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01-02-02 サツカ・シジョー 2

「誰が中二病様だ!」

「あ、申し訳ありません。つい本音が」


 思わず大声を出した俺だったが、美少女はしれっと澄ました顔で綺麗なお辞儀をした。


「なお悪いわ!」

「それでは」


 口を大きく開ける美少女。そんな顔でもきれいだと思えるのがもうムカツク。

 そして両手を開いて顎に添えると、足を曲げずに軽く跳躍するようにどたばたし始めた。


「ほえほえほえー。ごめんなさいですー。間違えてしまったのですー。許してなのですー」


 ……。


「……」

「……」


 ……。


「あれ?こういうのがお好きでは?」

「ふざけるなー!」


 今日一番の大声。

 ご丁寧に落ち着いたアルトに近い清らかな声を、ソプラノなアニメ声に変えてまで。あんなポーズまでして。けど棒読みだったけどな!


「なる程、中二病様はこちらはお好みではないと」

「だから誰が中二病だ!」

「中二病様ですが?」

「違う!」

「人は認めたがらないものなのですね」

「だーかーらー」


 澄まし顔で小首を傾げてこちらを見る美少女。

 可愛い、綺麗だ。でも許さん!


「ところでそろそろチュートリアルを開始させていただいて宜しいでしょうか。時間は有限、特にフルダイブの時間は決まっておりますから早く済ませた方が宜しいかと」

「!誰のせいだとっ!」


 しれっとそんなことを言う美少女。

 不思議そうな顔でこちらを見ている。

 そうだ、彼女はAI。人工『知能』とはいえ基本の性格はプログラム。怒るべきは設定した運営にであって彼女にではない。


「ふぅー」

「ため息は幸せが抜けていくと申しますね」


 ……おちつけ、おちつけ。


「そうですね。気をつけます。それでは進めていただけますか」


 大丈夫だ。俺なら流せる。


「かしこまりました。それではまず、初期設定時に登録した『はらへど』で使用するお名前をお願いいたします」

「はい。名前は『ホーン・シジョー』です」


 うん、おっけー。

 大丈夫、大丈夫。

 いけるいける、問題ない。


「登録データとの照合をいたしました。『ホーン』様、『はらへど』へようこそ」


 先程までとはうって変わって出来る女風に話を進める美少女。

 なる程、さっきまでは俺の緊張をほぐすためのお遊びだったのかな。


「お名前はこのままで宜しいですか?変更はチュートリアル中なら可能です」

「あ、変更をお願いします」

「かしこまりました。それでは『チュウニ・ビョー』様に変更します」

「違うわ!」


 違った。素だこのやろう。


「では、『チュウ・ニビョー』?」


 不思議そうにこちらを見る美少女。

 顔もスタイルも完璧なのに!


「いい加減中二病からはなれろ!運営にクレーム入れるぞ!」

「ちっ。かしこまりました。では変更後のお名前をどうぞ」

「ねぇ今舌打ちした?したよね?舌打ち!」

「変更後のお名前をどうぞ」


 感情のない、抑揚のない美声で先を促す美少女。


「はあ……」

「ため息は」

「気をつけます!」


 うるさい!

 誰のせいでため息が出てると思ってるんだ!


「それがよろしいかと。それでは変更後のお名前をどうぞ」

「……『サツカ・シジョー』。名前を『サツカ』に変更、名字は『シジョー』のままで」

「かしこまりました。確認いたします。確認終了。現在、名前『サツカ』名字『シジョー』、登録名『サツカ・シジョー』を使用している方はおりません。登録が可能です。仮押さえをします」

「では、それで」

「補足します。名前『サツカ』の使用者はゼロ名。名字『シジョー』の使用者は五名。名前を『シジョー』にしている方はいらっしゃいませんが、名字を『サツカ』にしている方が一名いらっしゃいます」

「名字を。サッカー好きの人なのかな」

「    名字を『サッカ』あるいは『サッカー』にしている方は現在いらっしゃいません」

「そうですか」


 なんだろう。ちょっとイラッとするな。

 しゃべる前に音にならない声でバカにされた気がする。

 いやいや、流石に被害妄想だ。


「いかがなさいますか?」

「あー。問題ありませんので『サツカ・シジョー』に変更してください」

「かしこまりました。変更終了。『サツカ・シジョー』様登録をさせていただきました」

「はい」


 おお、出来る女復活。

 ……いつまでもつのやら。


「それではチュートリアルを続けさせていただきます」

「よろしく」

「次は『ちゅう』じゃない『サツカ』様の見た目の確認をさせていただきます」


 もうダメなのかよ!何秒レベルだぞおい!


「現在の身体データです。ご確認ください」


 美少女の左横に大きな画面が現れ、そこに男の姿が浮かぶ。

 おお。俺だ。

 透過性のある画面の中に、ぴったりとした黒のTシャツと同じ色のスパッツを身に着けた俺がいた。

 服装が今着ているものと同じなら、一瞬くらいは鏡だと思ったかもしれない。

 しかし、いきなりこういう物を見せられると、今自分がいるのがそういう場所なんだと実感できる。

 こやつのせいでボケとつっこみの空間みたいになってるからな。


「身長百八十一センチ、体重六十八キロ設定となっております。身長はご指定のあったプラス五センチ、体重は現状の体格と遺伝子情報から体型に合わせて計算し決めています。問題はございますか?」

「身長の制限プラス五センチは変わらないですよね?」

「はい。あまりに差があると、行った際、戻った際に違和感があり、はらへどでの動作の影響や、戻った際の身体に影響が出る場合があるため、身長の増減に関しては原則五センチまでとさせていただいております。体重に関しては増減幅は十キロに拡大しておりますので、その分を体型の変更に使用できます」

「前は五キロでしたよね?」

「はい。設定を行った際に強い要望を受けたとのことで幅を増加しました」


 ……おそらくは皆マイナスにふるんだろうな。


「今のところ変更は無いんですが、どのようなことが出来ますか?」

「女性ですといわゆるスリーサイズの増減を多くの方がされています」


 胸は大きく、腰は細く、お尻は……どうなんだ?海外だと大きい方が良いとか聞くけど。


「男性ですと、胸板や肩幅などを操作される方もいらっしゃいますが、基本部位によっても増減できる数値がありますので、それほどお勧めはしておりません。ですが一度『はらへど』に行った後は変更がほぼ出来ませんので、ご案内をさせていただきました。聞いてますか?女性のスリーサイズの事で頭いっぱいですか?」

「考えてないわボケ!」

「女性のスリーサイズに興味がない!?と言うことは男性の」

「そういう意味じゃない!アホ!」

「AIである私に対してアホとかボケとか」

「自業自得だ!」

「それでは見た目変更は無しと言うことで宜しいでしょうか」

「おまえ……。……ああ、いいよ」


 なんだこいつは!

 本当に疲れる。

 良いのかこんなチュートリアルで。

 というか、本当にこいつAIなのか?


「本当に、終了して宜しいですか?」

「……なんだよ」


 まだ何かあるのか?


「常識の範囲内で大きくできますよ?」

「はあ?」

「太さとか長さとか」

「良いからさっさと進めろ!!」



 


 


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