第4話 屋台で昼食会
何故か大人数でお昼ご飯を食べる事になってしまった・・・。
メンバーは全部で6人だ。
俺はテーブルの左端に陣取っている。
何故か正面には300人のファンギルド会員がいるリナ・インパルスが座っている。現状をファンに目撃されたら抹殺対象になるかもしれないな。
リナ・インパルスの横には生徒会長のヒート・ウィンが満面の笑みでこちらを見ている。ある意味平常運転だな。
更にその横には会計で進行役もこなしていたマイペースな女性がちょこんと座っていた。
俺の横にはシェリー(冒険者風の男に引きずられていた女性)
更にその横にミシェル(シェリーの付き人?)が座っていた。
ちなみにナーニャだが、
拘束した男をどうするかという話になり、シェリーとミシェルがまだショックから立ち直っていないのもあって、その場で男を見張りつつ休憩する事になった際に、生徒会に連絡を取りに行ってくれたのだ。そして、例のギルドが早目に撤収作業を開始しているのに出くわし余った魚の干物食べ放題となったらしくここには戻ってきていない。
さらにシェリーと、ミシェルは同じクラスAだった。2人とも王都に住む貴族の令嬢らしい。冒険者風の男の捕縛後、まずミシェルから礼を言われてすぐに文句も言われた。シェリーを魔法に巻き込んだからだ。
殺傷力の低い魔法であり、男を拘束するための行動で他意のない事を説明した上で謝罪していると、それまでボ〜っとしていたシェリーがお礼を言ってきた。「本当にありがとうございました。魔法も私が逃げなかったのが悪いんです。すみません。」と謝られてしまった。
何故かミシェルがシェリーの謝罪に非常に驚いて口をパクパクさせていたが、「なんにしても無事で良かったです。」と話をまとめているとそこへ生徒会のメンバーがやって来た。
拘束した男の引き渡しに呼んだのだから来るのは当たり前なのだが、何故かそのメンツは生徒会のトップ3だった。
「え?何故あなた達が?!」
当然の疑問を口にするが、副会長のリナは問いには答えず
「ここがいいわね。6人掛けだし。」
と席に着く。
「食事をしながらでも報告は聞けるだろう?とりあえず座ろうか?」
と、生徒会長が答えにはなっていないがそう提案してくる。
「静かに食事がしたくて出かける口実にしたんですよ。」
とようやく3人目から回答を得た後、冒頭の状況となる。
屋台の人に昼食の注文をしてから、暴漢の話になる。シェリーとミシェルはこの屋台で休憩を取っていたところいきなりシェリーが腕を掴まれたらしい。俺に言ったように生徒会の関係者を名乗り連れて行こうとしていたらしい。一度は止めようとしたらしいが手を振って軽くあしらわれたらしい。よくよく見るとミシェルさんの頰が僅かに腫れていた。その後も静止の声を掛け続けていたところに俺が来たらしい。
「ちゃんと見回りをしているとはマコトさんは偉いですね。」
書記兼進行役のパンナコッタがかなり子供じみた褒め方で評価を口にする。
「偶然ですよ。単に腹が減ってここに来ただけです。」
そう、実は幼少クラスのリードの1つに生徒会の構成員もある。1番ポピュラーな一般構成員であるポーンのエンブレム持ちで今朝の集合の義務もないが一応の職務として巡回が割り振られてはいた。
「ところで護送はいつするんです?捕縛してるし戦士タイプっぽいから何も出来ないだろうとは言え食事の席の横にいるのは落ち着かなくないです?」
冒険者風の男は黙っているが意識もある状態で地面に座らされている。
「そうですね。尋問は後でも出来ますし・・・」
とパンナコッタが相槌をうち、空中に指を走らせ何かを操作する動きをして見せた。
何もない空間に黒い長方形が縦に出現する。いや、よく見ると灯りが見える。その灯りが動いて出て来た。
「ご苦労様です。この座ってるやつですか?」
中から出て来たランプを持った警務にあたっていた人物がパンナコッタに聞く。
「そうです。よろしくお願いします。」
とパンナコッタが答える。
「な、なんですか?これ?」
事態についていけていないシェリーが疑問を口にする。
「転送の扉ですよ。恐らく生徒会の留置所に繋がってるんでしょう。」
シェリーの疑問の回答を口にすると、パンナコッタが目を細めてこちらを見て問う。
「先ほどの口振りもそんな感じがしていましたが、私が転送の扉を使えるのを知ってました?」
「・・・いいえ。ただ生徒会に限らず高い地位のエンブレムが学園のシステムを色々利用出来る事は知ってますよ。」
「なるほど。」
とだけ相槌をうった後
パンナコッタさんは何かを考えるためか黙り込んでしまった。
既にテーブルには焼きたての串が沢山積んである。生徒会長のヒートは話に参加せずにモリモリ食べていて、副会長のリナはフォークを使って器用に串から肉を外して食べながらパンナコッタの話に頷いている。
この2人は本当に飯を食べる時間が欲しくて来たようだ。横の2人はまだ食欲が湧くような状態ではないのか黙って話を聞いていた。
エンブレムにはシステムを利用する上で権限による種類の分け方が存在する。
それはエンブレムの色彩で分かるのだが、
ブロンズ、シルバー、ゴールドとあり、
ブロンズは大体施設利用の許可のみだ。生徒会のエンブレムで言えばポーンがそれにあたり、生徒会の建物に入る事が可能だが、それだけだ。
シルバーは関連する機能が軒並み使える。
パンナコッタが付けているのは生徒会のエンブレムの一種でビショップのエンブレムだ。材質はシルバー。
シルバーは関連する機能をシステムから実行する事が可能でさっきの転移の扉も学園内なら殆どの場所で呼び出し可能だろう。
副会長と会長も生徒会のシルバーのエンブレムでそれぞれキングとクィーンのエンブレムを持っているハズだ。これはそれぞれ1つしかないとの噂で有事にはゴールドと同じ権限になるとの噂もある。
ゴールドは全権を使えるらしく、シルバーでも使えないような重要なシステムを使える。恐らく学園長が持っているハズだ。
僅かな沈黙の後にパンナコッタが口を開いた。
「では被害者の聴取も済んでますし、褒賞の話をしておきましょうか?」
「褒賞が貰えるんですか?」
「アレをあげるの?凄い高評価ね。」
察したリナが意味深な感想を述べる。
生徒会長の方は表情に?が浮かんだまま串をモリモリ食べ続けている。この人が会長で本当にいいのだろうか?
パンナコッタがゴソゴソと何かを取り出して机に置きつつ話を続ける。
「どちらかと言うと知識面ですかね。信用に足る人物でないとおいそれと話せない条件ですが、マコトさんはすでに知っている事なので・・前提条件を考慮しなくていいですし。褒賞はこれです。」
「あれ?これはポーンエンブレム?いや、色が銀だ。・・まさか、オリジナルか?」
「!!」
生徒会の3人ともがマコトを見る。
「やはり、託しやすいですね。説明の必要がないのも楽ですし。」
とパンナコッタが言う。
「オリジナル?ってまた知らない単語ですわ。」とここで独り言のようにシェリーの小声が割って入った。
「シェリー様は今聞いている事は他言無用でお願いしますね。私の方からも特には申しませんので」
パンナコッタさんがにこやかに微笑みながらシェリーさんに注意?している。
俺は
付けている自分の校章のエンブレムを指差しつつ軽く回答するための質問をする。
「シェリーさん。この校章のエンブレムみたいに同じエンブレムが大量にあるでしょう?」と聞く。
「そうですわね。」
「大量にあるやつは実はコピー品なんですよ。そしてそういうエンブレムにはコピー元となるオリジナルが存在するんです。」
「マコトさん。説明はその辺までで。で、この褒賞受けて頂けますよね?」
「そうですね。有り難く頂戴したいところですが、なんか役職増えたりしないですよね?」
オリジナルはポーンでもシルバーだ。ポーンエンブレムは校章のエンブレムなどと同じで通常に出回っているのは全てブロンズだ。
このポーンでありながらシルバーのオリジナルエンブレムはおそらくパンナコッタの持っているビショップエンブレムと比べても遜色がない可能性が高い。役職がセットで付いてきてもおかしくない。
「ルークのオリジナル持ちなんかは警備隊長の役職付きですが、ポーンエンブレム持ちは基本お手伝い枠ですのでビショップ隊やルーク隊の指示に従うような形になっています。ですのでポーンの隊長枠はないんですよね。」
「じゃあ、役職はなしですね。頂きます。と、いい加減食事も頂きます。」
ポーンエンブレム(オリジナル)を手に入れた!
串焼きを手に入れた!