02-02-15 空気を読むマジリオ
サツカとシーシアが魔法について説明を受け始めた頃、アザルベル薬店のドアが叩かれ、マジリオが元気良く開けていた。
「いらっしゃーい!待ってたよ!」
満面の笑みで扉を開いた一件少年のマジリオを見て、やってきた者の動きが止まる。
「こ、こんばんわ」
「こんばんは」
少年と少女の二人組が、ぎこちない笑顔を見せながら会釈をした。
「とりあえず入って入って!」
促され中に入る二人。
「あ、あの、カイタ・シートーンと言います」
「ラヴィ・フラフレンです」
「それで、この……お?」
中に入ってすぐ自己紹介をした二人だが、既にマジリオは奥の扉の前にいた。
「こっちこっち!そういうのは後だよ!」
手招きするマジリオに従って、ロビーを奥に進む二人。
マジリオが開け放していたドアから部屋にはいると、彼は既にソファーに座っており、入ってきた二人を高揚した顔で見ていた。
「待ってたよ!さぁ座って座って!」
「は、はあ」
「ありがとう、ございます」
勢いに押され恐る恐るマジリオの対面に座る二人。
「僕の名前はマジリオ・アザルベル。今店主は別件を処理してるから、戻るまでは僕がお相手するねっ」
にこやかに話し始めたマジリオ。その容姿と品の良い衣服、画像で見れば天使のようなのだろうが、話していて感じるのは胡散臭さだけな為、二人は少しだけ警戒している。
「あれ?どうしたの?」
「俺の名前はカイタ・シートーンと言います」
「私の名前は、ラヴィ・フラフレンです。ここに納品するように言われた品を持ってきましたので、店主さんが来るまで待たせていただけますか?」
「二人とも、今日来たばかりの『あらひと』で、新人冒険者ってことで良いよね?」
「お?」
「……はい。それで、待たせていただいても?」
「なんかそっちの女の子は喧嘩腰だねー。いつもそんな感じなの?そんなだとこの子に嫌われちゃうよ?」
ラヴィに視線を向けた後にカイタを見て、そしてもう一度ラヴィを見る。
「はぁ!?」
「で!二人は付き合ってるの?恋人?恋人?恋人?恋人なんだよね!?そうでしょ!?ね!ね!ね!」
「ちがう!」
「違います!」
「えー?うそー」
「幼なじみなだけです!」
「え?マジで!?幼なじみからつきあっちゃう感じ!?親の面通しもすんでて後は本人の気持ち次第なやつ!?」
マジリオは一度つまらなそうに唇をすぼめるも、幼なじみという言葉に大きく食いつく。
「なっなっ」
「何を言って!」
マジリオの言葉に顔を赤くする二人。多少意味合いの異なる赤面だが、マジリオにとっては関係ない。
「なになにやっぱりそうなんだー。ねえねえどこまでいってるの?」
「ば、バカなことを!」
「ど、ど、ど、ど、どこまでっ?!でっ!でっ!!」
ちらりと見た隣のラヴィの真っ赤になった顔を見て、真っ青になるカイタ。
「冗談はやめて下さい!」
ラヴィが爆発寸前まで怒っていると理解したカイタ。
「俺達は幼なじみであって、そういう関係ではないので!誤解しないで下さい!」
「えーでもー」
「そ、そうよそうなのよ!カイタ!言ってやりなさい!」
つまらなそうにラヴィの顔を見るマジリオだったが、ラヴィはそれを無視してカイタに先を促す。
前のめりになっているカイタとは違い、腕を組んでソファーに深く腰掛けた。
「でもでもなんでも、俺とラヴィはそういった関係ではないんです!」
「えー」
「言ってやって、言ってやって」
「だいたい俺とラヴィがそういう関係になるわけがないんですよ!」
「えー?」
「言ってやっ……て」
「え?」
「だいたい俺と彼女じゃあわないでしょ!」
「え?あ?」
「もうちょっと考えて言って下さい!」
「え、あ、なんか……ごめん?」
「わかってくれたなら良いです。な、ラヴィ……?」
マジリオの調子が段々と落ち着いたのを見て、胸をなで下ろしながらラヴィに振り返ったカイタ。
だがそこで笑顔で自分に同意するはずの彼女が、非常に冷たい顔で自分を見ていた。
予定とは違う状況に戸惑うカイタ。
「あ、れ?」
「ふーん。あわない、ねえ」
「え?あれ?」
「合わないのにこうやって一緒にいるのは幼なじみだから?それとも無理して幼なじみしてくれてるのかしら」
「お?いや、お?そんな事はない、よ?」
「ふーん」
「あれ?」
腕を組み、少しうつむき加減に顔をしたに向けたかと思うと、上目遣いでじろっとカイタを睨むラヴィ。
「なるほど、ねえ……」
「え?お?」
「そ、それで今日は何を持ってきてくれたのかな!?」
思わずマジリオが空気を読んで話を変えようとするほどの緊迫した空気。
「は、はい!」
これ幸いとマジリオの話に乗るカイタだが、ラヴィの視線が気になって動きが鈍かった。
「まずは『増血剤』、あと『矢車菊』、そして『透水』です」
「うんうん。どれどれ」
テーブルに品を並べるカイタ。普通にインベントリから出しているが、マジリオは何も言わず並べられていく品を見ており、全部出し終わった時点で矢車菊を手に取った。
「うん。ちゃんと茎と葉と花が揃ってるね。矢車菊の依頼を出すと花だけ持ってくる人とかいて分かってない冒険者も多いけど、ちゃんとやってるね」
「は、はい」
実際の所は分かっている人の指導のもと花壇で摘ませてもらったものなので愛想笑いしか出来ないでいる。
「透水は……うん。ちゃんとしてるね。不純物もほとんど入ってない。良い品だ」
片手で簡単に持てる瓶がテーブルの上に十本並んでおり、マジリオは一本一本を手に取っていた。
「見ただけでわかるんですか?」
「分かるよ?目で見るだけじゃないけどね。君なら僕がなにしてるかわかるんじゃない?」
「え?」
「魔力操作、使えるでしょ?」
カイタが目に見えて驚き、ラヴィも視線をマジリオに向けた。
「あれ?どうかした?」
二人の視線を受け、マジリオは不思議そうに笑顔を見せた。




