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01-02-03 サツカ・シジョー 3

 下ネタかよ!

 下ネタかよ!

 大事なことだから二回いった!

 もう一回言ってやる!

 下ネタかよ!

 口には出さないけどな!

 学校では苦手な振りしてるけど実は大好きだよ!でもこんな美少女から!タイプの口から聞きたくねー!


「はやい男は好かれませんよ?」

「下ネタ重ねるな!?」

「下ネタ?」


 俺をまっすぐに見ながら不思議そうな顔をする美少女。


「え?」

「下ネタとはなんですか?」

「え?いや、その」


 言わせる気か?!

 え?もしかして下ネタじゃない?

 !

 そうか、彼女はチュートリアル専用AI。俺の前にも、いや同時進行で何人ものチュートリアルをしているはず。その中の経験でそういった事を希望したやつがいたとしても……。いや、でも流石に今の流れで『はやい』は……。


「申し訳ありません。言葉を間違えました。『はやい男』ではなく『せっかちな男』でございますね。お詫び申し上げます」


 !

 そうか、そういうことか。

 俺はなんて……。


「ま、全部分かって言ってるんですけどね」

「分かってるのかよ!」


 俺はなんてバカなんだ!


「サツカ様、この程度の下ネタは淑女の嗜みでございます。いちいち反応するともっと弄ばれるかと。お気をつけください」

「あー。はいはい」


 なんでAIにそんなことで注意されなきゃいけないんだ。

 でももっと精進しないとだな……。


「それでは見た目の変更は無しで宜しいですか?」

「ああ」

「かしこまりました。それでは先程の点はこちらでよしなにさせていただきます」

「いらないから!その分かってますよって顔止めろ!だいたいそれこそ戻ってきた時に虚しくなるだろうが!あっ!」


 大声を出してしまった。

 いや、それよりも……。

 ……。

 ……。

 ……。

 大丈夫、憐れみの顔なんて向けられていない。


「それでは変更無しで進めさせていただきます」

「こういう時こそいじれよ!何スルーしてんだよお前!」

「いえ、私は空気のよめるチュートリアル用AIですので」

「今までも読んでないし今も読めてねーよ!」


 呼吸が荒くなる。

 最初でこんなに疲れさせるなアホが!


「もう、進めろとか空気を読めとかどうしろって言うんですか」

「お前が原因だろうが!」


 あーもう疲れた!


「まったくしょうがないですね」

「だーかーら」


 俺だけテンション高くてイラつく!


「ですがここは心を鬼にしてチュートリアルを進めさせていただきます」


 あーはいはい。

 好きにしろ!


「反応がありませんね」

「どうぞ進めて下さい。チュートリアル専用AIさん」

「アイクです」


 ん?


「私の固有名称は『アイク』です。アイクとお呼び下さい」

「別に名前なんか良いだろ」

「それでは私もサツカ様を『ちゅうに』」

「アイクさん!チュートリアルを進めて下さい!」

「かしこまりました。サツカ様」


 ……正直名前呼ばれて今日一番の笑顔とか、本気でやめてほしい。


「それでは容姿の変更は無し。年齢は……十五歳ですので、このまま進めさせていただきます。こちらで年をとると自動的に『はらへど』でも年齢を重ねますので、ご注意下さい」

「そういえば、年齢の変更は出来ないんですか?」

「設定上の年齢は、原則こちらの年齢と同じとさせていただいております。しかし、十九歳以上の方ならば『仮面(かめん)』で見せる容姿は十八歳の頃の状態にする事が可能です。ですので、見た目十八歳の五十歳過ぎの方もいるかもしれませんので、ご注意下さい」

「『仮面(ペルソナシステム)』、ですね」

「はい。『仮面(かめん)』、『ペルソナシステム』です。それではこのまま『仮面』について説明させていただきます」


 一度深くお辞儀をした後に右手をふると、俺の姿が映っているモニターに、俺の姿の胸から腰くらいの位置にもう一つウィンドウが現れた。


「よろしく」

「『仮面』とは、『はらへど』で生活をするサツカ様の『かたしろ』に仮面を付けることにより見た目を別人にしてしまうシステムの総称です」


 出来る女モードのチュートリアル専用AI美少女、いや、アイクが言葉を続ける。


「こちらを作動していると、一から十までの段階的に強度が増して作用します。

一、ほぼ同じ顔。遠目でも判別可能。

二、ほぼ同じ顔。近くで顔を見れば判別可能。

三、少し別人。近くである程度の時間見れば認識可能。

四、少し別人。近くでよく見れば認識可能。

五、かなり別人。長時間会話すれば認識可能。

六、かなり別人。ある程度の会話をして自身の本当の顔を知られても良いと思えば認識可能。

七、別人。『はらへど』内外で友人設定した相手にのみ本来の顔を見せる事が出来る。(『仮面』作動の可否を選択可能)

八、別人。『はらへど』の外で友人設定をした者にのみ本来の顔を見せる。

九、別人。自分以外には仮面の顔のみ。

十、別人。自分も仮面の顔しか確認できない。

と、なっております」


 アイクの説明のタイミングに合わせて画面上に説明文が浮かんだ。


「実際の映像を、サツカ様の顔で変更、他者からどのように見えるかを映し出します。ご確認下さい」


 そして自分の顔の位置まで上げていた手を少し下げた。


「今見えている顔が基本の顔。サツカ様の『素顔』です」


 一度手を振ると、同じ映像が横にもう一つ現れた。


「まずは段階一です」


 逆側に右手を振ると、片方の顔がほんの少し変わった気がした。

 俺だけど、なんとなく俺では無い顔。でも、知り合いなら俺だと思うであろう顔。


「二」


 アイクが声と同時に手を振ると更に顔が変わる。

 隣の『素顔』の映像と比べると顕著だが、単品で見れば『俺の顔』とされそうな顔だ。


「三」


「四」


「五」


「六」


 間隔を置いてアイクが俺の顔を変えていく。そしてそのたびに俺の顔が俺の顔じゃなくなる。おそらく友達でも四くらいからは声をかけるのを躊躇うだろう。


「七」

「おっ」


 思わず声が出た。

 多分箇所毎の変化させた度合いはそれほど大きくないが、何故か一気に印象が変わって俺の顔じゃなくなった。


「すごいな……」


 思わず言葉が漏れる。

 どこか俺の顔の面影は残っている気がするけど、基本的には別人になってる。


「八」


「九」


 顔が変わる。

 すでに俺の顔と言うには別人過ぎる。

 従兄弟と言われたら似てるねと答えるレベルの顔、と言えば良いだろうか。兄弟と言われたらあんまり似てないと言われそうだ。


「こちらがサツカ様の『仮面』一覧です。十は設定が変わるだけで、『仮面』は九と同じです。サツカ様の年齢では、見た目年齢を変更する事は出来ませんが、可能な年齢に成られた場合は若返らせることが可能です」


 そしてもう一つ現れた画面に九つの顔が並ぶ。

 左から右に段階が上がっていくように並べられている為比較出来る。

 こうやって見ると隣同士は確かに似てるが、二つ離れるとかなり別人の顔になっていることが分かった。


「髪型は『はらへど』内で散髪が可能です。時間の経過などで伸びますので、適宜散髪などなさって下さい。カツラ等も存在しております」


 画面上の『仮面』の髪型が何回か変わる。

 様々な色や形作った、中には一メートルくらい立てたパンクな髪型までありやがった。


「凄いな」

「今ご覧になっていただいた『仮面』はこちらでサツカ様の顔を元に作製し用意させていただいたものですが、ご希望の方にはご自身で製作することも可能です。しかし完全に一から作成する事になりますので時間がかかりまし、技術的な面からもお勧めはしておりません」

「自分でつくることのデメリットは?」

「今申しましたように時間がかかること。それ以外ではやはりバランスが悪くなり、違和感が大きくなります。こちらで標準的な顔を五つほど用意してありますのでそこから選ぶことも出来ますが、他に使用する方が多数いらっしゃった場合『はらへど』で自分と同じ顔が増えますのであまり良い選択とも思えません」

「あー。それは」


 画面上ならともかく、目の前に同じ顔がいっぱいいる、更に自分まで同じ顔だったらそれはキツいな。


「そして健康面での問題も予想されます」

「健康面?」

「はい。先程の体格も同じですが、頻繁にこちらに、『はらへど』に来られる予定ならば、そちらの世界との違いは少ない方が体調や精神に変調をきたす可能性が少なくなると考えております。特に段階が八以上の場合、自分で鏡を見た際なども『仮面』が映る設定となっております。こちらにいる長い時間自分の顔が変わっている、そして元に戻る、このようなことが長期にわたって繰り返されるのは、精神に大きな負荷を与える可能性があります」





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