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僕、水城昴の所に崋山派から面白いクラン員が来る前日
古い友人である崋山派のクランマスター式園円と通信で話したんだ。
僕はワインを飲みながら、円は妊娠中なのでお茶だ(カフェイン少なめの)。
「昴~うちのクラン員に何かしたらただじゃおかないからね?分かってるだろうね」
「もうさっきから何回それ言ったよ。君、酒飲んでないよね?なのに何で絡み酒みたいに
なってるの?妊娠してるんだから飲んじゃ駄目だよ?」
「判ってるわよ、飲んでないし注意してる」
「ならいいんだけどさ、今回のクラン員はそんなに重要人物なの?聞いたことないんだけど?」
「・・・・・・」
「おい、黙るな」
「昴には関係ない」
「はあ!?絡まれ損なの!?なんなんだよ・・・」
「なあ・・・」
「ん?何?」
「私妊娠してるじゃん・・・」
「してるねえ」
「もし、私が怪我とかして母体が危なくなったときに赤ちゃんを別の人間に移動とかって・・・
出来る?」
「いきなりだね・・・まあ、そのときの状況によって変わると思うけど出来るよ。
もちろんそんな状況なんて勘弁願いたいね」
「まあ、たとえ話だから」
「うん、でも何でそんな話を?」
「・・・別の人に子供を移したら私とその人の子供って事にならない?」
「・・・ぱどぅん?」
「だから私から他の女性に私の子供を移植したら私とその人の子供って事にならない?
なるわよね?」
「・・・あほなの?」
「仮定の話だから!本気じゃないから!」
「うそだね!本気のトーンだったし!そんな事の片棒担ぐのは勘弁願いたいね!
色々やらかしてる僕だけどそんな・・・あ!お前あれだろ?
昔のアメリカのSFTVドラマであったよな!妊娠した女性が怪我してそのままだと母体も子供も危ないからって子供を別の女性に移動させるって話!
あれはフィクションだろうが!やーめーろーよー、空想と現実を混同させるの!」
「こんな空想的なファンタジー世界にいるのにそんな事言うなよ!いいだろ!夢見ても!」
「何が夢だよ変態の発想だろうが!」
「あの人の子供が欲しいの!愛しい人の子供が欲しい!それのどこがいけないって言うのよ!
私がお父さんで産んでくれた子がお母さん!生まれた子は二人の子供!」
「何か良い話っぽく言ってるが駄目!それに君、その子のお父さんがすでにいるんだろ!
もしかして又、父親判んないの?やーめーてーよー」
「いや、今回は判る」
「え、そうなの?誰?」
「・・・・・・・・・」
「なんで沈黙?」
「・・・」
「円さん?」
「・・・」
「おい、式園 円。まさかとは思うが・・・名前に[ラ]が付きますか?」
「・・・当たり」
「・・・・・・・・・冗談でしょ?勘弁してよ・・・ライドなの?よりにもよってあの男かー
どうすんのさー下手したらこの国が混乱するでしょー」
「だって・・・」
「はい、言い訳は無し。で、本当に?」
「本当」
「そっか・・・もしかして子供を移動させてその人の子供にするっていうのは騒乱を回避する為
だったりするのかな?」
「いや、それは単に彼女の子供が欲しいだけ」
「そこは嘘でも回避する為って言って欲しかった・・・」
円が変態発言した意味を僕は次の日に知る事になる。
円が欲しかったのはあの人の子供。
そう、式園円が未だに想い続けている人、御園 将の子供。生まれ変わりである御園 百合花に
自分の子供を移植してまで繋がりを求めてしまうほど愛している人。生まれ変わって
性別が変わっても愛している人。
多くの人と恋、愛を交わしながらもそれでも未だに心の中にいる人。
彼に恋人が出来たときに慰めたのは僕。
あの時は大変だったんだよ、もう。ふっきれたと思ってたのに。
一途すぎるだろう、円よ。友人として心配だよ。
んもー円が変な事言うから本当に心配になってきたよー。
とりあえず百合花君には気をつけるように言っておくよ。それくらいはいいだろう友よ。
それとな本当の父親だけどさ、そいつ今度殴る。心配事増やしやがって。
自分の立場考えろっての・・・ライドよ!手前この国の王様なんだから自重しろよ!
ライドって名前だから円の上に乗りましたってか?誰が上手い事やれと言ったと?
そりゃ、王妃亡くなって結構経つし後添えが必要なのはわかるよ?でも円かー。
二人とも僕の友人だから幸せになってもらいたいさ。でもな?
王位継承順位とか大変だろうが!
まったくこの世界に来て長いけど退屈しないね!
今日も僕は友人のお陰で退屈しないで済みそうだ。