第21話 無傷の殲滅者
『やっぱりこうなったか。』
さも言わんことかとグボナが呟く。
「…行ってくる。」
「主人殿、やはり私達も…」
「サラ達はいい。一人で十分だ。」
そう、一人で十分だ。売られた喧嘩は買ってやる。安い買い物だ。
扉を開けて外に出る。
「やっと出て来たか!詫びるなら今のうちだぞ?そうだな…あの亜人の雌共を寄越せ、そうすれば許してやる。」
何言ってんだコイツ?バカなのか?
あぁ〜領主の息子だった。
数は20人ほどか…
蜻蛉切に魔力を込め、手前の二人を斬りはらう。
鮮血が飛び、声もあげずに倒れた。
…人って簡単に死ぬんだな。意外と不快感もない。
ユウマは静かに怒っていた。
「なっ!野郎ども!やっちまえ!」
バカの掛け声で一斉に向かって来る。一人…二人と斬りふせる。
面倒だな…
蜻蛉切に大量の魔力を込める。刃が長くなり5mほどになった。一気に薙ぎ払うと最早立っている者はいなかった。
いや、腰が抜けて立てないのかバカがまだ生きている。俺は死体を踏みつけながら近づく。
「くっ来るな!」
バカが逃げようとする。
逃すかよ…
足を斬りつける。
「ぐぁがぁぁ」
バカが汚ねぇ悲鳴を上げる。
「テメェの領地っ何処だ?」
「ひぃぃ。謝る。謝るから命だけは!」
足を突き刺す。
「ギャァァ」
「質問に答えろ。テメェの領地は何処だ。」
「こ、ここから南に5時間ほど行った街です…」
もといたあの街じゃないな。
「案内しろ。」
「こ、この足では…」
俺は無言で領主の息子を担ぎ南に向かって走った。
2時間程で領主の息子の街に着いた。門番を躊躇なく斬りふせ中に入る。
「衛兵!反逆者だ!やれ!」
領主の息子が叫ぶ…が、好都合だ。
俺はバカを殴りつけ、向かって来る衛兵どもを斬り殺す。
声を上げ俺は言う。
「聞け!このバカが俺の物を罵倒し俺に喧嘩を売った!だから俺はその喧嘩を買った!このバカはこの街の領主の息子だと言う!バカは街の戦力を糧に俺を脅しに来た!故に俺はこの街を殲滅する!答えは要らん!バカのせいで死ね!」
四方八方から火の玉が飛んで来る。
無駄だ。《スキルブレイカー》が久々に活躍した。煙の中から無傷の俺を見て、魔法を放った者達が驚いた顔をしている。
地に手をつき魔力を流す。忘れてるかも知れないが《大地の籠手》だ。魔法を放った者達が円錐の突起に貫かれる。
ついでたからもっと広範囲を潰すとしよう。更に魔力を込めて目に見える範囲の建物、人を壊す。
《レベルが大幅に上がりました。》
《条件を満たしました。称号が付与されます。》
…人を殺してもレベルって上がるんだな。どうでもいいが。
領主の息子を引きずりながら次々に人、物を壊していく。
逃げ惑う人々の中から一人此方に近づき声を上げる者が居た。
「お待ち下さい!」
「なんだお前は?」
「そこのバカの親に御座います。この度は我が愚息と兵が大変ご迷惑をお掛けしました。お詫び申しげますので、何卒お怒りをお納め下さい。」
地に頭を擦りつけ慈悲を求める。
「いらん。死ね」
「何卒、何卒…」
「…何ができる?」
「⁉︎なんなりと!」
「じゃあ、お前がこのバカを殺せ。」
「なんですと⁉︎」
「お前の教育の問題でもあるだろう?自分の手でケジメをつけろ。」
「…はい。」
「ちっ父上⁉︎じょっ冗談ですよね⁉︎」
「あれ程…あれ程に己の身を弁え謙虚に勤めよと言っておったのに…」
「父上!此れからは心を入れ替えますのでどうかお許しを!」
「…もう、遅いのじゃ…」
「父上ぇえぇ!」
領主の持ったナイフが息子の胸を貫く。
鮮血が飛び散り息子が生き絶える。
「…これで、お許しいただけますでしょうか…」
「息子まで殺させといてなんだが、ここまで恨み買った奴を生かしとくのも怖いな。やっぱ死ね。」
「約束が⁉︎」
「なんでもするって言うからとりあえ息子殺させただけだ。許す約束をした覚えはない!」
そう言って俺は蜻蛉切を振り上げる。
「ユウマ様!」
背後から声がする。
「リル?ついて来るなと言ったはずだが?」
「ユウマ様が壊れて行くのを見てられません!これ以上はやり過ぎです!」
ふと辺りを見回す。半壊した街並み、無数の死体。倒壊した建物の下に挟まった人を救おうする人々。
自分を見れば返り血で真っ赤になっている。
やり過ぎたか…
「もう…いいですから…帰りましょう。」
リルが抱きついて来た。
優しくリルの頭をなでながら領主に声をかける。
「おい。」
「はっはい!」
「今回はコレで終わりにしてやる。だが、今後また誰かこの街の人間が俺や俺の物をにちょっかい出すようなら今度こそ皆殺しだ。分かったか?」
「はい!肝に命じ、領民全員に徹底させます!お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ここまでやらかして名乗りたくないな。字名でいいか?」
「かまいません。」
「無傷と呼ばれている。」
「無傷…様。確かにあの乱戦を無傷…いや、一方的な殲滅でしたな…」
「それと、獣人や亜人の奴隷がいるなら全員解放しろ。行くあてがない奴は北のダンジョン集落に来いと伝えろ。」
「畏まりました。それとそこの亜人様?うちの愚息は貴女様に暴言を吐いたのでしょうか?」
「…はい。正確には私ともう一人おります。」
「…」
「なんだ?獣人に暴言を吐いたくらいで殺されたと思ってるのか?」
「いえ!とんでも御座いません。愚息には伝わらなかったのだと感じまして…世間の風潮よりも己の目と耳、その身を持って感じた事を信じろと言っておったのですが…この様に美しい方、この街を救って下さった心優しき方に暴言など…本当に申し訳御座いませんでした。亡き愚息に代わりましてお詫び申し上げます…」
「なんだ。親父さんの方はマトモな奴だったか。そりゃこれはやり過ぎたな。詫びに地面と建物だけ直しておこう。」
地に手をつき魔力を流す。
次々と突起は下がり、家は再構築される。先ほど下敷きになった人も重症だが無事だったらしい。
30分程でほぼ元どおりになった。死体以外。
「ありがとうございます。」
「それも変だな。やったのは俺だ。先ほど俺たちにちょっかい出した奴がいたら街を殲滅するって言ったが、少し訂正する。今回の件で俺に恨みを持った奴が正々堂々、俺と一騎打ちするのだけ認めてやる。返り討ちにするが、命まで奪うかは向かって来るやつの態度しだいだ。」
「畏まりましたが、あまりさせたくありません。貴方様は規格外だ。」
「人を化け物みたいに言うな。では邪魔したな。」
「承った事柄は早急に対応いたします。出来る事ならもうこの様な事が起こらない事を願います。」
「俺もそう思うよ。」
そう言って俺はリルとダンジョン集落へと戻って行った。
帰ったらサラに物凄く怒られた。心配させた様だ。まぁ無傷で街を半壊させたって言ったら呆れられたが。
ギルドでは冒険者同士の争いには介入しないとの事だった。街を半壊させる危険人物を国が放っておくか尋ねたら
『国だって気にするでしょうが、街を一人で半壊させる化け物に割く戦力が勿体無いと思うのが普通だと思います。様子を見て、手を出さなければ無害て分かれば、なにも接触してこないのでは?来るとすれば同じ化け物クラスか、勧誘に宰相あたりじゃないですかね?』
と、受付嬢さんが答えてくれた。
人を化け物扱いしないでほしい。
『だって化け物でしょう?無傷で街を半壊?無傷だからってバカじゃないですか?もはや殲滅者ですよ!でも、無傷だから無傷の殲滅者ですね!もういつまでもDランクにいるから舐められるんです!舐められるからこんな事になる訳で、舐められないようにするにはランクを上げましょう!今日からAランクです!ギルドマスター特権で上げます!あっ言い忘れてました。私、この簡易ギルドでギルマス任命されましたからよろしくお願いします!』
なんか、色々凄い事言われた。
字名が称号と一緒になったな。
なんかAランク冒険者になったらしい。
受付嬢さんはギルマスだった。…名前、知らないんだよな。
あっ!殲滅中に称号取得とレベルが上がったんだった。
名前 ユウマ-サトウ
性別 男
種族 人族
年齢 16歳
Lv65
スキル
スキルブレイカー
加護
遊戯の神の加護
称号
アンデットキラー
無傷の殲滅者
瞬殺者
無慈悲なる者
奴隷
サラ-ドラクニル
リルフェン
《無慈悲なる者》
数多くの同族を一気に殺害した者に与えられる称号。
敵対者の殺害に躊躇が無くなる。
なんか今までの称号で一番効果薄いな。
戦争経験者とか皆んな持ってそうだし。
とりあえず今日は疲れたな。明日は休むとして、明後日からはまた、ダンジョンに潜ろう。しかし…
「リル、今日は止めてくれて助かった。ありがとう。」
「いっいえ。私こそ、言いつけを守らず申し訳ございません。しかし、ユウマ様が壊れてしまいそうで怖かったのです。優しいユウマ様のままでいて下さい。」
「ありがとう。リル。」
ぎゅっと、リルを抱きしめる。
今日はこのまま寝よう。
「リルこのままずっと側にいてくれよ。」
「はい。私はずっとお側にいます。」
「おやすみ、リル。」
「おやすみなさい。ユウマ様」
眠りにつく…




