物語の開始まで/背景説明(主に初めて本作を読んでいただく方向け)2016.7.29版
挨拶前に、ご注意を。
本話と人物紹介/用語集は必読ではありません。
本編を既にお読みの方、本編から情報を読み取る苦労がむしろ楽しいという方はとばしてくださって結構です。
もちろん、本編を読んでいただいた後に確認のためにご覧いただくのもよろしいかと思います。
では、ご挨拶から。
本作にご注目いただきありがとうございます。
当初から「読みにくい」「状況がわからない」などなどもっともすぎるご指摘をいただいております。
いただいたご意見を生かし改善を進めていますが、いかんせん、最初に投稿した部分は読みにくいまま。
個人的な方針として、
「すでに読み終えている方々がいる以上、改稿などはするべきではない」
と考えております。
しかしながら、長い長い長い……物語で、入り口を狭くするのは「選んでいただいた方に迷惑だな」と自覚はしておりました。
以前から
「設定集を出せば?」
「人物紹介をあげては?」
などなど、ご意見をいただいておりました。
本作では一人称視点を原則としており、
「世界の全体状況を日々考える人はいないだろう」
ということでほとんど描写カット。
「個々人が考える/感じる世界の断片が背景世界を点描画のように表現する」
のが理想でしたが・・・・・はい、失敗。申し訳ありません。
モキュメンタリーって難しいですね。
そんなわけで、まずは話の背景をまとめてみることにしました。すでに本編で描写済のことばかりですし、ネタバレということもないと思います。
最新話まで読んだ方には必要のない文章ですので、ご了解願います。
「これじゃ解決になってない」
「設定が矛盾している」
「ネタバレがある」
などのご指摘ご意見も併せて募集しております。
では、どうぞ。
※地球魔法辞典を追加
物語の開始まで……この文章を読んでいるあなたの「今」よりほんの少し先、「今」実用化済の先進技術が広く普及している程度の日本。
【時系列】
20XX年
日本。地球上から消滅。異世界に出現。転移から一週間たった同年最終日、国会にて零号決議可決。異世界転移が法的に承認される。
翌年元日。
衆議院選挙公示。
選挙結果で現与党連合政権継続決定。
一月中旬。
新国会で「世界各国の臨時政府を正式に承認する」二号決議可決。同日、国際連合総会開催。国際連合決議零号可決。
二月一日。
国際連合特使異世界大陸へ派遣。消息不明。
同日、国際連合総会は軍事的強制措置の実行を決議。国際連合軍異世界大陸東岸へ上陸開始。
二月末。
国際連合軍は異世界大陸の帝国軍主力と会戦。勝利し大陸内陸部に侵攻。
三月中旬。
進軍停止。大陸東部沿岸への占領地拡大開始。
四月一日。第一話
物語が始まる。
【舞台】
判明している限り、地球と同じサイズの惑星。異世界で収集された資料を見る限り、季節があり、自転周期に恒星に対する自転軸の傾き、公転周期も地球に近い様子。
月が二つあるのが特徴。
転移後の日本列島東側は大洋が広がり、西側は広大な大陸。
地球人類に類似した種族が社会を構成している。外観がコーカソイド(白人種)で食事習慣建築服飾なども中世西欧/南欧風。
異世界の大陸にはエルフもドワーフも地球風ファンタジー世界の人種が多数生息。ハーフエルフは被差別種族としてあらゆる種族から嫌悪虐待される。
広大な大陸(東側)は一つの帝国が支配している。
帝国は北方騎竜民族が、魔法使いとともに建国したために竜騎士と魔法使いが特別視される。両者を兼ねた魔法騎士は崇拝の対象に近い。
魔法使いに対抗しうる奇跡を操る巫女神官、そしてなぜかエルフが絶滅政策の対象。
鍛冶鉱山を取り仕切るドワーフは優遇されている。
その中で北の辺境にある太守領が主要舞台。
帝国は撤退済で国連軍の占領部隊が到着して、お話が始まる。
【竜と魔法】
異世界には魔法使い、巫女神官と呼ばれる人々がおり、彼らは瞳が赤い。
異世界には竜がいて、特に飛行する種類はレシプロ航空機並みの速度で飛行する。
魔法。
燃やしたり癒したり爆発したりする。ゴーレムを創ったり操ったりもできる。奇跡もあるらしいが未登場。
竜。
十数mくらいの大きさで、翼(?)で跳んだり四足で歩いたりする。慣らして軍用に使うと竜騎兵と呼ばれる。
転移後、異世界と地球側、ともに民族の数だけあるような多言語が、双方向通訳されていることが判明。互いの意思疎通はできる。
異世界内部においては翻訳魔法は確認されておらず、双方の内部でも翻訳はされない。異世界間限定自動通訳/翻訳効果。
地球側では正体不明ながら「魔法翻訳」と呼称している。
もちろん万能なわけがない。
類似概念への置換がニュアンスを相互に誤認識されたり、そもそも互いの世界で互換性のある概念が存在しない場合の処理に法則性が見出せなかったり、双方個々人の認識印象に引きずられて翻訳されたり・・・・・物語内部で語られているが、翻訳されていることが原因となる行き違いや誤解が生じている。
★地球魔法辞典
:異世界では地球の科学が魔法と認識されている。地球側も特に説明する気がなく、異世界人との接触も制限しているために異世界なりの解釈で理解/呼称されている。個々人の知識の範囲、かつ印象に基づいて呼ばれるために表記は揺れる。地球人と密接な関係がある協力者や軍属、国連軍雇用兵士は地球の正式名称を覚えつつあるようだ。
『竜殺し』
:銃器の総称。7.62mm小銃で竜を殺すのはなかなか難しい。だが、竜を駆逐していく国連軍兵士の大半が装備するので異世界人からは「竜を殺す青龍の象徴」とみられている。
『水鏡』
:各種情報ディスプレイの総称。異世界魔法でも距離の影響をある程度克服して映像をやり取りする魔法を「水鏡」と呼ぶ。ただし魔法の名称や性質は異世界でも専門知識なので、水鏡に例えるのは一般的ではない。一般の異世界住民ならば例えを見出せないだろう。
『使い魔』
:各種遠隔操作ユニット。これは目的や機動が異世界魔法の使い魔と同じであるため
『竜』
:車両や航空機、艦船などは基本的にこのカテゴリ。航空機は飛竜、車両は土竜、艦船は海竜。F-16は「大隼」と呼ばれ鳥とみなされるなどの例外アリ。F/A-18が知られたらオオスズメバチ扱いされて昆虫とみられるのかもしれない。
『龍』
:車両や航空機、艦船などの乗員が内部から外部スピーカーで呼びかけを行う場合、異世界でも伝説になっている「知性ある龍」とみなされる場合がある。
『煙獣』
:各種軍用ガス。魔法生物/魔獣の一種。影響範囲確認の為に着色し一般的な煙とは違う動きをして見える為に、生物の一種ととらえられている。
【転移後の日本社会】
新しく発生した問題は「異世界とのかかわり方」。
古くから続いている問題は「このくにのかたち」。
二つが混在して影響しながら進んでいる、のか暴走しているのか。
たぶん、一個人には何もできない。かならず、一個人の運命がこれで決まる。
★現実との違い
物語世界の日本の技術はリアル世界と比べて少し進んでいます。現在では最先端として導入が検討されていたり製品化を検討しているような技術が、一般的に普及しているというていど。これは転移と関係ありません。
例
・空間投影ディスプレイ
:PCのモニターを中空に表示できる。タッチ操作も可能。
・統合型歩兵戦闘システム
:現実の米軍でテスト調達されているLandWarriorのようなもの。もっと現実的にスペックダウン、コンセプト調整されて先進国軍隊に標準装備されている。
★経済
転移後は統制経済になり、工業生産は激減。外需向けは完全停止。多くの労働者が自宅待機となり一部サービス業が活況。農業、鉱業などの再開も順次進んでいる。
インターネットは国内用ローカルネットとして復旧。
「資源備蓄の在庫は数カ月分が限度であり危機的状況にある」
と報道されているが
「資源エネルギーの消費自体が激減しているために食料なども含め完全自給は可能」
と与党連合は判断している。
転移後3カ月をすぎ生活に不自由を感じている人間はほぼいない。夜は暗くなり、TVの24時間放送はなくなった。
★政治
複数の政党と会派が入り乱れる連合与党が政権を握り、転移後のだまし討ち解散を仕切った与党第一党幹事長が政権のほぼ全権をにぎっている。衆議院の圧倒的議席数から議会主導で国が運営されており、さっそく議会を通年化して閉会しないことにしてしまった。
首相は転移後だけで三人目。証人喚問と秘密会が増え、実務には地方公務員が動員され、国連各国との調整から戦争まで議会内で完結している。
日本国内の大使館、領事館、国交がない組織に関してはそれに準ずる代表部を利用して現存する世界各国政府を立ち上げ。これを承認することで国際連合を再建。自衛隊と在日米軍を中心に、在日国民からなる各国軍を加えて国連軍を創設。
そして、異世界大陸を統治する帝国との戦争に突入。
「帝国との交渉に赴いた国連特使が帝国に攻撃されたため」
と言われている。
在日米軍を仕切る駐日アメリカ大使改め合衆国大統領が軍事を、日本国会と国連安全保障理事会/総会を仕切る幹事長(衆議院議員)が政治をまとめ、二人が「人類の総意」を主導している様子。
日本の官僚達は政府が国会により無力化され、国権が国連に侵食されていくことに危機感を強めている。
戦場こそ圧勝続きだが「ユーラシア大陸の東半分相当」を相手にどんな結末を迎えるのか?
官僚達は「秋には植民地統治開始」と計画。
米軍筋は「戦争はクリスマスには終わり」とささやく。
事実上の対外戦争とともに深まる内憂。
法律を盾に、経済界、マスコミ、検察/警察を武器にする官僚機構。
議員不逮捕特権と国際法を盾に、国会喚問と街頭演説、国連軍を兵器に対抗する議員たち。
既に対立は抜き差しならないところに向かっており、夏の参議院選挙が山場になると喧伝されている。
・・・・・・本編に、でる、のか???
【地理】
★異世界大陸地理概況(東から西へ順番に)
・日本列島(北方四島から沖縄まで含む)はほぼ太平洋相当の海洋、その西側に転移。異世界大陸と日本列島の位置関係はユーラシア大陸と日本列島に近い。
・列島西側海洋を超えた先にほぼユーラシア大陸相当の広大な陸地
・列島と大陸間の距離は最短で約800km
・大陸中緯度に横にした紅海から伸びる揚子江相当の内海大河があり大陸東側沿岸部を南北に分割
・大河の源は西部山脈から発する複数の河
・沿岸部には穀倉地帯が広がり、大河源流の合流地域まで続く
・西部山脈(内陸境界)を超えた先が内陸部
・内陸部の境界山脈を越えると高原があり、内陸最大の農業地帯
・高原のさらに西には大山脈があり、その先が内陸深奥部と呼ばれ、平原から草原に至る
・草原のさらに先、北方には竜の生息地が広がる
・南寄りに西に進むと人口過疎地域ながらシルクロードを思わせる交易路が伸びているが詳細不明
★舞台となる太守領
大陸の北部辺境。
緯度は高く日照量は少なめ。暖流の影響で平均温度はそれほど低くない。異世界の人類居住地域の北端。
北は針葉樹林の密生地でその先は人口過疎/無人地域。
南は広葉樹林の大森林でその先は大陸沿岸部人口密集地域。
西は山々が連なり主要交易ルートではないが大陸内陸部に向けた道がある。
東は大洋。その先は進む角度によって日本に至る。
首都に相当する太守府を中心に半径60kmほどの範囲が「太守領」とされている。
北辺の穀倉地帯であり、海路で南の人口密集地帯に輸出することができる。持続的な農業と海上交易で古くから王国が栄えていたが、10年前に帝国に征服され太守が置かれる。
帝国は旧支配層(王族/貴族)を根絶するが、民衆の有力者は支配に組み込む。領土の統治は実質的に太守府を本拠とする有力商人たちの集まり「参事会」が担っていた。
帝国太守は騎士団とともに国連軍との戦闘のため南に出征し戦死。その家族は二月中に陸路、内陸の帝国中枢へ向かって避難したらしい。
【戦争】
敵は「赤い龍」を国章とした帝国。
異世界において竜と魔法を大量動員し、組織力で時代を突き抜けている征服国家。
「モンゴル帝国やローマ帝国に魔法や竜を通信交通インフラとして組み込んで距離の影響を克服した」
と考えるとわかりやすい。
日本が転移してこなければ世界を征服していたと思われる。
開戦の詳細や互いの戦争目的は本編に出ていたり出ていなかったり。
国連軍
:大陸東側海上管制を確保。沿岸部主要港湾都市を占領ないし破砕。大陸東部を南北に分割し内陸部から東側海洋に繋がる大河を主進撃路とし、河沿いに西進。大河の内陸境界を超えて大陸深部に進出。主力15万は大河上流山岳部を越え内陸高原に到達。高原平野部を東西に分ける形で前線形成。帝国軍との距離は十数~数十km。
帝国軍
:国連軍部隊から最低十km以上離れて哨戒線を構築。高原平野部から更に山脈を越えて100km以上後方に30万前後の部隊を分散配置。街道沿いに兵站物質の集積を継続。最西方、内陸深奥部の帝都周辺に竜が集まりつつあり。北西の騎竜民族出生地から移送。訓練済みの竜が枯渇した可能性あり。
《プランBフェイズ1終了時点における戦術概況》