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魔法の使い方

 悪魔の子と呼ばれたのはいつ頃からか。

 記憶は遠く、あまり喜べる内容でもないので思い出せない。


「……同胞の、恨み」


 大魔法に達したその魔法を躱す選択肢はなかった。

 向けられるまま、差し出されるままに、僕はそれを睨みつける。

 残ったゴブリンは危機を察知したのか、大きく後退していた。


「まったく……同じ気持ちだよ。魔物如きに恨みと言われるのは心外だ」


 遠くで横たわる少女を振り返ると、僕は深く腰を落とす。

 受け止めるしかない状況。逃げる事は許されない。


 こういった戦いを繰り返す度、何度も何度も力を振りかざす。

 そうするといつしか精神はすり減って、心は腐っていく気がして苦しくなる。


 忘れるな——この力は眼前の敵を屠る為に。


 だからといって、これから先己の在り方は変わることはないし、無論変える気もない。

 勝利の為に、一つでも救えるものを増やす為にこれからも突き進むだけだ。


 そして僕は学んだ。どれだけ功績を残しても、どれだけ頑張っても、そこに準じる人でなければ「英雄」にはなれないと。

 でも、英雄になんてなれなくても良い。

 最早そこに価値は見出してはいないのだから。


 両の手を前に、発射のタイミングを見極める。


「ガァっ!!」

「はッ——!」


 槍から放出された光は、地を飲み込み大地を侵す。

 踏み込みを一歩前へ。

 行使する魔法を選んで、スペルを準備する。


「……ちんちん(相殺)!」


 ……我ながら、本当にロクでもないとは思う。


 だけど、このスペルで一人の少女を救うぐらいは、世界だって認めてくれるだろう。


「色欲、ゥ!」


 変態ってのは、他には形態を変えるって意味もある。

 雪のように白い肌、色の違う両目。

 膨らんだ手足、漆黒に染まる黒髪。

 ——それ全てが僕だった。


「ッ!」


 赤の魔法陣が「ちんちん」という腑抜けたワードによって展開される。

 接触と同時に巻き起こるマナとマナの衝突。

 光線は盾を貫くが為に。盾は光線を防ぐ為に。


 風が吹き上げ、僕を浮かそうとする。

 小石は弾丸に代わり、僕の顔を削っていく。


「……おっぱい(魔法強化)」


 ……締まらないなぁ、まったく。

 魔法陣の盾はやがて更に大きくなり、白光を消し去った。


「(やはり一揉みの感触じゃ、そう長くは持たないか)」


 ならば記憶、蓄積された僕の脳内フォルダを解放するしかあるまい。

 おっと、これはシークレット。どうにもこうにも描写する訳にはいかない。

 ただ言わせてもらうなら、僕の性欲は魔力と直結している。

 どんなフォルダかは言わずもがなだろう。


「……ぅ」


「リーシャ、起き上がるな!」


 蹴りが甘かったか。

 今のデュラハンからすれば、格好の餌食だ。

 予想通り、ヤツは起き上がったリーシャを見つめ狙いを切り替える。

 魔法はラグがあるのか、まぁあれだけの大魔法は制約なしにはあり得ないだろう。


「コカン=ソードを抜いてる暇もないか! 避けろ!」


 デュラハンはそれを隙と見たか、僕を少し迂回してラーシャに近付いてた。


「あっ」


 俺を見るなり、リーシャは頬を紅潮させていく。

 違う、そうじゃない。

 今は向かってきている敵を、だな……あ?


「ちょっと邪魔、しないでッッ!」


 ボコン、そう言って振り上げた手をぶつけただけ。

 本当にそれだけだ。

 それから、音が鳴ってデュラハンの馬が消し飛んだ。


 なんだ、コイツ……。

 何が起きたのか、正直僕にも分からない。

 ただ、あまりにも破滅的な威力だったので、口を開ける他なかった。


「……見つけたわ。私の王子様を。そこ退きなさい、ボロブリキ!」


「あ」


 横に転がったデュラハンをそう言って蹴り飛ばすと、文字通り塵に変えてしまった。

 何を言っているのか、僕にももう分かりませんが、少なくともデュラハンよりもゴブリンよりも危険なことはよく分かります。


「アンタに蹴られて、起きたら、目覚めてた」


「……ああ、うん」


 違う、いや違いますよね。

 その目は、そう。

 そう、まるで捕食者の目じゃないですか。


 今まで対峙した事のない不安で虚ろな瞳に僕は、少し後ずさるのだった。

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