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「翡翠様、本当に転移装置を起動させてしまったのですね」
クラン専用転移門の前に佇む私の後ろにいる技術者の一人が不安そうな声を私にかけます
「ええ、全ての責は私にあります。貴方達には累が及ぶことはありません」
「しかし本当に大丈夫でしょうか?」
「それは失敗したときの事?それとも装置のこと?」
「もちろん装置の事です、修理したとはいえまだ完全ではありませんでしたから・・・」
「そうですね、完全ではありません。でも もうこれしか手はありません。今のままでは私達は全て捕らえられてしまうでしょう。それだけはなんとかして防がないといけません 捕まっている同胞を救うことすら叶わない私達には選択肢などもうないのです」
そう、私達にはもう時間も物資も仲間も残り少ないのです
「向こうの世界では第一世代などはすでに老いてしまっていて生存すらしているか分かりません
第三世代ですら難しいかもしれません。それに転移門が開いた事をどれだけの仲間が気づくでしょう・・・クランマスターにも言われました 可能性は低いだろうと。でも一人でも昔の仲間が来てくれる事を願いたいのです」
「翡翠様・・・」
私は転移門に触れ祈ります
(お願い、誰か気づいて・・・そしてまた昔のように私達と共に戦っ って えっ!)
転移門に触れた手の先から淡く緑の光が漏れ出します その光は段々強くなり辺りを照らし出します
あぁ・・・この光は転移者の光・・・誰かがここにやってきます・・・ああ、良かった
誰かが来てくれる!
「ぐふっ!!」
転移門から誰かがやって来るということは誰かがそこから出てくると言う事
その門の前に居た私は[やってきた誰か]の体当たりを直接受けてしまいました
「翡翠さまっ!」
ああ・・・技術者達の心配する声がフェードアウトしていきます・・・
「翡翠様っ!翡翠様っ!大丈夫ですか!?」
技術者の彼にもたれかかった私の意識は朦朧としていきます・・・
ああ・・・まさかこんな状態になるとは・・・
「あら?貴女翡翠じゃない 久しぶりね」
見慣れた顔が・・・あります・・・でも・・・二人に見えます・・・?
それに久しぶりというわけでもないでしょう一昨日ぶりです・・・よ・・・?
まだ・・・私の意識ははっきり・・・しないよう、です