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ELEMENT 2017冬号  作者: ELEMENTメンバー
テーマ創作「コート(外套)」
2/16

フェチ?(作:奈月ねこ)

 私はその人に見とれた。


 その人はマフラーと一緒にスッとコートを着た。コートの着方は難しい。それをスマートに着こなせるのは凄いと思う。




 私はアパレルショップの店員だ。コートの似合う人、似合わない人へも売らなくてはいけない。コートの似合わない人へ勧めるのは気が咎めるが、これも商売。割りきらねばやっていけない。


 そんな私は休みの日でもカフェでコーヒーを飲みながら、道を行き交う人たちを眺める。つい職業病、「あのコートにあのマフラーは……」「コートが似合ってない」などと考えてしまう。


 そんな時だった。私の隣に座っていた男性が立ち上がった。そしてコートを着た。


 私は見とれた。なんて美しくコートを着るのだろうと、感動さえ覚えた。

 私が感動にうち震えていると、その男性は振り返った。


 え?


 私は思わず彼のコートを掴んでいた。


「す、す、すみません!その、コートが素敵で……」


 何を言ってるんだ、私は。


「いや、このコートなら、あそこのデパートにあるよ」


 男性は優しく笑うと行ってしまった。


 

 それからひと月。私は相変わらずアパレルショップの店員をしていた。私が接客中に見覚えのあるコートが視界に入った。カフェで私がコートを掴んだ彼だった。

 彼は服を探しに来たのだろうか。しかし私は他の人の接客中。その人を置いて彼の元へ行く訳にはいかない。私は早く接客が終わらないかとイライラしてきた。そんな私の気持ちが通じたのか、その客は何も買わずに早々に帰っていった。

 そして彼の方を見ると、他の店員が接客中だった。私は仕方なく少し離れた場所から見ていた。すると他の店員が手にしたのは、彼には似合わない、スーツが隠れるくらいの丈のコートだった。私は思わず走りより、紺色の膝下丈のコートを突きだした。


「こちらがお似合いだと思います!」


 彼も店員もびっくりとしている。だが彼は私が持っているコートを見てから手触りを試しだした。


「これはいいコートですね」

「はいっ!お客さまにはピッタリだと思います」


 彼はそのコートをふわりと羽織った。


 なんて素敵な仕草なの!?

 私は内心身悶えていた。


「このコート気に入りました」

「本当ですか!?」


 彼はコートを買って帰っていった。



 閉店後


「も~、あんたのコートフェチには困るわよ」

「コートフェチじゃないもん!素敵な着こなしが出来る人が好きなの!」

「だってコートだけでしょ」

「コートの着方は重要よ!」


 同じショップの店員は「やれやれ」といった感じで、私の気持ちは理解してもらえなかった。

 コートは冬でなければ見かけることはない。だからこそお洒落には重要な要素だ。私はただその着こなしが見たいだけだ。


 私は断じてコートフェチではない



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