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「これから向かう異世界はね、妖精の世界なの」
アップデートの待ち時間に向こうの世界の説明をすることになった
百合花の最初の言葉がこれであった
「妖精の溢れる世界 自然が多く4大元素を元にした魔力がありそこから派生した多くの魔法が行使できるわ。 魔法以外に剣術や武術、功夫なんかもあるわね これは異世界に行った先人達の趣味で生み出したものよ。ヨーロッパ、アジア、中央アジア、アフリカ、アラビア、日本、中国なんかの建築物とかも趣味で建てたわね」
「なにその万国博覧会みたいな節操の無さは・・・」
「先人達の趣味としか言いようが無いわね、クランもあるんだけどそれも地方色が出てるものが多いわね、私はもちろん中華圏のクランに入ってる 私はね第三世代にあたるメンバーなの 第一世代が基礎をつくったのよ」
「姉さん武侠小説とか水滸伝とか好きだもんね、その影響で?」
「そっ。いいでしょ 」
「剣訣で相手の剣を挟んで折ったりできるわ。武技作ったから。あの世界ではオリジナルの武技や魔法が製作できるのよ ただ剣訣って指の形良くわからなかったからメロイック・サインで作っちゃったけどね」
百合花は人差し指と小指を伸ばし中指と薬指を曲げ親指で中指を抑えるように形作り
千景のほうに向ける その顔はドヤ顔である
「メロイック・サインってあれかな 芸能人のウイッシュのやつ」
「・・・おおむね間違ってないわ・・・」
「ふーん・・・技とか自由に作れたりするんだ んで、これですか・・・」
そう言う千景の指はキツネの形を作っている
「・・・・・・その形は違うけど後は魔法の話でもしましょうか」
その後も百合花のレクチャーは続く
百合花の魔法の体系の説明が続きさすがに飽きてきた千景は根本的な質問を投げかけてみる
「ところで魔法ってのはどうやって使うの?」
「そうね、基本的に武技や魔法なんかは使うのは簡単よ 技名を唱えるだけで発動するんだけどそれだと威力が低いから技名の前後に文言を付け足して威力を上げる事ができるわ。口で唱えなくても頭の中で唱えるだけでも使えるわね」
「具体的にはどのような・・・?」
「そうねえ、強炎って魔法があるんだけどただ[強炎]だと威力が10くらいだとするわね。でも [燃やし尽くせ 強炎]と唱えると威力が15くらいに上がったりするの でも文言にも相性があって威力が上がったり下がったりするからそこは試行錯誤してベストなものを作り上げるのが肝心ね」
「僕にもいまの時点で武技か魔法が使えるのかな?どうやって調べたらいいのかな」
「そうね、ここでならステータスも確認できるから調べましょうか。まずはコマンド画面をだしましょう 右手でこう四角を作るように振って見てくれる?」
百合花は伸ばした手を軽く振って目の前にコマンド画面を呼び出し 千景にもやるように促す
「簡単なんだね。あ、出た」
「後は指でパソコン使うように操作してみて。そう、そんな感じ」
「結構シンプルで判りやすいね、なんかRPGの画面みたい」
「そうね、そういったものを参考にして作られているから。第一世代は偉大だわ~ 私じゃあこんなの作れないもの」
「ゴリラじゃあ無理だね」
「まだそれ引っ張るのね、今度言ったら点穴であんたのツボついて再起不能にするわよ」
「怖っ!」
「そんなことより、ステータス出しなさいよ そこに使用可能武技とか魔法書いてあるから」
百合花は千景の横に並んで座りコマンド画面を覗き込む
「なにこれ・・・」
真剣な面持ちで千景のステータスを視る百合花 その顔には今までにない驚きが浮かんでいた
「あり得ない、なんでよ・・・私のオリジナルの武技習得してるなんて!どういうことよ!武技のみならず 魔法まで!あ、LVまで一緒 それにステータス・・・私の2倍の能力・・・?」
百合花は自らのステータスを確認して違いがないか調べるうち自分のステータスが以前の物より2倍になっていることに気づく
「わ、私のステータスも昔より2倍になってるってどういう事なの・・・千景あんた何かしたの!?」
「ぼ、僕に言われても判らないよ。いままでゲームすら知らなかったしこんな世界があることも知らなかったんだから・・・」
「・・・・・・・・・だよね、千景に判る訳ないよね、私にだってわからないし。これも不具合の影響なのかしらクランも同じなんて本当どういう事なの」
困惑が隠せない声で喋る百合花は心なしか落ち込んでいるように見える、が
ばっと顔を上げ千景の肩を掴みがっくんがっくんと揺らし始めた
「なんでよ!なんで私のオリジナル武技持ってんのよ!わーたーしがー苦労して作り上げた武技なのにい~このチート!チート野郎!そうだ、これから千景じゃなくチー景と呼ぼう!そうしよう!」
ふんふんと鼻息荒く千景を罵倒する様は鼻息の荒い霊長類である あえて種族名をいうなれば
ゴリラである
「やっぱりゴリラじゃん・・・」
「ふんっ!!!!」
ゴスッ!!!!
点穴された僕は膝から崩れ落ちうつ伏せになったままアップデートが終わるまで放置された