第47話 花粉症対策と聖女?
「って、訳で対策にアイテムないか?」
俺は森対策を相談にユリカの店に来ている。
「ようは花粉みたいなやつのせいでしょ?マスクでもしたら?」
「それだ!」
花粉症対策にマスク!流石ユリカ!
「…言い出したあたいが言うのもあれなんだけど、あんたそんなんでいいの?呼吸器系から入ってくるだけじゃないかも知れないじゃない?目とか皮膚の可能性もあるじゃない?」
「皮膚の可能性はないな、少量なら吸っても効果ないっぽいし。目は有るかもな花粉症でも目が痒くなるし。って訳でガスマスクみたいなの作ってくれ人数分」
リルが臭いで気付いたんだから少量を吸引していたと考えられる。皮膚にも触れていたと思うし。あれ?リルの近くに俺がいたからスキルブレイカーで無効化してたのかな?いや、花粉らしきものスキルなら俺に近づいた時点で消えるからリルは気付かなかったはずだ。うん、やっぱり吸引して引き起こすタイプだろう。
「はぁあたいは儲かるからいいけど」
「ガスマスクの構造は分かるのか?」
「問題ないわよ」
「んじゃ頼んだ」
「今度なんか食べに行くから用意しといて」
「アメに言っとく」
ユリカは元の世界の料理を食べに度々ウチに来るようになっていた。そりゃ異世界の美味い素材で出来るあっちの料理はすげー美味いからな。俺もユリカに世話になってるし、食事は多い方楽しいからいい。頑張って貰ってるアメにはなんか買って帰ろうかな?
そんな事を考えながらユリカと別れた帰宅途中で…
「あんたが無傷の殲滅者とか言う大量殺人鬼?」
なんかいきなり失礼な絶壁女が話しかけて来た。黒髪ロングで身長150cmくらいの小柄な女性だ。
「失礼な奴だな絶壁さん」
「なっ!誰が絶壁ですって⁉︎」
「あんた以外誰がいるんだ?」
「いきなり失礼な奴ね!」
「いきなり人を大量殺人鬼扱いする奴に言われたくないな」
「事実じゃない!」
「こっちも事実だろ?」
「あーもぅ!聖女の名に置いてあんたを粛清するわ!」
なんかこの絶壁女は聖女らしい。って事は転生者か?油断しない方いいかな?
聖女らしい女が詠唱している
『光よ集いて槍となれ!そして悪しき敵を貫け《ホーリーランス》』
光の槍が俺に向かって放たれた。
街中で攻撃魔法使うなよまったく。光の槍は当然スキルブレイカーによって無効化された。
「なっなんで⁉︎」
俺は女の背後に周り、腕をとって拘束する。あんまり女に暴力振るうのは趣味じゃないんだけどな…
「離しなさいよ!」
「街中で攻撃魔法使ったんだ。法律義務で拘束させてもらう。あとギルドに突き出すからな」
「なっ!大量殺人鬼は野放しなのに、なんで私が捕まるのよ!」
「この集落で俺に手を出したんだから殺されても文句言えないのわかってるか?今や皇帝すら俺に手出しはできないんだぞ?」
「えっ?」
「有る意味、俺が法律だな」
脅して得た権力だけどな。欠点は俺がいないと意味がなくなる事。
「なんでよ⁉︎」
「ん〜成り行き?」
「意味わかんない!」
事情を説明するのも面倒だな。そう思って絶壁女をギルドへ連行しようとすると…
「お待ちください!」
現れたのは集落の良心神父さんだ。
「これは神父さん。こんにちは」
「こんにちはユウマさん…ってそうじゃなくて」
「あれ?俺神父さんに名乗ってましたっけ?」
「この集落で貴方を知らない方が不思議ですよ」
それもそうだ。
「それですみませんが、聖女様を連れていかないでくれませんか?」
「なぜ?」
「一応教会で帝国から保護してる形になっているのですよ…」
「保護?なんかやらかしたんですか?このなんちゃって聖女」
「なんちゃってじゃなくて立派な聖女よ私は!」
「うるさい」
「いたい」
拘束してる手を捻る
「せっ聖女様!ユウマさんお願いします。どうか私に免じて…」
「神父さん…俺がそれで許す人間だと思ってます?」
「いえ…しかし、不用意に敵を作る事もお嫌いでしょう?」
ふむ、教会が敵に回るってか…そんな大事なのかこの絶壁女。
「この絶壁…聖女になんかあるんですか?」
「絶壁って言ったわよね!絶壁って!あいたたた」
一度で懲りようぜ
「この聖女様には豊穣の女神様の加護があるんですよ。教会で信仰している女神様である事と、いるだけで豊作が約束されるんです。民が飢える事が無くなるとなると…」
なるほど…しかし、個人にとっては微妙なスキルだな
「では、集落の農業のためですね。処罰は神父さんにお任せさます」
「ありがとうございます」
俺は絶壁女の拘束を解いた。女は神父さんに駆け寄り影からこちらを睨んでる。
「覚えてなさいよ!いつか倒してやるんだから!」
「こら!」
「…お前転移者だろ?」
「えっ⁉︎」
「人殺しした時あるのか?」
「えっえっ⁉︎」
「ないならやめとけ。ある奴とない奴じゃ覚悟が違いすぎる」
「なっ⁉︎」
「折角争わなくてもいい場所にいるんだから俺みたいになるなよ?」
「…」
「意味分かるか?」
「分からないわよ…」
殺す覚悟で向かってくる奴を殺さない覚悟で止めるには倍以上実力が必要だろう。少なくとも絶壁女が俺を止めるのは現状不可能だ。かと言って平和な世界から転移してきた俺たちに殺人は禁忌だ。殺す覚悟で向かってくる相手でも殺す覚悟で向かい打つのに並大抵の覚悟じゃ足りない。
折角争わなくてもいい立ち位置を築けたならそれにすがるべきだ。異世界無双に憧れるのも分かるが、俺みたいに殺人を平気になるのは同郷としては寂しい。
「分からないならいいが、弱いんだから無茶はするなよ?」
「あんたも転移者だったの…」
「そうだ」
「なんで大量殺人なんて…」
「親しい者が傷つけられそうになったから」
「えっ⁉︎」
「まぁ力に屈しそうになったら同郷のよしみで一回は力を貸してやろう。なんかあったらギルドを通せ」
俺はその場を後にして帰宅する。
「私…早とちりしちゃってたの?」
「そうですね…ユウマさんはお優しい方ですよ。また恐ろしい方で、悲しい方でもあります」
「…」
「この集落は多くの獣人、亜人が暮らしています。それは教会が何十年かけても出来なかった事です。それを彼は僅か数ヶ月で成し遂げました」
「凄いことですね…」
「えぇ、しかしきっかけは彼が南の街を半壊させた事でした」
「えっ⁉︎半壊させた事がきっかけになったんですか?」
「はい、彼が南の街を半壊させたのは、彼の奴隷が南の街の領主の息子に貶されたのが原因です。彼の奴隷は亜人でした」
「奴隷を連れてるなんて…やっぱり最低じゃないですか!」
「奴隷は労働力です。借金で身売りするしかなかった者や食うに困った者もおります。必要悪ですよ。そもそも、亜人の奴隷なんて普通は買いません。連れてるだけで街の人から奇異の目で見られた事でしょう。聖女様が思っている以上に差別の根は深いんですよ」
「ですがこの集落は!」
「ですから、彼の力ですよ。彼が、南の街を半壊させた無傷の殲滅者が亜人を優遇している。亜人に手を出せば無傷の殲滅者がやってくる…そうなれば亜人に手を出す輩は減り、亜人達は彼を頼りに此処に集まりました」
「でもそれじゃ…」
「はい、彼のいる限りは大丈夫でしょうが、彼がいなくなれば獣人差別は再発し、以前同様…いえ以前よりも差別は激しくなるでしょう。そして彼自身も今人族から畏怖され、貴女のような方からは命も狙われるでしょう」
「あっ…」
「今彼は西に出来た亜人の街と手を取り真の意味で差別撤廃に向け動きだしています。己を犠牲にしても自分の親しい者が幸せで居られるようにと…彼の奴隷は長命種だそうです」
「優しく悲しい人…」
「はい、そうでしょう。優しく悲しい人です。この集落はその人に惹かれた人々が集まっているのですよ」
「…今度お会いしたら謝ります」
「はい、そうして下さい」
「ふっぇくっしゅ」
「風邪ですかユウマ様?」
「どうだろ?誰か噂してるんじゃないか?」
「そうなのでしょうか?念のため暖かくしてて下さいね」
「わかった。じゃあリル、暖をとるからおいで」
「ふぇ⁉︎わっ私はアメに風邪の予防になる栄養を取れる料理をお願いしてきます!」
「もぅ恥ずかしがらなくてもよくないか?」
「しっ失礼します!」
リルは足早に駆けてった。…しかし戻ってきたリルを抱きしめてゴロゴロしたのは言うまでもない。




