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01-02-04 サツカ・シジョー 4


 笑みを浮かべずにこちらを見ながら説明をするアイク。


「既に実例はあるんですか?」

「知りたいですか?色々と長くなりますが」

「……止めておきます」


 何故か嫌な予感がしたので止めておいた。


「ちっ。賢明な判断だと思われます」


 また舌打ちしやがった。

 聞かないという選択は正解だったと思うけど、密かに聞いておけば良かったかもと思う自分もいる。


「現在の『仮面』は、サツカ様の顔面偏差値を元に作製した『仮面』を段階五で設定してありますが、いかがなさいますか」


 時折イラッとする語句を挟むんだよな……。


「サツカ様?」

「顔面偏差値を元にとは?」

「きれいな方はより美しく。そうでない方は、それなりに」

「……色々問題がありそうな、無さそうな」

「サツカ様は充分前者だと思われますよ」


 にこやかに告げるアイクだが、この笑顔にだまされはしないぞ!


「身体のサイズもご自身で思うよりもなかなか」

「ありがとうよ!」


 はいはいはいはい!

 最後まで言わせるか!


「話を戻しますが、『仮面』の設定はいかが致しますか?」

「……『仮面』は付けたままで。段階は七に上げて下さい」

「かしこまりました。設定致します。いるのよねー。自分の顔が周囲にうれていると勘違いしちゃってるほどほどイケメンって。設定終了いたしました」

「ありがとう!」


 だから一言って言うか一文章多いんだよ!


「『はらへど』で落ち合う友人と設定に関しては一緒にしようって約束したんでね!」

「設定に関して問題はありませんので、ご安心下さい」


 あー。

 またその笑顔が「言い訳してんなよ、ナルシスト」って言われてる気がする。


「ナルシストなのは悪いことではありませんよ」

「だからね!」

「それでは次に進みます。現時点で何かございますか?」


 流すなー!


「はぁ……。あ、一つあります」

「はい。どうぞ。答えるに値する内容でお答えできる内容なら答えさせていただきます」


 一言多いよ!


「『はらへど』でスクリーンショットをとった場合、自分の顔は『仮面』の顔が出るんですか?」

「『はらへど』にスクリーンショットの機能はございません」

「え?そうなんですか!?」

「はい」

「それでは、景色や集合写真とかを撮ることは出来ないんですか?」

「撮影の方法は大きく二つございます。撮影系の『特殊技能』の使用、撮影系の能力を持つ『道具』の使用です。こちらの詳細は『はらへど』でお調べ下さい」

「……はい」

「そして別枠として、弊社の記録用録画、撮影がございます」

「してるんですか?」

「はい。常にすべての場所をしているわけではありませんが、本日のように大きな動きがある際などは各地で録画や撮影をさせていただいております」


 ま、そりゃそうか。

 プレイヤーの動きとかみたいだろうし、この先広告とかにも使えそうだよな。

 あ、でも……。


「因みに、その際皆様の顔は自動で『仮面』の段階九にさせていただき、プライバシーを守らせていただきます」

「……それが順当ですね」


 普通に考えることだから先回りされても当たり前なんだけど、今までが今までだからやっぱりなんかむかつく。


「『特殊技能』や『道具』で撮影された画像を見る場合は、自分の顔も相手の顔も『仮面』の設定による顔を見ることが出来ます」

「え?」

「同じ画像を見ても、サツカ様と他の方では映っている方の顔が違って見えている場合があるわけです」

「それはまた……」


 そんな事にリソース使って大丈夫なのか?


「なお、『はらへど』での画像・動画を持ち出すことは出来ませんので、その点はご了承下さい」

「え?出来ないんですか?」

「はい。不可能です。画像・動画は持ち出すことも持ってくることも出来ません。文章の持ち出しも文字数限定のオリジナルメールシステムのみが可能となっておりまし、逆に『はらへど』内に送るにも専用ソフトが必要になります。こちらは無量ですダウンロード可能ですので、ご利用下さい」


 はー。


「アドレスは『はらへど』内で確認できますが、まずはご自分のアドレスに送ってみるのを推奨いたします」

「……はい」


 何だろう。電気屋とか携帯ショップの店員みたいだな。


「他に質問はございますか?」

「あー、いえ、大丈夫です」

「では姿に関する説明を終了致します」


 一度深々と頭を下げるアイク。


「それでは次にインベントリとメニューウィンドウについて説明致します」


 最初に出した俺の『素顔』の画像だけ残して残りのウィンドウが消される。


「『インベントリ』は、こちらから『はらへど』に行く者だけが使える特殊技能です。心の中で『インベントリ』、或いは『目録』等、自分が持つ倉庫をイメージして軽く左手を振って下さい」


 アイクが左手を振ったやり方を真似して振ってみる。

 すると左下に、少し斜めになって俺に見やすい形でウィンドウが現れた。


「成功しましたね。それが『インベントリ』、『所持品目録』です。基本的には無制限に入れることが出来ますが、何を入れたかを画像で確認することは出来ませんので、ご注意下さい」

「……今入っているのは、大弓と矢筒、(ゆがけ)、胸当てと短剣。銅貨、銀貨、銅棒貨?」


 『貨』って付いているのはお金か?


「それでは『大弓』を装備してみましょう」

「……はい」


 一覧の中の【大弓】をクリックすると操作メニューがポップした。

 取出

 装備

 鑑定

 破棄


「……装備」


 クリックする前に呟くと実体化して目の前に現れた。


「え?」

「『インベントリ』と同じです。強く心に思ったり声に出せば、操作メニューを使わずに実体化や装備を行うことが出来ます」

「思考、もしくは音声による操作ってことか」

「はい」


 それならば、『矢筒』!こい!

 強く頭の中で思った瞬間に腰の位置に矢筒が装着された。


「おお!」

「おや。一発で成功とは凄いですね」

「ま、まあ、これくらいは」


 自分でもびっくりした。


「ですが、思考による瞬間装備着脱はあまり乱用しない方が宜しいかと」


 成功したと思ったらこれだよ。


「何故?」

「ご覧下さい」


 俺の画像に向けて手を振るアイク。

 すると画面のみならず中の俺も瞬間的に大弓と矢筒を装備した。


「おお」

「周りから見ると、このように見えます」


 再び手を振るアイク。

 すると今度は全身を鎧で包んだ。

 フルアーマーとでも言う装備だろうか。


「おお。で、これが?」

「まず、先程もお伝えしましたがインベントリはこちらから『はらへど』に行った者だけが使える特殊技能です。もともと『はらへど』に住む者は使えませんので、乱用は無用な軋轢を生む可能性があります」

「もともといる人達はその特性は分かっていないんですか?」

「半々……と、いったところでしょうか」

「んー」


 これだけ便利な機能を使わないというのは何となくな。


「まずはそれが一つ。次は、思考による取り出しが必ず成功するわけではないということです」



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