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夜の騎士と昼のお姫様  作者: 神崎ゆめり
ポテト王国の冒険
8/15

ポテト王国の日々 7 〜ヌーン〜

兄様達が国家予算や防衛について頭を悩ませている頃、私は街の広場に来ていた。




次期国王の兄様はお父様に付いて国政とかいろいろ学ぶことはあるけど、王女である私は最低限の教養を午前中にお母様に教わるくらいで、それ以外は特に自由だ。


15歳になると成人の儀が行われる。その儀をもって一人前の大人と見なされ、親の庇護下から外れる。この国はほとんどが農民なので、15歳になると親の畑の一部を譲り受けたり、新しく農地を開拓したり、希望があれば衛兵への出願もできる。


私も現在15歳、ただ職業は幼い頃と変わらずお姫様。


贅沢して暮らせるお金もないこの国で、子供の頃から同世代は親の仕事のお手伝い、一部のお城で働く人たちの子供と遊んで過ごしていた。それでも大きくなると、遊んでた子達も街で見習いとして働く子が増えた。


さすがに税金を徴収する側の王族が、国民の仕事を奪うことも出来ないので、見習いとして働くことも出来ず、とってもとーっても暇だった。




私が10歳になった頃のある日。


ポテトを訪れた商人が小さな子供を3人連れて、お父様を訪ねて来た。


ポテトへは商売の旅の途中で寄ったのだが、途中の道筋で魔物に襲われた村を発見し、生存していた子供達を保護したのだそうだ。


ただ、子供達を守りながらの旅は厳しく、この国で子供達を保護してほしいとのことだった。



こういう話は珍しくない。


国に属さない周囲の村が魔物に襲われるケースは少なくなく、その結果、小さいながらも国家として存在するポテトに保護を求める旅人も多い。


決して安全とは言えない世界で、国内でも病や魔物に襲われることで親が命を落とすことも多々ある。


こういう場合は、同じような経緯で子供を亡くした親が引き取ることが多い。




基本的に外からやってきた子供でも、人の良い国民性なので、どの家庭も喜んで引き取ってくれる。その筆頭は城に仕える人達で、ヌーンが幼少期に遊んでいた子の多くは孤児だ。


孤児達は孤児達でいきなりお世話になる引け目を感じるらしく、また国での生活に慣れるのも時間がかかる。



そして私は閃いた。


商人と父が話している途中ではあるが、玉座に近づき、父の肩をトントンと叩く。


「どうした?何かあったのか?」


尋ねるお父様に、一言。


「この件を私に任せて欲しいの。」




そうして、商人の連れてきた3人の子供達と、父にと数人の衛兵たちの力を借りて、私は孤児院を建てた。



私もまだ子供だったので、1人でやるには限界がある。衛兵のみんなには、非番の日に孤児院の建設の手伝いをお願いし、運営の資金はお父様に丸投げ。当時の私のお世話係の女性、笑顔(スマイル)さんには、私の想いを伝えて、孤児院の運営をお願いした。



貧乏だけど、国民が飢餓に苦しまない、お腹いっぱい食べれる国という初代国王の考え方は、私は好きだ。



それに姫として出来る精一杯で、困ってる人を助けたい。その想いで、周りに多大な迷惑をかけながら、私の孤児院設立計画は成し遂げられた。



孤児院の名前は「昼寝(シエスタ)」。


何故か私の名前を入れたがった周囲の意見と、子供達が安らげる場所にしたい想いから、この名前が付けられた。



余談だけど、この時に発現したスキルが「慈愛の心」だ。




孤児院の設立から5年。


相変わらず暇をしている私は、昼の時間は孤児院での奉仕活動…という聞こえがいい大層な名義のもと、子供たちに日々相手をして貰っている。



ほとんど毎日通っているので、子供達と自分自身も飽きないように、文字を教えたり、畑で壮大な鬼ごっこをしたり、みんなで芋料理を作ったり、とにかくいろんな方法で遊んでもらっ…ごほん、奉仕活動をしている。





街の広場にやってきた孤児院の子供達とスマイルさん、そして私は広場の噴水前を陣取った。広場は噴水を中心に円形に広がっていて、お昼時だと大勢の人で賑わっている。


赤茶色の髪の人が多いこの国で、ポテトの王族に多い金髪の女の子、しかも王女がやってくると、その気がなくても人が集まってくる。


「昼姫様〜。今日は何して遊ぶのー?」


孤児院の子供達から質問が飛んでくる。


「今日はね〜とっても楽しいことするの!」


「ヌーンはいつでも子供達より楽しそうだけどね。」


すぐにつっこむ妖精さん。


「今日はこの妖精さんの力を借りて、踊って叩いてお花を作って、街中の人に配るの!」


どうだーっと周りを見渡すと、皆んなぽかーんとした表情。あれ?伝わってない?


「全然わかんないからね。力を貸すだろう私すらわかんないんだけど。」


「うーん、ちょっと待った!作戦会議!」


そう言ってウィオラを呼んで内緒話。ようやく内容がわかったウィオラと仕切り直し。




「じゃあまずは、私が見本を見せまーす!みんなは『すみれの歌』は知ってる?」


知ってるーと大合唱。うん、いい返事だ。


「じゃあせーので、歌ってね。歌に合わせて踊ります。まずは踊りを見て覚えてね。じゃあいくよ?せーの!」


掛け声で歌が始まる。歌に合わせてステップを踏む。


この踊りは昨晩考えた、誰にでも出来る私オリジナルの踊りだ。


短い曲なので、もう終わり。最後にくるっと回ってパンッと手拍子。私の手には黄色い菫の花が現れた。


「すごーい!魔法だ魔法だー!」


子供達の反応は上々。


「すごいでしょ。妖精さんの魔法だよ!みんな踊りは覚えたかな?今度はみんなで踊ってたくさんお花をつくろうね。みんなも魔法が使えるよ!」


そこからはとにかく歌って踊り続けた。手と手が合わさるタイミングで、菫の花が現れるようにウィオラに魔法をかけてもらっている。ちなみにウィオラの仲間の妖精達も駆けつけて手伝ってくれている。


気が付けば子供達だけでなく、普段魔法を使うことがない大人達まで楽しそうに踊ってる。応用で、最後の手拍子を隣の人と叩き合う。その度に菫の花が生まれて、みんなの手は菫の花でどんどんいっぱいになる。いっぱいになったら、踊りを見てる人達にプレゼントする。そしてまた踊り出す。


みんな笑顔で、楽しくお昼を過ごしましょう。


昼姫様と妖精からの小さな幸せのお裾分け。



「次で最後ー!」と叫んで、踊りの最後に黒髪の人に菫をプレゼントして終了。


今日も楽しいお昼だったぁ。




ーーーーー


名前: (ウィオラ)天空(ウラノス)


種族: 菫の妖精


レベル: 4


魔法:

・花の創造(フラワークリエイト)


スキル:

・小さな幸せ

・導き手

・天気予報




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