ポテト王国の日々 5 〜ヌーン〜
ポテト王国の印象を他国の人に聞けば、「芋」「ど田舎」「貧乏」の3つで表される。
王族としても否定する要素がないのが悲しいところ。
でも、ご先祖様から大事にしてきた芋の生産技術は世界一だと思うし、新しい芋を求めて研究も行なっている。それに芋料理のバラエティといったら、旅人が度肝を抜くほど我が国では開発されているのだ。
田舎なのは、農業国家だから仕方ない。貧乏なのは、お金よりも国民全員がお腹いっぱい食べることを重視してるからしょうがない。
そんな訳で、一応形ばかりのお城は存在するけど、規模は他国の貴族の屋敷レベル。お手伝いさんを雇うお金があるなら、自分達でやろうという貧乏症な考え方で、家事等は城の人みんなで分担している。
食堂に着くと、食べ物の香ばしい香りが漂ってくる。元々は王族だけで使っていた食堂だけど、広いスペースが勿体無いとのことで、みんなの交流場所にもなっている。今は夜勤終わりの衛兵数人が談笑してて、お父様と将軍が仕事の話をし、お母様は紅茶を飲んでいる。
「やっと起きたのか寝坊助」
朝から驚くほど爽やかな笑顔で声をかけてきたのは、モーニング兄様。その手には、じゃが芋のガレットと、ポタージュスープの乗った盆がある。
お城の朝ごはん作りは、朝に強いモーニング兄様の仕事。新入りの衛兵だと最初は王子に朝ごはんを作らせる事態に失神しそうになるが、慣れると朝ごはんのメニューの希望を伝える衛兵までいる。
他のみんなは先に朝食を済ませたみたいで、私を待っていてくれたらしい兄様と向かい合って朝食をとる。
「兄様は今日は何する予定なの?」
ん、兄様のガレット本当に美味しい、と思いながら聞く。
「今日は父上と一緒に、いつも通り芋畑の出来高を聞いて回って、午後からは国家予算会議だな…。あとは防衛対策会議もある。」
「国家予算はわかるけど、防衛対策って必要なの?こんな貧乏な国を襲う物好きいなさそうだけど。」
「まぁ何も否定はしないけどな。でも街の外には魔物も出るし、魔物からしたら貧乏かどうかなんて関係ないからな。出来ることはしとこうっていう話だ。」
「ふーん、他の国が攻めてくるとかじゃなくて、魔物対策ってことなんだ。確かにたまに魔物が入り込んできて、畑の芋がやられるって話もあるもんね。」
「畑を荒らす魔物レベルなら問題ないけど、他国に比べたら、この国は平和で兵力が壊滅的にないから考えないとってのが、この前他国を視察してきた俺の感想。」
「そういえば、この前他国に行ったんだよね!ねぇねぇどんな国に行ったの!?」
目をきらきらさせて兄様を見る。
「ねぇ、今度私も視察に連れ「連れてかないからな。」…兄様のけち。」
ずぅっとこのど田舎に育った私の外の世界への憧れは半端ない。兄様やお父様が視察から帰る度に、こうして連れてってもらうようにお願いする。
「ヌーンも懲りないよね。一回連れてって痛い目に合わせた方が早いんじゃない?モーニング王子。」
パタパタと羽音を立てながら、私の食べてる兄様特製のガレットにかぶりつくウィオラ。
「何度も言ってるが、街の外に出れるのはレベル5以上になった国民だけだ。王族でもルールを変えるつもりはない。もうレベル5になったなら話は別だが、どうだ?」
わかってるのに聞くあたり、兄様は意地が悪い。兄様を見て爽やか王子素敵って騒いでいる女性陣に今の言葉を聞かせてやりたい。
「もうレベル4なんだから少しくらいまけてくれたっていいじゃない。それに兄様も知ってると思うけど…私は戦闘は全くダメだから、レベル4でも5でも変わらないわよ。」
「「そこ威張るとこじゃないだろ (でしょ)」」
兄様とウィオラに呆れた視線を送られる。
ぐぅ。だって出来ないものは出来ないんだもん。
皆にことごとく外出を反対されるのは、これが原因。レベル5以下でも、戦闘力があれば外で何かあった時に助けが来るのを待つことが出来る。でも、私は戦闘は全くダメ。本当にダメ。
お姫様だから高く止まってる訳じゃない。こっちは外の世界に出れるか出れないかが懸かってるから、結構ガチで頑張ってる。
頑張ってるけど、どうにも出来ないことはある。
「兄様…もし私がレベル5になったら、戦えなくても外の世界に出ること許してくれる?」
ちょっぴり泣きそうになりながら尋ねると、ふわりと頭を撫でられた。
「可愛い妹の頑張りはちゃんと知ってるよ。レベル5になったら、ポテトの兵力総出でお前を外に連れてってやる。」
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名前:昼・芋
あだ名:昼姫、ポテト姫、プリンセス・ポテト
レベル: 4
魔法:
なし
スキル:
・慈愛の心
・戦闘力ゼロ
・芋料理マスター
・妖精使い