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02-02-12 二人はおやこ

「失礼しました」


 金髪の少年が銀髪の少年の横に座り、二人に向かって頭を下げている。


「頭を上げて下さい。そこまでしていただかなくても。実害は無かったわけですし。シーシアさんも、それでいいよね」

「あ、も、もちろん、です」


 サツカが頭を上げるよう促すと、ほっとした顔で顔を上げた金髪の少年。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はこの『アザルベル薬店』の店主で、マサオ・アザルベルと申します」

「こちらこそ申し訳ありません」


 立ち上がるサツカ。それを見てシーシアも慌てて立ち上がる。


「サツカ・シジョーと申します。あらひとで、冒険者をしております」

「し、シーシア・フラワマードです。お、おな、同じくあらひとで、ぼ冒険者をしています!」

「ご丁寧にありがとうございます」


 マサオが笑顔で二人に座るように促す。

 そして三人の視線が銀髪の少年に向かう。


「マジリオ・アザルベルです!気軽にマジちゃんって呼んでね!」

「親父……」


 座ったままポーズを決めるマジリオを見て、頭を抱えるマサオ。


「あ、あの、先程から気になっていたんですが」

「はい。なんでしょう」

「あの、おやじって、いうのは、その」

「はい。こいつは私の父です」


 サツカとシーシアの視線が自分に向いたのを感じてポーズをとるマジリオ。深い溜息を吐くマサオと、唖然とその姿を見るサツカとシーシアだった。





「はい。納品は問題ありません。ありがとうございます」


 テーブルの上に並べられた品を検分したマサオ。品を並べたシーシアが、ほっとした顔をする。


「それではこちらが報酬と、納品確認用の印を押した依頼書です」

「ありがとうございます」


 ソファーから立ち上がってお辞儀をしたシーシアと、それを笑顔で見るマサオ。その表情を見ると、先ほど聞いた年齢がそれほど不思議ではなくなるのを感じ、サツカは心の中でうなった。まさかマサオが自分よりも自分の父親に近い年齢だとは思わなかった為、聞いたときの衝撃はかなりのものだった。

 それでも平静でいられたのはここがゲームだという思いが根底にあることと、隣にいたシーシアが激しく驚き動揺してくれたからだろう。

 近くに居る者が自分よりも早く驚くと、人は逆に落ち着くのかもしれない。


「サツカさん。私の用事は終わりました」

「は、はい」


 ぼーっとここに来てからのことを、主に見た目少年、実年齢アラサー&アラヒフな二人の事を考えていたサツカだったが、声をかけられて我に返った。


「サツカさん?大丈夫ですか?」

「ちょっとぼーっとしてたね。申し訳ない」


 心配そうにこちらを見るシーシアに対して笑顔で答えてからマサオを見るサツカ。にやにやと二人を見るマジリオは無視している。


「では、次は自分ですね。自分はこの冊子で指示されてこちらにきたのですが、くれば分かるのか、ここに行けという指示しかない状態でして」


 そう言って冊子をテーブルに置く。


「……これですか……」


 マサオは冊子を見た後横にいる父親に視線を向けた。

 その視線の動きに沿ってサツカがマジリオを見る。


「なる程ね。この時間にここに来れたわけだからそれなりだとは思っていたけれど、そういうことか。でもなー」


 今までの無邪気な笑顔は消え、サツカを値踏みするように見るマジリオ。


「もしかしたら、まだお客さんが来るのかな」

「親父?」

「マサオ、この嬢ちゃんが持ってきた、『アササギの葉』、『オナシリの花』、『桔梗の根』、『マガベの花』『クイカンカツレの茎と葉』があれば出来るモノはなんだ?」

「は?これに『アンドラの花』を足して、疲労回復用の丸薬だろ?だから彼女にはこの後『アンドラの花』を買いに行ってもらって」

「正解だけと、不正解」

「なんだよそれ」

「これならどうだ?」

「ん?」


 テーブルに置かれた素材の順番を変えるマジリオ。マサオはそれをじっと見ている。


「『オナシリ』『マガベ』『桔梗』『クイカンカツレ』『アササギ』『クイカンカツレ』……!」


 最初は眉間にしわを寄せてぶつぶつとつぶやいていたマサオだが、急に笑顔になり、そしてすぐに驚きに変わり、視線をマジリオに向けた。


「分かったか?」

「あと必要なのは、『矢車菊の花』、『透水』、そして『赤兎の肝』とでも言うのか?」

「正解」

「ばかな!」

「『黒猪の肝』の方が良いか?」

「確かにその方が効能は上がるな。って採取を困難にしてどうする!?ってそういう問題じゃない!」


 二人の会話を「え?のりつっこみ?」と思っているサツカとシーシア。その視線を無視して話を続けるマジリオとマサオ。


「新人にそんなもん作らせるわけないだろう?!」

「少なくとも、そこの兄ちゃんはこの時間にここに来ることの出来る能力を持ってる」

「いや、だが」

「それに、ギルドにあらひとの新人研修を頼まれているとはいえ、本当に新人が来ると思っていたか?この店に」

「それは、そうだが……」

「嬢ちゃん」

「は、はい!なななんだしょう!」


 急にマジリオに話しかけられ、立ち上がるシーシア。


「別に立たなくて良いぞ。今渡してくれた品物をこの店に持って行くように、一番最初に言った者か店は覚えてるか?」

「あ、は、は、ははい」


 呼吸を整えながら座るシーシア。そして深呼吸をしてから口を開く。


「ああ、さ、さいしょに、いいった店で、『ドリアドル魔導具店』の、グンガールさんってだ男性ででした!」


 シーシアのいった名前を聞いて頭を抱えるマサオ。

 それを見てマジリオはニヤリと笑った。



 


 

 

 

 




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