ポテト王国の日々 4 〜ヌーン〜
「昼起きて〜!朝よー朝ですよー!!」
耳元でパタパタと音がする。次の瞬間には耳をぐいっと引っ張られる。
「もー、菫!その起こし方やめて!」
耳元の物体をパシンとはじく。はやぁ!?と悲鳴があがって、べちょっと潰れた音がした。
「痛い痛い痛〜い!か弱い妖精さんに何するのよー!せっかく起こしてあげてるのに!恩知らず!」
「頼んでないもん」
「可愛くなーい!」
叫びながら私の頭をポカスカと叩いてくる。
うん、痛くないけど鬱陶しい。
パシン。べちょっ。
静かになったところで、むくりと起き上がる。
金色の長い髪が、朝陽を浴びてきらきら輝く。
ふわぁ〜。眠い。
私の名前は「昼・芋」。
ポテト王国第一王女で、周りからは昼姫やポテト姫、プリンセス・ポテトと呼ばれることもある。
父はもちろんこの国の王様、キング・ポテトこと「太陽・芋」。ご先祖様にも同じ名前の人がいるみたいで、サン・ポテトⅢ世とも呼ばれている。
母は平民出身のクイーン・ポテトこと「種・芋」。
お父様は名前通り大きくて太陽みたいに元気で明るい人。お母様は小さくて慎ましく、でも王妃らしく芯の強い人だ。
むくりと視界で小さな物体が動き出す。ひらひらとこちらに飛んできて、ビシッと私を指差して説教を始める。
「ヌーンの寝起き最悪!暴力反対!モーニング王子の爽やかな朝の笑顔を見習いなさい!」
「朝の強い兄様と比べないでよ〜。私はお昼になったら元気になるの。」
この子は私の友達?ペット?…何にあたるかわかんないけど、とにかく相棒の「菫・天空」。
私の手のひらほどの身長で、黄色の髪に、紫の菫の花のドレス、光の加減で虹色に光る透明な羽を持った妖精。
名の呼び方は種族によって多岐に渡る。
妖精達は古い言葉で名を呼び、姓は自然や神々の名が付けられる。
ウィオラは昔からポテト王国周辺に咲く、黄色い菫の花の妖精で、一時期干ばつに見舞われた時に、ポテト王国の人々に助けられて以来、この国を住処としている。ポテト王国の国旗が芋と黄色い菫をモチーフにしているのはそれが理由だ。
で、話に出て来た兄様、「朝・芋」は私の3つ上の兄で、次期国王である第一王子。朝から爽やかな笑顔でウィオラの心を掴む、通称爽やかな王子様だ。
ウィオラの説教を聞きながら、ドレスに着替えて部屋を飛び出し、階段を降りる。
これから私の最後の平和な1日が始まる。