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エメラルドの血  作者: 山ノ上三条
第一章
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1

「私、前世の記憶があるの!」


残念系美少女の姉が変な事を言い出した




数分前に大事な話があると姉の百合花が僕に話しかけてきたので、姉の部屋で話を聞いてみれば

この有様ですよ。

最近ネット小説をよく見ているのは知っているし、作品の傾向が転生物なのは知っていたけれど

まさかリアルでこんな事言い出すとは思わなかった。


姉、中二病発症ですか・・・

僕らもう高校1年生なんですが・・・。


「姉さん、とうとう・・・」


「とうとうってなによ! 本当なのよ?真剣なのよ?」


目の前に居る、眉間に皺寄せて憤る姉は美形なのに時々変な表情をしている時がある

二卵性双生児である僕と姉は何故か同じ顔なので顔を褒めるのは自分の顔を褒めるようで、

ちょっと嫌なのだが、本当に美人なのになんでこんな変顔するのか判らない残念な人なのは確かだ。


「本当と言われてもねえ・・・信じられないよ」


「ですよねー・・・ まあ・・・反応が良くないのは想像してた、うん」



おや?珍しい反応だ。いつもならもっと反論するはずなのに。



「なので説明も兼ねてこんな物を用意してま〜す!」


そう言うと机のパソコンのディスプレイに何か画像を表示した姉 

リアクションが通販番組みたいですよ?


「なにこれ?[エメラルドの血]っていうの? すごい昔のCGだね」


「昔のネットゲームよMMOってやつね 私たちが生まれる前にサービス終了したんだけどね」


そう言うとマウスをクリックして次のCGを表示していく姉は懐かしそうに微笑みながら

これはこうなってて、ここはすごいの!など説明してくれるが僕にはふ〜んそうなんだとしか感想が無い。

しかし自分が生まれる前の物なんてよく知ってるな。 


「このネットゲームを生前にプレイしていたのよ」


ああ、ここでやっと話の最初に戻るんだ、ゲームの説明が長すぎるよ姉。




「それでこのゲームがなんなの?ゲームの知識ひけらかしても転生したなんて証明にはならないよ?」


「そりゃそうね、[これ]はただのゲームだし。だけどただのゲームじゃないのよ」


何か含みのある言葉を言いながら顎に手をあててキメ顔&流し目でこちらを見る姉。ああ・・・歯まで光らせたよ流石学校で残念系美少女と言われてるだけはあるね。

こんな変な仕草しなけりゃ残念とか言われないのに。


「このゲームはね、試験なのよ」


「試験?何の?」


「世界を救う人を探しだす試験というか試練よ!」


もうやだこの中二。







「・・・で、このゲームで行動が認められると異世界に招待されると・・・?」


「うん、ざっくり言うとそうね。ゲームなんだけど異世界では現実の世界なの、ちょっとはしょるけど私たちの世界の人間をスカウトして異世界に居る敵と戦って貰おう!そんな感じ」



鼻息荒く胸張って、どや顔しているが何なんだろう?

もうちょっと詳しく聞くべきかな。


「それで?ゲームと転生の関連は何?」


「それなんだけどね、異世界で死んじゃったの。私」



随分軽くおっしゃいますね、空想だからですかね?



「うん、そっか死んじゃったか」


「そう!死んじゃったの〜」



やっぱり軽い。




「向こうでは死亡回数制限ってのがあって、あ、説明めんどいから省くわね。とりあえずこちら側に戻されたんだけどちょっと不具合なのか判らないんだけどこちらの元の肉体に戻れなかったのよ」


「不具合って・・・」


「あのね、向こうにログインするといつも擬似魂がこちらの肉体に宿って本人の性格と同じ行動をとったりできるのね。まあ肉体をスリープモードにもできるんだけど、そのとき擬似魂モードになってて肉体に擬似魂が入ってるせいで私の魂が肉体に戻れなかったの。たぶん」



流石にここら辺は切ないのか憂いを帯びた表情を浮かべてる姉。庇護欲を誘うこの顔に騙された男達の気持ちが判らないでもない 中身は怪力ゴリラなのだけど。


「何その擬似魂って そんなものがあるの」


「そっ 本人のように考え本人のように行動するの。擬似魂が経験したことはログアウトしたときに記憶を本人の魂に転送するから本人がまるで経験したように感じるのよ〜凄いでしょ。まあ弊害もあるんだけど」


腰に手を当て胸を張って偉そうにふんぞり返る姉の顔がうざい

本当だとしても貴女の功績ではないでしょうに。


それに胸張るのは止めて欲しい 貴女でかいんだから胸が

気になってしまうでしょう、姉のだとしても。美人なのがずるいよね中身が残念系ゴリラだとしてもだ。

おっと違う残念系美少女だった(笑)。

 



姉の百合花は美人だ。

顔は祖母の瑠璃花おばあちゃんの若いころにそっくりだそうで・・・って言うか僕も同じ顔なので

凄く複雑だ。


怪力ゴリラこと

百合花姉さんは見た目華奢なのに「怪力」だ。

中学の時演劇でお姫様だっこを「した」時は皆驚いてたな、あのお姫様だっこアドリブだったし

およそ筋肉が見当たらない腕をした姉さんの「お姫様役の姉さんが女性をなぜかお姫様だっこ」してステージを走り回るという奇行は観客を唖然とさせた。

脚力もアスリート並みにある。陸上部からの勧誘が凄かったみたいだけど姉は興味ないみたいだった。


痴漢に遭いそうになったとき相手の男を蹴り倒し殴り倒し、更に捻り潰した。

正当防衛とはいえやりすぎで警察から厳重注意で済んだのが不思議なくらいの行為だ。


こんな怪力なのに本が好きで場所を選ばず良く本を読んでいる。その姿は文学少女と云う言葉に

相応しい姿だ。実に絵になる人なのだが、時々眠くなるのか大口開けて欠伸するのは止めたほうがいいよせめて手で隠そうよ。

姉さんに見とれてぼ〜っとなってた男の人がびっくりしてたよ。


とにかく行動が残念すぎて残念系美少女と呼ばれているのに、それでも!好きなんです!と、

告白する男子は絶えないのは凄い。凄いよ中身ゴリラなのに。

もてるのでよく告白されているが全てごめんなさい、だ。

いまのところ恋愛に興味が無さそうだ。

おっと、いろんな事思い出してたら話が進んでいるみたいだね。



「元の肉体に戻れなくなった後、幽霊みたいに漂う事になったみたいで何年もそのままだったの。でも、あるとき何かに引っ張られるような感覚があってふら〜っとその方向に行ったらこのとおり生まれ変わったのよ」


「ざっくりな説明ありがとう。とても簡潔ですね それで転生したと・・・」


「そうなの。普通なら元の肉体に戻れるはずが戻れないし幽霊みたいになるし大変だったのよ。 生まれ変わってから向こうのゲームの事が気になってログインしようと思ったんだけどずっとログイン画面が出なくてもう諦めてたんだけど・・・ なんと!昨日になってやっとログイン画面にアクセスできるようになったの!」


「そっかあ・・・そうなんだあ・・・」


それはもう嬉しそうに喋る姉さんに生返事しながら、


「ところでどうやってログイン画面出すの?」



などと聞いてしまった僕の魂はその時どうかしていたに違いない。

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