたカイタとサツカをギロッと睨み、その後ろで驚いているシーシアに微笑む。

 そしてシーシアがぎこちない微笑みを返してきたのを確認した後にマジリオを見た。


「なにか、問題、ありますか?」

「良いよ良いよー」

「ってことだから。カイタ、サツカ、気を付けてよ。マサオさん、続きをお願いします」

「え?俺?」

「あなた以外誰が進めるとでも?」

「あ、そうだな。うん。じゃ、えっと」

「その人が持ってるギルドカードが、どうしたんですか?」

「……そうだったね」


 マジリオを睨みつつマサオに話しかけるラヴィ。サツカとシーシアはマジリオが何をしたんだと非難の目を向けるが、マジリオは素知らぬ顔でギルドカードで手遊びをしている。


「こいつはこんなんでも『白金』級の冒険者だ。冒険者は、金級から公的に弟子を持てるし、ギルド公認なら銀級から後輩冒険者を指導したりする事が出来る」

「指導、ですか」

「ああ。こいつは白金だから、弟子ももてるし、ギルマス公認でなくても指導が出来る。しかも今回はギルマスからの依頼だから、何ら問題なく四人を指導出来る」

「つまり?」

「外に連れていける……」


 忌々しげに顔を歪めるマサオ。


「えっと……すみません?」

「いや、すまん。君達も、被害者だ。謝る必要は無い」

「いや、被害者は……」

「本来なら、錬金術で薬を作ることが最初の依頼になどならない」

「え?」

「え、え?」


 マサオが溜息混じりに話した内容に、サツカとシーシアは驚き、カイタとラヴィはほんの少しだけ眉をひそめている。


「まず、ラヴィは本来ここで何か受ける必要は無い」

「一応全部終わって、後は受付に提出するだけだもの」

「そうだ。ただ、ここに来たことによって、錬金術で薬を増血剤を作らないと、終わった事にならなくなった」

「はぁ!?」


 思わず声をあげたラヴィを見て悲しげにうなずいた後、シーシアを見る。


「シーシアは、本来ならこの後薬術で薬を作る際に必要な薬草を買いに端の地区に行き、それを納品すれば良いはずだった」

「は、はい……」

「それが、街の外で指定した魔物を狩らなければ終わらないことになった」

「え?え?な、なんで私は薬じゃないの!?」


 覚悟した内容と違う事を告げられ驚くシーシア。


「これは個人としてだけじゃなく、パーティーで狩れれば大丈夫だ」

「いや、そ、いや、いや、そ、そういう問題じゃ!」


 慌てふためくシーシアに黙ってうなずく。


「サツカ、お前はこの店でこの世界のことや魔法、そして戦い方を学ぶだけの予定だったが、技能を一つ扱えるようならなければいけなくなった」

「はい!?」

「技能に関してはデリケートな問題だから、後で個別に話そう」

「……はい」


 思っても見なかった課題に呆気にとられているサツカ。しかしマサオは一度じっと見ただけで、すぐにカイタに視線を移した。


「そしてカイタ、お前の最終目的が錬金術での増血剤の作製なのは最初から一緒だ」

「はい」

「だが、根本的に錬金術を使えというのが、新人の依頼としては前代未聞だし、更に材料の採取、魔物を狩れだなんてことは、異常だ」


 断言したマサオ。息をのんだカイタを真剣な顔で見たが、特に何も言わず四人を見回すように視線を移動した。


「と、言うわけで、俺は君達も被害者だと思っているわけだ」

「何故、そんな事に……」


 思わず漏れたサツカの言葉を聞き、マサオが自分 の父親を見た。


「え?まさか」

「こいつのせい!?」

「ひどいなー。僕はお願いを聞いただけだよ?」


 言葉とは違い、話をふられて嬉しそうに喋り出したマジリオ。


「文句ならドルドア君に言いなねー」

「ドルドアって誰よ」 

「この街の冒険者ギルドのギルドマスターだよ」

「なんでそんな人がそんな事を!」

「そこまでは聞いてないなー。何でだろうね!今度一緒に聞いてみよー!」

「あんたとは行きません!」

「えー。恋バナ聞きたいのになー」

「黙れ!」


 マジリオとラヴィの掛け合いを、実は仲が良いんじゃないかと思い始めた三人が見守る中、話を戻すようにマサオが口を開いた。


「色々疑問点もあるが、決まってしまったことは仕方がない。四人には狩りにでてもらうことになったのは、理解したか?」


 渋々ながら四人が頷いたのを、マジリオは笑顔で、マサオは疲れた顔で見ていた。

 

 


 

 




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