ポテト王国の日々 1 〜ナイト〜
主人公である俺、夜は現在は育ての親の土さんと共にポテト王国で生活をしている。
夜そのものな黒髪黒眼に、陽の当たらない夜を象徴するような真っ白な肌、あまり健康そうには見えない細身な体格の15歳の青年だ。
ポテトは農業が主要な産業で、約2000人が暮らす小国だ。国名の通り芋類の産地で、国民の9割が農業を営み、各種の芋を育てている。
なんでも建国をした初代国王が、飢餓に苦しむ中で助けられたのが野生のじゃが芋で、荒れた土地でも育ち、野菜でありながら穀物に匹敵する栄養価から、奇跡の食べ物だと感激したそうだ。
人々を二度と飢えさせないという誓いのもと、国名をポテトとし、国の主要産物として育てることを推奨した。
ただ、どんな土地でも育てやすい芋の特徴から、他国へ輸出をするものの、その安価さから決して裕福な国ではない現状だ。
それでも初代国王の思惑通り、芋の存在から飢えることはなく、人々は畑をいじりながら日々平和な生活を送っている。
建国の経緯からソイルさんを初めとしたポテトの男性は、農業関連の名前を持つ人々が多く、
蒸し立ての芋のようにホクホクとして温厚で、褐色肌の丸っこい人が多いのが特徴だ。
温厚にはほど遠く、物静かで落ち着いた、悪く言うなら冷たい性格をしている…というのが、典型的なポテト国民ソイルさんの俺の評価だ。
そんな国民性から大きく外れつつも、ポテトでソイルさんの手伝いをして生きている。
ソイルさんがじゃが芋を育てる傍らで、畑の肥料となる馬糞を生み出す、馬を育てるのが俺の仕事だ。
ちなみに、俺を預けていった冒険者、短剣さんは、危ない場所から危なげなく帰還した。
冒険者として街に立ち寄っては、冒険者ギルドの依頼や街の人のお願いを聞いて、旅をしながら生計を立てていたソイルさん。
人身売買なども平気で行われる世界で、赤ん坊の俺を預かっていた当時は、行きずりの街の人を簡単に信用することも出来ず、俺を連れて報酬の少ない簡単な仕事しか出来なかった。
たまたま立ち寄ったポテトで、酒場で温厚なソイルさんと意気投合し、ソイルさんとこの国の国民性が信頼できると判断したクトーさんは俺を預け、報酬の高い仕事を求めて危険な地へと旅に出たそうだ。
危険な依頼を終えた今でも、ソイルさんは冒険者の性質か、一箇所に留まらずに旅を続けている。
それでも2〜3年に一度くらいは、俺の養育費としてソイルさんに稼いだ報酬の一部を届けにポテトを訪れる。俺からしたら、育ての父親がソイルさんで、養いの父親がクトーさんと言ったところだ。
たまにしか会えないクトーさんだが、ポテトを訪れた際には数日間滞在をする。その間に、自身の冒険の話をたくさん聞かせてくれた。
基本的に興味の薄い子供だった俺だが、なぜか子供の頃からクトーさんの冒険譚は楽しく、冒険者は今でも俺の憧れの職業だ。
そんな俺の憧れに応えるべく、クトーさんは帰省の度に冒険の心得や戦闘技術を教えてくれた。
この世界、街の外には魔物がうろつき、旅に出るだけでも庶民には命懸けの冒険だ。そもそも街の外にすら出れなきゃ話にならねぇ、ということで、街の外の魔物を倒せるくらいには成長したというのが今の俺の戦闘力だ。
3話の投稿を目標に今日は頑張ります!