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01-05-02 サークル

「それにしても、カイタとマジロが遅いな」

「カイタ君はともかく、間白君はちゃんと休憩を取っていそうなものだがな」


 意識的に内容を変え、話し合いは続く。


「カイタと章太か……」


 ここにいない二人の名前が出て、犬はごろりと前転した。


「何かあったのか?」


 とりあえず何でも良いから話を変えたいとも思ったのか、虎が口ごもった犬に話すよう促す。


「うん……。多分章太は、魔法メインでやりたいって言ってたから、なんとか魔法を習ってからこっちに戻ってきて、考察してるんじゃないかと思う」

「間白君が?」

「考察?」

「あの見ただけで覚えるチート野郎が?」

「三人が章太のことをどう思ってるかよく分かったよ」


 狐、虎、兎の対応を見て苦笑いを浮かべる司であったが、さすがにそういった微妙なニュアンスを現す事がデフォルメキャラには難しく、何故かくるくると踊っている犬。


「いや、努力をちゃんと出来る人だと言うことは知っているがな」

「マジロがそこまでハマるとは思って無いから」

「ヘタすると私より興味なさげだったじゃない。技術に興味はあったように見えたけど、ゲームにハマる?しかも魔法に?」

「あいつ、あれで超常現象番組とか大好きだよ?」

「嘘!?」

「出てくる映像のトリックを暴くのが快感らしい」

「……普通の好きと何かが違う」


 犬の話す内容に、三匹が呆れ、何故か四匹とも踊り出す。


「なんで踊るんだろうな」

「仕様にしても解せない」

「と、とにかく、それじゃあ間白の事は本城に頼むわね」

「連絡は入れておく」

「よろしく」

「で、カイタは?」

「……まだ未確認の情報だけどな」


 先程聞いた『カイタ』がやらかした内容を話す犬。


「カイタね」

「カイタだな」

「カイタ君らしい」

「やっぱりそう思うか」


 三者三様に、自分たちの知っている『カイタ』がやらかしたと決めつける。

 先程まで踊っていた四匹が、何故かこのときだけは息を合わせてため息のポーズをとった。




「それじゃあ私達はこれで」


 はらへどで行うべき行動や、向こうで何をするかを話し、二人をもう少し待つという犬を置いて兎と狐がサークルから出ようとしていた。


「トクタも本城も向こうで……って、あー!」

「なんだようるさい」

「いいでしょ!本城の名前!まだ聞いてない!」

「司だよ?本城司」


 ぴょんぴょん跳ねながら犬に近寄る兎だったが、犬の返答で動きが止まる。


「あれ?」

「司……」

「本城、無理にボケなくて良いから」

「司君がそういうボケをするのは新鮮だけど、おもしろくはない」

「……ごめん」


 白い目で犬を見る三匹と、踊る犬。


「で?なんて名前にしたの?聞いてたホーン・シジョーは止めたんでしょうね」

「ああ。名前をサツカ、名字はシジョーのままでサツカ・シジョーにした。……あれ?」


 横になってごろごろと転がる三匹。


「司のアナグラムか」

「司・本城を、本・司城にしてホーン・シジョーにしたセンスの時点でもっと注意するべきだったか」

「ここまでとは思わないからしょうがない」


 ごろごろ転がっていた三匹が止まり、起き上がって犬を見る。


「そんなに変かな?」

「ホーンと同レベル。というか名字がシジョーじゃなければホーンの方が良いかも」

「あー。言えてるかもな」

「ネーミングセンスという弱点くらい、どうとでもなる」

「え?そこまで?」


 思わず言った言葉にじろっと犬を見る三匹。


「うー。三人の名前は?」

「私はラヴィ。ラヴィ・フラフレン」

「トクタ。トクタ・ファイグラス」

「私はクーンだ。クーン・アイラルード」

「……」


 胸を張って名乗る三匹にを見て、くるくると踊る犬。


「なによ」

「センスは分からないけど、俺よりかっこいいなとは思った」

「はいはい」


 それぞれに犬の肩を叩く三匹。


「じゃあ向こうで会いましょ」


 兎が壁沿いのドアに向かって跳ねていく。


「外に出るときはみんなで出ようぜ!」

「あ、良いわね」

「それは私に対するイヤミか?」


 扉の前で腕を組む狐。


「違うわよ。久美子とも早く合流出来るようにしなきゃね」

「悪い悪い。みんなで迎えに行くのが早いんじゃないか?」

「そうかも。まずは情報収集ね。クエストまじめにやればお互いの街の情報も集まるかもだし」


 それぞれ目の前の扉に手を添える兎と狐。


「じゃね!また連絡する!」

「それではまた」


 犬と虎が手を振るのを見ながら消えていく二匹。


「トクタはまだ戻らないのか?」

「なあなあなあなあ!」

「……なんだよ」


 転がるようににじり寄ってくる虎に引き気味の犬。


「どうだった?チュートリアルAI?」


 虎の越しに想像できる友人のキラキラした笑顔。


「超タイプの可愛い系美人だった」

「俺も超タイプだった!超美人!超お姉様!もう一回会いたいなー」

「……俺はもういいや」

「なんで!?」

「いや……中身は誰だったんだ?」

「アヤさん!中身も色気いっぱいの美人だったんだよなー」


 くるくると回転した後コロコロと転がる虎。


「まったく」

「アヤさんでも会いたいなー」

「会えるだろ」

「え?マジで?」


 ピタッと止まり、四つん這いで犬ににじり寄る虎。


「なんで!?なんか知ってるのか!?」

「いや、俺は中身はアイクって名前のAIだったけど、ギルドの受付にいたからさ」

「マジで!?マジでマジでマジで!?」

「あ、ああ」

「おー!ならいつか会えるかな。超楽しみ!」

「まったく」

「あとさあとさ」

「何だよいったい」

「脱いだ?」


 くるくると踊り始めた虎が駆け寄ってきたかと思うと突然変なことを言い、そしてまた離れてくるくると踊り始める。


「……なに言ってんだ?」

「いやさ、大志館の転移する部屋でちょっと気になって下を脱いだんだけどさ」

「なにしてんだおまえ」


 頭を抱える犬と、その周りをくるくると回る虎。


「それが、超リアル」

「……はい?」

「びっくりするくらいリアル」

「……マジで?」

「マジマジ。超マジ」

「そんなところまで……」

「しかも」

「……しかも?」

「いじったら元気になった」

「おまえバカだろマジでなにしてんの!?」

「いやだってほんとにリアルでさ、どうなるか気になったんだって!」

「だからってやるか普通!」

「気になったんだって!」


 怒鳴りあいレベルで喋る二人と楽しそうに踊る二匹。


「……まったく」

「俺は予言する!」

「なんだよ」

「絶対司も試す!」

「やらねーよ!」

「絶対にやる!」


 楽しそうに踊る自分のデフォルメキャラを視界の端にして、二人の無意味な言い争いは数分続いた。











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