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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第十九章「帰郷作戦」

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君の名は?

【用語】


『魔法翻訳』

:地球人と異世界人の間のみで発生する自動翻訳機能。聞くことと読むことに対して認知内で互いの意図認識が瞬時に置換される。互いの文化に類似概念が無い場合や固有名詞に関しては単純な音で認識されるのみで、翻訳魔法が発動しない。置換も言葉で表現している範囲の表層的なモノであり、背景となる概念が伝わることはない。だが、この効果のおかげで転移してきた地球人と異世界人は意志疎通をはかることができる。ただしその翻訳は感覚的なモノであり、聴く者や読む者、話す者や書く者が抱く心象や感情、気分の影響を強く受ける。誰かが「ばか」と書いたときに、後刻その言葉を読んだ者に筆記者の抱くニュアンス、例えば、親愛・侮蔑・怒り・失望などなどが伝わる。さらに受け手の意識も影響する為に「とって」という依頼形が、聴いた相手が怖れを抱いている場合に「とれ」という命令形に聴こえたりもする。聴こえた瞬間、見えた瞬間に意識内で変換される為に、良かれ悪しかれ「聴こえたいように聞こえてしまう」危険性がある。

この効果は魔法ではないかと推測されることから「魔法翻訳」と名付けられたが、そういった魔法は異世界には知られていないらしい。


なお異世界も様々な文化様々な言語が併存している。地球は主要言語が日本語、次いで英語。異世界は帝国公用語が主流ではあるが多数派は存在しない。本来であれば言語という偶発性が高い合図をゼロから共有する為には、片言程度に至るにも年単位の時間が必要とされる。実際、地球上でまったく初めての文化が接触した場合は十数年、あるいは数十年経っても理解に達していないことが多い。


意図的に行われない魔法であってもそれは変わらないがそれを意識させない。


地球人類にも。

異世界種族にも。



今だけ?

元々?

転移から?

―――――――――昭和22年5月3日から、かもねぇ♪︎


「国際連合」は「帝国」で。

日本国じゃなく。

「日本」は「騎竜民族」で。

日本民族じゃない。


共通点は何かしら?


異世界征服じゃないわよ。

負けた(勝った)じゃない。


似てるな~って想うのよ。

考えるんじゃなくて。


両方が一致しているトコロ。



―――――――――戦争への最適化―――――――――



余所者が願った(強いた)理想。


沿岸部(英米)で大負けした魔法使い(思想家)たちが「()()()()()」と造った仕掛け。


だから。


お祖父様たちは自主憲法制定(憲法第9条破棄)を目指した。

もう戦争は御免だから。


おやじ様たちは憲法第9条(日本の戦争)を維持した。

普通の国に(戦争を)する為に。


世界大戦で打ち消された、理想(理性)的戦争。

大義も民族も国家も必要ない。


過程に過ぎない()()()()()


啓蒙主義が理想とした

「憎しみのない理性的な殺人」

「奪う為ではない取引の為」

「手段としての戦争」

が、コレ。



―――――――平和主義―――――――

理性以外のすべてを斬り捨てた後に残ったもの。





【異世界大陸北東部/帝国辺境領/回復予定領/割譲可能領/作戦周辺領/低要度・高危険度領/斥候周回処/???】


不審者に「何者だ!」と尋ねるのはフィクションだけ。


他にも「待て」とか「吐け」とか「完全に包囲されている」などなど。

実際に多様されるのは「自供しました(していない)」「証言があり(言いっぱなし)」「確認されました(誰がかは不明)」などなど。


それとて当事者に向けてではなくマスコミに書かせ唄わせ賑やかすモノ。

事実確認は状況証拠の積み上げでないと出来ないし認識確認なら自白剤。

解釈の自由やら真実の選択やら大義名分が造られるのは解決した後の話。

理屈と貨車は後から付いて来ると言われるとおり、先ず行動から始める。


書類の中で遊んで居られない異世界では事実が問われる。

ニヤついている怪しい彼女が無視されるのは常道だが。

がら空きの港とはいえ航路上に居る不審船こそ問題。


停止したスクーナー。

停止させたガレー船。

したのかさせたのか。


まだ誰にも責任が生じない。

たった一つの冴えたやり口。

つまりは()()()()()()という行動をした

――――――――――今すぐには。


通常、港に船が入港するとガレー船に迎えられる。

今回と同じように。

普通、一船団に対してガレー船が一隻で出迎える。

今回と逆なように。


港は基本的に自然の地形に従って設けられる。

広さや水路を自由には出来ない。

帝国は竜やゴーレム、魔法を使う大規模工事。

山を崩して大地を穿ち自由自在。


海に興味が無いから余りやらなかったけれど。


だから大きな港でも停泊航行のスペースは限られている。

いやむしろ需要が多いからこそ港が大きくなる。

天然の良港でも積み降ろしが無ければ、せいぜい漁港だ。


大規模な港は多くの船が出入りする。


航海に適した季節。

出荷入荷の繁忙期。

臨時緊急、予定外。


常にではなくオフシーズンはあれどオンシーズンもある。

凪いだ外洋ならばともかく、港湾内部は時間が支配する。


平均して船が多いというだけではない。


風任せ。

波任せ。

潮任せ。


細かいスケジュール調整が出来ない。


船のサイズ。

船団の隻数。

予定は未定。


定期船団や季節船団すら、()()()()のことしか判らない。


港内航路の容量は多くない。

事故率こそ一番、誰しも気に病む処。


格差がある積み降ろし位置。

搬入出の作業効率は人件費や利益率に直結。


落差とすら言える停泊場所。

出入港の易し難しは船の稼働率に等しい。


それを巧く捌かなくては、事故より前に戦闘が起こる。

――――――――――起きたことがある。


交易港なら何処でも思い出せる範囲。

なにしろ未だに起こり続けている。


防ぐ仕掛けを全力で整備してなお、防げないと覚悟されてる努力目標。


約束された失敗策。

だからこそ機能する。

只今すぐはガレー船団。


港側は常に港外を見張っている。

まあ入港出来る晴天昼間だけだが。


入港見込みなどは関係者で共有。

予定ではなく見込みが技術的限界。


港の見張り台を見張るのがガレー船の見張り。

彼らは今回のように、外港から接近する船を出迎える。

その航路や停泊位置を決めなくてはならない。


船の状態大きさ。

積み荷の有無種類。

港側の受け入れ体制。


コネの有無から強さ広さも考えなくてはならない。

つまりは何より身元確認。


身元不詳(海賊)ならそれはそれで構わない。

どの程度まで許せる不審船なのかが問題点。

それを見極めるのがガレー船団の役割。


()()()()であり()()()()のではない念のため。


ガレー船から視るスクーナー。


此処、異世界でも海賊は海賊マークなど掲げない。

いや当たり前だが。


何処の強盗が強盗此処にアリと宣伝するかという。

地球でも同じこと。


いわゆる髑髏マークは捕えられた海賊に掲げる物。

海賊殺し側の発祥。


この者は海賊だから処刑します/しました、というデモンストレーション。


海賊を辱しめる為のマークを海賊が付ける訳が無い。

異世界は、それ以前だが。


スクーナーは船外から観える場所の折々に、大きな紋章を掲げている。

紋章目印は帆に染め抜かれ帆柱や船積舟(救命ボート)に刻まれる。


それは極、一般的な仕様だろう。

船には識別マークが付き物だ。


世界帝国の一部である世界。

当然、国章国旗の類いはない。


そんなものを掲げたら反帝国分子と見なされて皆殺し。

だから青龍が出現した刻に国際連合旗で伝わったのだが。

――――――――――帝国の敵と。


とは言えそれは魔法翻訳の効果に由る。

国際連合旗や国旗国章の意味が伝わった。

・・・・・・・・・・なんとなく、だが。


領土。

国民。

政府。

これを不可分にしたら国家と言うらしい。


そもそも国家の概念が生まれたのは、地球人類史上でも19世紀。

民族という概念とほぼ同時期ってことは、異世界からみて千年後。

そもそも千年たったら生まれるとも言えない理由の無い概念だが。


ちなみに国際連合は「帝国」名、日本は国際連合の支配「氏族」名と翻訳されたのはどうなのか?


なんとなくでも異世界に認知されたのは帝国が在ったからだろう。

――――――――帝国みたいなモノ(地球人類)――――――――


もちろん魔法翻訳は異世界種族の間同士に無効。

紋章に公的な意味を見出だすことはない。


諸王国時代には国旗に準ずる物は在ったのだが。


帝国支配が最も浅い地域でも十年は経っている。

世代を重ねた帝国産まれも、また多い。


帝国統治下に置ける紋章の意味は一つだけ。


――――――――私的な立場の表明――――――――


人物。

氏族。

商会。

結社。

等々。

半ば被るところもあるが、紋章が示している事物。


船舶に掲げて示すのは入港時の名乗りであり、遭難時の署名にもなる。


声が出せない届かない。

一目で解るシンボルマーク。

判らないとすら、解る。


定期航路の船ならば帆の紋章一つで全てが判明。

船主、商い、積み荷、船長と代わる上級士官も。

馴染みの水先案内人の舟が寄ってくるくらいだ。


当然、港に知られた紋章を掲げたら自動的に馴染みの相手から面通しされることになる。


海賊が知られた紋章を装えない理由。

かと言って紋章なしでは不審者宣言(開き直り)

紋章が無ければ当然、沈められるが。


だから海賊も海賊以外も、皆がなにかしらの紋章を掲げてる。


それはもちろん不審なスクーナーも紋章を掲げていた。

ガレー船の保有している識別帳には無いマーク。

それはもちろん識別帳を見るくらいだから記憶にない。


見知られていないのだから、その紋章は何の身分保証にもならない。


だが見知らぬ紋章も名乗りではある。

義務を知り果たしているということ。


スクーナー側に非はない。

非が在れば簡単だったが。


はじめまして、というところだろう。

商路開拓の為に初入港とて有り得る。


それなら事前に寄港先へ根回しするモノではあるが。

交易路では親書を託す信頼出来る相手に不自由しない。

不自由するような奴は商いが出来ない、とも言える。


それさえ在れば不審船騒ぎに為らなかった。

――――――――――或いはしていたのかもしれないが。


世界が青龍にひっくり返されて、二ヶ月半。

港街の半壊から一ヶ月半。


根回ししておいた相手が消えた。

ありえることだ。

根回しのしようが無いから独走。

面倒なことだ。


それでも読み取れること。


紋章の図形。

広葉と厚い花弁。

南方の植物。


もちろん大陸北端の太守領から観れば、他の邦は全て南方だが。


植生の特徴から観れば、大陸中央の内海より南か。

見てはいないが知ってはいる範囲。

紋章は出自や主要活動地域で知られた物が大半だ。

わざわざ外してくることは、ない。


名刺代わりの挨拶ならば奇を衒う意味がない。

名が態を表さずば、何の役に立つか。


見知らぬ相手を困惑させ見知った相手に呼ばれない。

キラキラネームのようなもの、と言えば解りやすい。


紋章も等しく。

マイナスは論外。

使われる様に造る。


そうしない馬鹿に船は持てない。

だから模様でアタリがつけられる。


大陸最大の大港より南。

旧帝国支配領域南東部。

今は青龍の勢力圏南部。


大陸沿岸部の物流は南北に別れ中央で仕切られる。

内海入り口、南北の大港が、その仕切りにあたる。

南北の物質は帝国支配下ならば大陸中を流通する。


内陸部から内海経由で南北交易路へ。

南北交易路から内海経由で内陸部へ。

最初から最後まで同じ船は使わない。


内海入り口の南北大港で積み替えるモノだ。


内海を良く知る慣れた船へ。

北洋を良く知る慣れた船へ。

南洋を良く知る慣れた船へ。


地形海底気象に左右され易い沿岸航路。

処々の水先案内を受けても対応仕切れない。

船ごと船員も地域専用に入れ替えた方が早い。


それが、一般的な考え方。

船を雇うか。

荷を売るか。

何れにせよ、船は替わる。


ならばこのスクーナーは、中継港を超えて北洋まで来た、ということになる。


ほぼ未踏海域への冒険に近い。

その割には船体が傷んでいない。

船齢はそれなりの様だか無傷。


ちょくちょく寄港整備したのだろう。


その分、日時と金を費やした筈。

つまりは金だが何が狙いか。

商船がやることじゃない。


――――――――――こんなところか。


「言葉は何が使える?」

ガレー船の船長は、帝国公用語(騎竜民族の言葉)で呼び掛けた。

船の士官以上なら騎竜民族の言葉(帝国公用語)は自由自在。


だが船乗りや、居るなら乗客が使えるとは限らない。

トラブルを防ぐ為に把握しておきたいところだ。

太守領で一般的な大陸北東部方言が使えればいいが。

場合によっては、日本語で筆談することになる。

日本語ならば、間違っていても意図が通じるからな。


「ようこそ(おか)へ!」


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