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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

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80/996

偵察という概念がある世界/The 10th day Briefing

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『わたくし』

地球側呼称《お嬢》

現地側呼称《妹分/ちいねえ様/お嬢様》

12歳/女性

:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。



【登場人物/三人称】


地球側呼称《元カノ/団長/だんちょー/一尉/一尉殿》

現地側呼称《青龍の女将軍/団長/主》

?歳/女性

:国際連合軍大尉/陸上自衛隊一尉。国際連合軍独立教導旅団団長。『俺』の元カノ。指揮下の兵士にASEAN諸国出身の地球兵士、現地人間種やドワーフ/エルフを含む多世界複合部隊「黒旗団」指揮官。




当たり前の事。


それは、わざわざ『あたりまえ』と言われるだけに、無視されることがある。でなければ、言葉そのものが生まれない。


であれば、そもそも『当たり前』なのかどうかということになるのだが・・・それは問うまい。



だが。

仮に結果としてどうであったとしても、万人の同意を得られるのであればそれは当たり前と称してもいいだろう。


例えば。


戦争する前に相手の事を知る。


当たり前だ。


数は?組織は?装備は?戦術は?地理は?

正確にわからなくとも、ある程度あたりをつける。


当たり前だ。


相手がどこにいるか調べる。相手がどんな組織か調べる。相手が何者か調べる。

必ずしも正確な答えが得られるとは限らないが、出来るだけ調べる


当たり前だ。


状況が解らなければ、それを調べること自体が作戦目的になるだろう。

その場合は、開戦してからの調査であり褒められたことではない。しかし開戦タイミングを選べないときは仕方ない。


当たり前だ。

挙げていけばきりがない。



では、これは。


標的の位置がわからないまま特殊部隊が離陸してしまった作戦。

手違いじゃない。内通者が教えてくれるはずだったのだ。はず、で作戦を立ててしかも実行してしまった。結果は推して知るべし。

敵がどこにいるかわからないのに戦闘を始めてはいけない。


下手なフィクションではなく、実話だから救われない。だからこそ『当たり前』という言葉が生まれたのだろう。


敵を知らずに戦いを挑む、あるいは攻撃に転じるなんて、なんと評すべきだろうか?





【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室】


あたしは気がつかなかった。青龍の貴族は知っていた。だから、尋ねられてびっくりした。


港を出る前。

慌ただしい奴隷市場。煌々と辺りを照らす青龍の魔法。

駆け回る青龍の騎士。走る黒旗団の兵士たち。歩き回る奴隷は、奴隷商人の誠意。


あたしはあの娘たちを寝かしつけた。寝室の窓は事前に厚いカーテンで仕切られて、魔法の明かりは入らない。

今夜は涼しいからちょうどいい。館の外、部屋の前での作業も禁止。


みんな、青龍の貴族の命令。


あたしたちを眠らせる為。青龍の騎士長と僧侶に。部屋を隔ててなお、耳を澄ませる、あたしには聴こえていた。


最近は、聴かなくていい事ばかりだけど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エルフの耳には、こんなご褒美もあるわね。


あの娘たちは青龍の貴族が寝るまで待つ、と頑張っていた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・寝台で待たせたから、あえなく就寝。


あたしたちが休むのは、彼の寝室。

青龍の貴族が起きている、執務室の隣。


あたしは呼ばれていた。寝る前に、と。珍しく。夜。


執務室と寝室にはあたしたちがいる。

薄い夜着一つになるから、青龍の騎士は非常時以外、立ち入らない。


青龍は皆、女の肌に禁忌を持っているみたい。


興味はあれど、見てはいけない、ような?あたしたちの世界では、女は普通に肌を晒す。もちろん、性的な意味じゃなくて水浴びや体を拭う時。

それは庶民の常識。



もちろん、あの娘たちのような家柄なら絶対にない。

でも、ソレは例外。


貴族騎士大商人は血の継承にこだわる。だから娘が特別な意味をもつ。

少し下の市民が真似する事もあるが、普通はこだわらない。


子供は村のもの、だから父親がだれでもかまわない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・農村漁村はそんなものだ。



だから、階級を問わずに男は女の肌から目を逸らしたりしない。はやし立てたり、凝視するのはチンピラだけだけど。


青龍が恐れる血の呪い。

大陸の女と交わることで街や邦を滅ぼす祟りがうまれる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・触れなければ大丈夫、って言ったわよね。


と言うことは、青龍は男も血を重んじる、のかしら。

女の肌から目をそらそうともしない青龍は、青龍の貴族だけだしね

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんか、騎士たちより慣れてる感じ。


ううん、当たり前よ、当たり前。

エルフじゃないんだから、人間がツガイを幾つも持つのは普通普通。


青龍が、いわゆる人間か、わからないけれど、今は、今夜は

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二人きり。


月明かり、とはいかないし、あたしも寝具用の長衣をまとっていたけれど。


嬉しくない、と言ったら殺される。

主に厄介な二人に。


期待しない、と言えば泣かれる。

主に大切な二人に。


なにかあれば、四人まとめて大騒ぎ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しばらく、過ごせれば、触れ合えなくても。

いいわよね。


だからまあ、少し浮かれていたのだろう。

あたしは。


妹分に、香料の薫りに気がつかれ一悶着。すぐ隣なんだから、なにもありません!と宥めすかして、時間をとってしまった。


夜目を生かして、着衣と髪を整えたのは内緒。


寝室に、青龍の明かり、あたしたちに許された魔法はあるけれど。大切な二人を起こさないように。呼吸を整えた。


そーっと寝室をでて、振り返る。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――がっかり。




青龍の女将軍がいた。

こんな脅威を見逃すなんて!!!あたしはどうしてしまったのかしら!!!!!!!しかも、嫌な笑いで見てるし!!!!!!!!!!




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室/執務机】


俺は、顔をこわばらせていた、と思う。いや、それどころじゃないし。


なぜか、すごーく、悔しそうな、エルフっ子。

な、涙目??


勝ち誇っている、元カノ。

なんだ?勝負事か?賭けでもしてたのか?




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室/青龍の貴族の前】


あたしは、澄ました顔で青龍の貴族に一礼。

ことさら一線を引いてみせた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全然、気がついて、くれなかった。

歩みよると、青龍の女将軍に、背中をポンッと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すっごく、腹が立つ。


しかも、あたしに本気で同情してる!!!

わかるわかる!!!

ってかんじ!!!!



「人がいないのはなぜだ」


青龍の貴族に虚をつかれた。いつもだけど。言葉だけで終わらせる気はないらしく、部屋にいろいろな景色や表が浮かぶ。

言葉は短いけれど、説明を惜しんだりはしないのよね。おかげで、青龍の貴族が何を指しているかわかった。


農村に農夫がいないように見えるのはなぜか、ってことね。



「港に出るまでに、空から農地を見ていた」


あたし?

港街には青龍の飛龍に乗せられて、瞬く間に着いたのだけど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに空から外を見ていた。


いえ、見ていたのは農地っていうより、ただ景色を見ていたんだけど。

むしろ、森や山を。


落ち着いて空を飛んだのは初めてで――――――――――はしゃいで、いた、気がする。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だってだってだって!

龍に乗るなんて初めて!

ううん、はじめては青龍の貴族と街に戻った時だけど!

あの時は、出会ったばかりで、どうなるか判らなくて、緊張しながら混乱してたし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて思いを押し殺した。


青龍の貴族は、あの時・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頭目の相手をしていた。


初見の二人。


あの頃の頭目は、青龍を、青龍の貴族を必死に推し量ろうとしていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今はあんなにデレデレなのに。


あたしはあたしで、頭目に警戒されて助け舟も出せない。


それに、下手に手出しをしないほうがいい、っ割り切って知らんぷり。


青龍の貴族は常と変わらず傍若無人。


龍籠の中は緊張感でいっぱい。



頭目は駆け引きをしかけ、青龍の貴族がいなす。

そんな真剣勝負の最中。


それなのに、あたしを見てたんだ。あたし自身、そしてあたしが何かを見ているのを

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・貴男は眼がいくつあるの?




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室/執務机】


俺は出発前夜の作戦会議でエルフっ子から状況確認。


あ・・・・・・なるほど。

農村は今非常に人手不足です。

と。

なぜなら、労役に狩り出されて春に返ってくるはずの方々が返ってこられないからです。

と。



うん、悪気は無かったんだよ悪気は。




何故か年末に日本列島がこちらに転移。

俺たちのせいじゃないよね?


何故か2月には俺たち乱入。異世界大陸に軍事侵攻。

何故、2月?



まあ、仕方ない。素人考えでも当たり前だ。



いや、明治政府みたいに、旧体制からの経緯を無視して、何も考えずに自爆外交始める例もあるけどね?二十一世紀の俺達は、そこまでファンキーじゃなかった訳で。

だから、俺たちの指導者は常識的に考えた。



軍事を含む外交に置いて、相手を知らずに動くなんて有り得ない、と。



どんな地形で、どの程度の文明で、人口が何人で、情勢はどうなっているのか。


調べてたら、2月になったんだろうな。

シカタナイネー。


選挙日程もあったろうけど、1ヶ月ちょい、か。


俺は何も知らないが、流れに見当はつく。

十日もあれば偵察機で概況が掴める・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが年明け。


概況が掴めれば、斥候が送れる。


潜水艦でコマンドを送り出した。それを回収し、様子が掴めるに従い、活動範囲を広げて空挺降下も始まる。


現地人から直接に話を聴ければ、文明レベルもわかる。話を聴くだけでも、ね。

異世界は、ちょうど征服戦争末期。

市井の住民だって、生活の為に、身を守るために世界情勢に通じていただろう。

ある程度は。


まあ、帝国が支配者になり、最近戦争が一段落した、くらいは?


在日米軍の白人兵士なら、白人種っぽい外見しかない現地人に紛れ込める。

だが、中世世界に溶け込める訳がない。

いわゆる諜報は不可能。


ちょうど征服戦争が終わったばかり。残党狩りも激しい時期のはず。

斥候部隊は現地住民との友好関係構築など、考えもしなかっただろう。


末端の住民から話を聴き、更に上層の人間を聴きだして話を聴き、更に

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・友好的に聴く必要は、ない。


正直な話を聴ければ、十分。


それで、異世界の政治/軍事のアウトラインがわかる。

後腐れなく恨みをかわない方法など下っ端の俺にも考えつく。かわない、じゃないか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・恨みをかって、恨みごと消滅させる。


以後の決断が平和であれ、なんであれ、なにも問題は、残らない。

物理的に、遺さない。



斥候部隊と潜水艦を隔離すれば、パンデミック対策は可能。

斥候自身が、モルモット。

あるいは、カナリアか。



ヒューミントを進める間にも、画像が集まる。



帝国軍は西に向け転進中。

整然と隊列を組、規則正しく。ただ数えれば判る。兵数、竜の数、練度、装備、移動速度。


竜やゴーレムのサイズは人との比較から、重さは地面の質と痕跡から。


情報収集と分析に1ヶ月。


決定自体も、1ヶ月かけてゆっくり行われたのだろう。

議員達が国内を取りまとめつつ、人々の関心を外から逸らす。

国連再建の為に集まったのは、各国ともプロの外交官。

情報分析は在日米軍の軍事官僚が進める。


決断するのは?


毀誉褒貶はあるが、決断力だけは否定するものがいない議員。

それを補佐するのが、世界最大の侵略軍を指揮し慣れた元合衆国統合参謀本部議長。


そして、2月1日。

第七艦隊と合衆国海兵隊が大陸沿岸を蹂躙。海自護衛艦隊が異世界大陸の海上交易路を封鎖した。



かくして。

太守領から南で労役中の皆々様方は、帰還手段を失ったわけだ。

悪気は無かった、たぶん。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室/青龍の貴族の前】


あたしが見せられた、映し出される資料。

というか、使い方は覚えているから、自分で開けるけれど。



はるか高みから見下ろされた農村の畑にいる麦粒ほどの人影が

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・凄い勢いで、ああ、ここしばらくの世界を閉じ込めて・・・・・・・・・・・・るの??????????



――――――――――――――――――――そう言えば、青龍は過去の会話を取り寄せたり出来たわね。



しかも、時の流れを操るなんて、もう、デタラメ。

傍らの数字。

目まぐるしく動くのは、日付?のしたの、時間???

動かない数字は、太守領を区切った範囲ごとに働いている人数、かな。



例年の人数なんか知らないけど、あたしみたいな素人にもわかる。

畑の広さに対して農民が少なすぎる。

拡大すると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、女に老人、子供。

まあ、おじさんもいるけど、働き盛りが少ない。


青龍の貴族は、納得したみたい。


あたしは、一応、聞いてみた。


「まだ、生きてるかしら」


労役に駆り出された農民たちが向かった、であろう星都。

十数万人の反帝国勢力・・・・・・・・・・・・ほとんどはただの住民だろうけど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・が皆殺しにされた場所。


そこで作業していたってことは、沿岸部、つまり、帝国と青龍が殴り合った足元に農民たちがいた事になる。


「しらん」


青龍の貴族はあっさりしたもの。まあ、あたしだって、関心が強い訳じゃない。正直、この邦の住民、その生死に関心はない。



ただ、あの娘が気にする。


何とかできるといいけれど・・・・・・・・どう持ちかけるべきかしら。

税収を維持する為の労働力が必要なら、徐々に移民を募ってもいい。


でも、あの娘が気に病むのは、故郷に帰れない人たち。そして故郷で待つ人たち。


「確認は依頼した」


あら?

あたしは青龍の貴族を見た。


「では明日の」


ちょっとまって!


「こら、足りない」


青龍の女将軍にたしなめられた、青龍の貴族。

何が?という顔。


青龍の女将軍がため息。


「行方不明のお百姓さんはね、探してみてるわ。見つかるか、わかんないけどね」


なにしろ、青龍は敵、つまり帝国、以外に関心が無い。農民達を足元で踏みつぶしたかもしれないけれど、見向きもしないでしょうね。


星都破壊作業の現場には、帝国軍が居たにきまってる。

それが作業監督の為でも、何万何十万の人足が、帝国軍旗の下に居たはず。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間違いなく、青龍は敵とみなす。


「一見、工兵にしか見えないしね」


肩をすくめる青龍の女将軍。


青龍にも、帝国軍にしかいない、工兵がいるのね。



「だからこそ、確認できるかもしれん」



と青龍の貴族。

敵なら、農夫たちが敵とみなされたのなら、青龍が関心を持つ。降伏していれば青龍に保護されているだろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ある意味、この戦争の最中なら、一番安全ね。

逃げ散ってしまえば、避難民に巻き込まれてバラバラ。

もう戻れない。



「皆殺しかもしれない」


いつもと違う青龍の女将軍。

あたしは頷いた。


農民たちは、なにもしらない。恐怖にかられ、降伏せずに逃げ回れば、そうなる・・・・・・・・・・・でしょうね。


「まだ伝えるな」


――――――――――やっぱり、あの娘の為に!




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室/執務机】


俺は、いたたまれない。エルフっ子がウルウルしてるんですが、首くくっていいですか?


「ダメ」


元カノが後ろから腕を首に回してきた。出稼ぎの皆さんが見つかるかわからないのに、すっごく感謝されてるし。


えー娘や。

見つかったら見つかったで、どうやって帰還させる?

絶対、国連軍は動かない。


当たり前だ。国連軍は誰の味方でもない。作戦上の必要が無い限り、現地に干渉しない。

人足が捕虜扱いされてるかどうか?

それすらわからん。

つまり――――――――――――――――――――――――――――――今考えても、無駄だな。




【太守府/港湾都市/奴隷市場/迎賓館/中央庭園/執務室/青龍の貴族の前】


あたしは真っ赤になった。

青龍の貴族に、撫でられたのだ。頭を。そして、ソレを気にするのは青龍の女将軍だけ。

彼は全く表情を変えない。

悔しいので、さりげなく寄り添って見せた。唸り声が聞こえるけれど、気にしない気にしない。


「我々が太守府に向かう道」


青龍の貴族が映し出した地図、というには精密だけど、それは大回りする陸路だった。

あれ、これって・・・・・。


「数字を見たな」


ただでさえ少ない、畑で活動する人数。それが特に少ない地域。


「確認する」


確かめさえすれば、どうにでもなる。

あたしには、彼がそう言っているように聞こえた。



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