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エメラルドの血  作者: 山ノ上三条
第一章
3/111

3

「アップデ~~ト! バージョンアッ~~~プ!!!」


千景がログイン画面の[ログイン]を選択しようとした瞬間

物凄い音を立ててドアが開き何かを叫びながら乱入してきた人物がいた

その人物を驚きの表情で迎える千景



「・・・姉さん?」


「うん、姉の百合花です!」


千景は目をぱちくりさせながら乱入者を確認しているが何度見てもついさっき異世界に行くと宣言して消えた姉以外には見えなかった


「え?なんで?さっきお別れとか言いながら異世界に行ったんじゃないの?」


困惑にしながらも疑問を口にする千景に百合花らしき人物は手をだらーっと力なくぶら下げ

背中を前屈みにしてこうべを垂れる その姿はまるで幽霊のようでぼそぼそ喋る姿はとても怖い


「ログイン・・・ログインしてワールド選択場いったらアップデートが始まって・・・なんか凄い勢いでバージョンアップされてるの・・・でも・・・アップデート項目が多いらしくて全然終わる気配がないの・・・」


「・・・ああ、うん。 そうなんだ・・・異世界行くのにアップデートって・・・何それ」


「そうなのよ!今までこんな事無かったのに!なんでぇ!あと5時間掛かりますって長すぎ!

そりゃネットゲームで何年かログインしなかったらアップデート地獄なのは判るけど[エメラルドの血]は異世界で現実世界でしょうが!ふざけんな!運営氏ね!」


幽霊みたいな姿から打って変わって不動明王の如き炎を背中に背負って叫ぶ百合花の背中には本当に炎が出ていた。


「ちょ!姉さん炎!炎が出てる!あっつう!えっどうなってるのこれ!」


「ん?ああ、ごめんごめん ちょっと感情的になって知らないうちに炎だしてたわ」


そう言うと百合花の背中の炎は消えてしまった


「・・・・・・とりあえず言いたいことや聞きたいことがあるけどお帰り、姉さん」


「はい、ただいま」



今生の別れを済ませた双子の兄弟は1時間も経たずに再会と相成った 








「これから姉さんはどうするの?それとあの炎は何?本物だったみたいだけど」


「仕方ないからアップデートが終わるまでログインしてアップデート終わるまで待機状態になるしかないわね。あと炎は本物よ?なぜか知らないけど向こうのスキルがこっちの世界でも使えるの、私」


手のひらから小さな火を出しそれを大きくしたり小さくしたり色を変えたりとまるでマジックショーの如くちゃらら~ららら~と鼻歌を歌いながら操作する百合花の姿はコミカルである。

火の次に出したのは水である 水が空中に浮かびイルカやクジラなどの形に変わる様は幻想的である

トリックでもあるのかと疑いの目で見ていた千景であったが一瞬で水が氷に固まる所を見てしまえば

もはやトリックではないことは明白でその目には驚愕の色が浮かんでいた。



「どう?凄いでしょ 見直した?」


「うん、どうやってるか判らないけどトリックでは有り得ない現象だった・・・」


「そうでしょう、そうでしょうとも! でもこれはただのお遊びでしかないからね もっと凄い事も出来るけど室内でやったら大惨事になるから自重するわ」


「ぜひそうしてください」


「うん、じゃあ言いたいこともぶちまけたし部屋に戻ってアップデート終わるの待つとしまーす

今度こそお別れだね、じゃあね千景 元気でね」


立ち上がり千景に手を振り部屋を出ようとする姉に弟は自らの身におきた問題を投げかける。


「待って姉さん、僕の話聞いてくれないかな?」


「ん?なあに?」


千景は軽く息を吸って一気に捲くし立てる。


「あのさ、姉さんの言ってたエメラルドの血ってゲームって異世界へ行くための試験?試練だっけ?

まあどっちでもいいやそんな感じの奴だよね。それに合格した人が異世界に行けるって話だったような?ここまで合ってる?それでなんか目閉じて呪文唱えたらログイン画面が出るんだよね。うん、ここまでは理解してた。さて、ここからが本題です! 僕が冗談で目を閉じて呪文唱えたらログイン画面が出てきたんだけどこれって普通の事でいいんですよね!ゲームやってなくて試練?試験?に合格してなくて異世界とかに全く関係ない人間でも呪文唱えたらログイン画面出るんですよね!ね!ねえ普通って言ってください!姉さん、どうなんですか!?」


弟の余りの剣幕に百合花は固まったまま


「・・・・・・・・・・・・うそ~~ん」


ただ、一言呟くのが精一杯であった。

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