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第9話 夜の空騒ぎ(前編)

帰るそぶりをすると、

城と見紛う大貴族の子息が使う館なので、当然のごとく、部屋は余りまくっ

ているとの事で、泊まっていくように勧められた。



更に、

ナーニャが会話に参加せず静かだと思っていたらいつの間にかソファに丸まって寝ていた。置いて帰るよりみんな泊まっていたほうがナーニャも気が楽か。


それにしても・・

格闘家を目指しているナーニャのスカートは短めでスリットも入っていて、普段は動きやすくまとめているおだんご頭も下ろして艶や

かで長い黒髪が広がり丸まった格好をしているとは言え色々と目線が吸い寄せられてしまう。


「ミシェル。ナーニャさんをお部屋に運んで上げて下さい。」

指示を出しているシェリーの目が若干、ジットリしている気がする。


「はい。果実酒をオススメしたのが不味かったですかね。」

傍らにあるカウンターテーブルにある果実酒の瓶を片付けながらミシェルが呟く。

「ちょっと下さい。」

グラスに注いで味を確かめてみる。


葡萄の酸味と香りが舌と鼻を刺激する。

「ワインですね。聞いただけなんで真偽は分かりませんが、マタタビ酒以外は結構イケるような事を言っていたんですが、朝早かったから眠くなったのかもしれませんね。」


ちなみに同じく静かなラスクだが、こちらは相槌以外喋っていないだけで歓談の輪にはいた。


他の使用人メイドと協力してミシェルがナーニャを連れていく。


「大浴場がまだメンテナンス中で皆様に提供出来ないのが残念ですわ。」


聞くとこの館はだいぶ長い事誰もおらず色々とガタがきていたらしい。とりあえず住める程度には復旧したそうだが、大浴場はドワーフの職人が掛かりっきりで修繕しているが後一月は掛かるらしい。


ほどなくして、ミシェルが戻ってくる。

シェリーはまだ喋り足りなさそうにしていたが、お開きとなり、ミシェルが男性陣3名を泊まり客用の部屋に案内してくれた。場所は2階の端の方か?大きい館なのでよく分からんな。建物の端まで来ると扉が2つと階段があった。

中央の煌びやかな階段と異なり、機能的

な階段で上下の階へと続いている。

主に使用人が使い火事などを想定した避難用でもありそうだ。


「クリスさんとラスクさんはこちらの部屋をどちらかお1つずつお使いください。マコト様はそこの階段を上がってもう1階上になります。」


「なんで俺だけ上の階に?」

足を止めて疑問を口にする。


「申し訳ありません。他の部屋の掃除が間に合ってないので、マコト様にはご迷惑ですが上にお越し頂けますか?」


「・・分かった。」


納得出来ないものの承諾し、クリスとラスクに挨拶をして階段を登る。


上の階に上がると下の階では廊下に2つあった扉が1つに減っている。

ミシェルが扉を開けてくれるので中を覗いて一言。


「部屋でかくない?」


「命の恩人ですので。」


「・・・。今日のところはいいか。でも、特別扱いは嫌かな。」

余り目くじらを立ててもしょうがないので、意思だけ伝える。

「分かりました。そのように申し伝えます。」


「じゃ、おやすみなさい。」


「おやすみなさいませ。」

ミシェルの挨拶は完全に臣下の礼で、就寝の挨拶をしてくる。決定権を持つのはシェリーであり現在の方針に則っての行動なんだろうけど・・。


案内された部屋に入る。

でかい。入った部屋は客間のようになっており単なる宿泊の部屋ではなく、宿泊している貴族を逆に訪ねてきた客をもてなす想定の部屋に思える。という事からもかなりの好待遇と言える。

奥の部屋に行くとキングサイズのベッドがあったので靴を脱いでから寝転がる。

靴自体脱ぐ習慣が余りないが、流石にベッドの高級感がハンパなく、靴の汚れがベッドに付く可能性を考えて脱いでしまった。


「さてと、先ずは万一もないとは思うけど一応はナーニャの存在を確認しときますか。」


エンブレムを使って学園のシステムを起動する。流石に王族が関係する建物だけあって今まで持っていたエンブレムではアクセス自体許可されない。


「ここまでは想定の範囲内だが、こいつはどうかな?」


学園の治安を担う生徒会のポーンだがオリジナルのシルバーエンブレムを使ってみる。一瞬の間の後に了承のメッセージと館内が表示されるが、表示されたのは3階までで4階と5階はセキュリティで非表示になっている。恐らく貴族のゲストルームまでは生徒会の護衛があり得ると想定しているのだろう。


従来ならマップが表示された時点で人も表示されるのだが、人を意味する光点が1つも表示されない。


頭の中でシステムに念じる。

(マップ上でナーニャを検索)


〈このエリアでは使用出来ません。〉


「こりゃ制限かかってるな・・・。」


マップの端に館内正常の表示があるのを見つめる。

生徒会のエンブレムが治安や護衛のため最低限の情報を表示しているのだろう。

学園の情報収集システムは稼働しているが情報は表示されていない状態だと考えるのが妥当だろう。


「正常って判断がなされてるって事は、住人でない俺が侵入者じゃないって判断されてる訳で、その原因は・・」


入館する際に貰ったゲスト用のエンブレムが胸元に留めてあるのを見る。


(ゲスト、ナーニャを警護する対象に指定。マップで検索)


〈・・・〉


システムなのに珍しく間が空く。


〈了承します。他に対象者を設定しますか?〉


了承か、なんかいつもと違うな。権限が関係していそうだが、、、


システムの質問から考えを巡らせて質問を返す。


(シェリーとミシェルを警護対象に含める事は可能か?)


〈シェリー様は館の所有者として登録されています。警護側の一存で警護の情報を提供出来ません。ミシェルはシェリー様の警護人員として登録されています。同様に情報は提供出来ません。警護対象側から申請を行ってください。〉


流石に王族や大貴族が利用する前提だからそこまで穴は開いてないか・・・。


2人の行動も気になるところだが、

一旦ナーニャを確認しておく。


マップを確認すると同じ階にいた。

左右対象な構造でちょうど反対側の部屋だ。ステータスも詳細までは出ないが正常である事が表示されている。


「本当に念のためだしな。」


誰も聞いていない言い訳を口にする。


「次はやっぱ2人の動向だよな。ナーニャの洞察が正しいとしたら何かしらしてくるだろうしな・・・あの手でいくか。」


出しっぱなしのシステムに知り得ている知識と技術を動員して制御システムに侵入する。非常用のスピーカーと光源を0に設定した上で火災の誤情報を流す。


〈火災が発生しました。非常警報、音声案内開始。スプリンクラーはメンテナンス中のため使用出来ません。〉


マップにセキュリティを無視して生存者の光点がどんどん出現する。


「スプリンクラー?」


聴きなれない単語についオウム返ししてしまうと頭でも念じてしまっていたようでシステムが回答してくれる。


〈スプリンクラーは火災発生時に、鎮火を目的に天井から散水するシステムです。現在は大浴場と共に水供給パイプ部分がメンテナンス対象で使用不能です。〉


「うわっ」


国の管轄の建物を水浸しにするところだった。もっと慎重になろう・・。


光点を観察していく。殆どは一階の細かい部屋にそれぞれいる感じだ。恐らく使用人が各自の部屋で休んでいるのだろう。


それ以外の光点を探す。


「いた。」


他に光点がなく簡単に見つかる。

2つの光点が一階の大きめの部屋にある。


多分これだ。

火事の誤情報を消してアラームも解除した後、マップの光点が2つあった場所に向かう。


マップがあるので迷うことなく部屋の前に着くが、中に入るのは躊躇われた。

何故なら見た目からして、そこは大とは付かないものの浴室へと続く脱衣所に思えるからだ。


ガチャ


躊躇ってる間に扉が開く。中に居た人物が出てきた。予想していた2人だ。


数瞬固まってしまった。


気がつくと目が釘付けになるという諺の状況を体験している自分がいた。シェリーもミシェルも寝間着というよりは下着姿と言った方がいい扇情的な格好だ。特にミシェルの方はやや透けて見えるような格好で風呂上がりの上気した肌や濡れた髪と、かなりエロさで固まっていた訳だ。


「シェリー様は本気で一緒に来るんですね。」

ミシェルの話しかける声で正気を取り戻し慌てて息を押し殺す。姿を隠す物もない廊下だが、2人には俺の姿は見えていない。実は賊から入手した透明化のエンブレムを部屋から出る時に使用しているので透明なのだ。2人は接近戦を主とする方ではないので感知出来ないと踏んでいたが、やはり分からないようだ。とは言え惚けていた間は口を開けて息も荒かった気がする。気をつけないとな・・・。


「ええ。ミシェルだけに任せる訳にはいきませんわ。」

「私のためでしたらお辞めください。そういう事を含めての配下ですので。」

「友でもあります。もしそうであったのならそもそもこういう事は計画しませんし行かせませんわ。それにしてもミシェルの格好は凄いですわね。恥ずかしくないんですの?」

「先輩方に聞いた部分が主なんですが若い殿方はこういう格好にめっぽう弱いそうです。そういう格好をしていると意識してしまうので余りその事は振らないでくださいよ。」


頬赤くしながら照れ隠しのように眼鏡をなおす仕草をする。が、風呂上がりのせいか眼鏡は今はない。(俺は心の内で先輩の発言に首を縦に振っていた。)


「すでに他の使用人には朝まで部屋で待機するよう命令を出しているので人とは出くわさないはずです。」

「とは言え絶対ではないですわ。落ち着きませんし、言っていた隠し通路側に移動しましょう。」


と言って隠し扉を開けて入っていく2人。

透明化しているだけで実体なのでついていくには無理があるな。


まあ通常ルートで追いかければそこは問題はない。問題は偵察に来たらもう向かって来てた点で対処を考えていない点だ。


手近な階段で元の3階へと戻る。手製のギルドカードを見るともうMPが危険域に入りそうなので透明化のエンブレムの効果を切る。出くわしても探険してたとかでなんとかなるだろう。


考えがまとまらないまま部屋の前まで来てしまった。まだ2人は来ていないのか部屋は静かだ。部屋にいる方が不自然ではないので、中に入ろうとしてドアを開ける。


ガチャガチャ


あれ?開かない。オートロックだったのか・・。部屋の鍵に気付かなかったな。まあいい。開錠の魔法は得意だしMPの消費も極僅かだ。


「開錠。オープン」

身も蓋もない詠唱でドアの鍵を開ける。


ん?暗いな?光源のスイッチ切ったっけ?


入ってすぐのスイッチを手探りで探しながら部屋の中に入る。


次の瞬間、俺は背後を取られていた!!


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