第六話
「ねぇ、これってWG2(ウィンドウ・ガールズ2)の初回版購入者の中から抽選で20人しか手に入らないっていう…」
「そうだよ。」
俺の部屋を一通り物色したらしく、その中でも天井に貼られているポスターがお気に召したようで。物欲しそうな顔でこっちを見ている。もちろん、やらん。その顔は可愛いけど。
俺の部屋で神前と二人っきりになって早くも一時間が経とうとしている。やっと、俺も慣れてきたが母は本当にテンパっていた。玄関を開けたときは、
「ただいまー」「おあかえりー」
「おじゃまします。」「いらっしゃ…ぅえ!?」
と、こんな具合に先ずはボディブローを貰っていた。
俺が葉月以外の女の子、しかも見た目だけで言えばかなりの清楚系美少女を連れてきたことに対して母は「これは夢なのよね。七面鳥買って来るわ。」や「神前早苗ちゃんっていうのね。早苗ちゃんはどんな白物家電が好きなのかしら。」と、意味不明な言葉を連発していた。今では砂糖と塩をギリギリ間違える程度まで意識の帰還に成功している。
母のことはとりあえず置いておいて。
「で!アレよ!」
「あぁ、美咲のタペストリーね。」
「早く見せて!人生の一分一秒が惜しいの!!美咲と歩んでいくんだから!!!」
「まぁ、よく分かるよ。その気持ち。」
未開封の美咲のタペストリーを渡す。
受け取った瞬間神前の肩が震える。何かを堪えられな…
「エクスカリヴァアアア!!!!!!」
「叫ぶな!」
ガタン、と母が何かを落とした音が聞こえた。
「ごめんね、興奮しちゃって。手に入らないと思ってたから。」
「お、おう。」
はぁ、はぁ、と女子が興奮している様子は俺の何かを擽ったけれどその興奮の元を考えれば俺も人のことは言えなかったなと同調することで自制心を保つことが出来た。
「…あ、アコギ。」
「え、あぁ。安もんだよ。」
「ねぇ、軽音部入らなくてもいいからさ。私に教えてよ。」
「アコギを?」
「どっちかっていうと、弾き語り?」
「そんなに上手くないんだよ。俺。」
「そんなことないよ、あんなにアニソン上手に弾き語り出来る人見たことないし。」
「見てたのかよ!」
三が日にほぼほぼアニソンオンリーの俺の路上ライブとも言えない黒歴史となりつつある路上演奏を見ていたのか。まぁ、なんか褒められたけど。
「まぁ、時間さえ合えばいいよ。俺でよければ。」
何で了承できたんだろう。
「何の曲やりたいとかある?えっと、譜面がここら辺に」
何でこんなに積極的なんだろう。
「神前はどこのギター使ってるの?」
距離間ってこんな簡単に縮まるもんなのか?
神前が口を開く。
「なんだ、できるじゃん。」
「え?」
どういうこと?
「長谷川君ってもっと人と関わるの面倒に思う人だと思ってた。でも、違ったんだね。なんか、安心した。」
「…いや、その、」
「やっぱ、長谷川君と友達になれてよかったよ。」
やめてくれよ。
「長谷川君、ありがとね。」
「じゃあ、明日の放課後にどっか場所探して練習しよっか。今日はごめん、今からやることあるんだ。帰ってもらっていいかな?」
「…そっか、じゃあ帰るね。」
また、その顔。初めて会った時と同じ顔。
「タペストリーありがとう。大切にする。」
「おう。」
部屋から出るとリビングで葉月が母とお茶していた。
「…おい。」
スルーしとくか。
※
神前が帰ってから暫くして葉月が帰った。
痛ベッドに仰向けになる。
「…あーあ。」
いつになったら直るんだろうな。
この性格。直す必要性を感じてないってのもネックなのかも。
「…ギャルゲしよ。」
PCを立ち上げた瞬間に玄関のチャイムが鳴る。
このタイミングはこの前ネットで注文したパーカーだろう。服は必要最低限をネットでしか買わない主義な俺。そろそろ今着ているものがボロくなってきたのでまったく同じものを買った。
重力を全身に感じながら玄関に向かう。
ピンポーン。
はいはい、今行きますよ。っと。
玄関を開ける。そこにはやはり宅配業者の人がいた。
「すいません、印鑑無いんでサインで大丈夫ですか?」
「大丈夫っすよー。じゃあここにサインを。」
「はーい…!?」
宅配業者さんの後ろには神前早苗がいた。
神前早苗の後ろには朝比奈葉月がいた。
その後ろには何故か猫がいた。
ド○クエかよ。
どうせ吐き出す空気を思いっきり吸って。
「…あーあ。」




