幕間:温泉の効能
『アトミックソルジャー』:合衆国軍が核実験に併せて繰り返した、爆心地突撃演習参加兵士たち。50~60年代に普通にやってました。核による支援攻撃を受けつつ、敵陣を突破占領するという。合衆国の感覚では、核が「威力の大きな爆弾」としか考えられていないのがよくわかるエピソード。
山のような兵士が被爆したために後年「非人道的な人体実験」と批判されることも多い。
んが、そんなことことはない。
原爆開発製造の初期段階では被爆の危険性を開発者すら知らなかったために、技術者や科学者、爆撃機パイロットに輸送車両運用関係者に変死が多発。
初期の原爆生産が手作り職人レベルの技術で、しかもまともなスケジュールを立てられなかった原因。最初の実験と合わせて三発造れただけで奇跡。
そんなこんなで50年代には「放射能は死ぬ」と認識がされる。
するとその情報は「あっ」という間に合衆国連邦政府官僚機構ダンジョンのカギが無い宝箱に埋伏。
結果。
原爆設置起爆担当者は放射能の危険性を理解しているから生身の士が突撃するなんて想像していない。
突撃部隊関係者はそもそも何も知らない(後年、民間のジャーナリストが問題にするまで気がつかなかった)。
演習運営者は運営スケジュール以外を気にしたことも無かった。
――――――――――――――――誰を銃殺にすればいいのかわからない
典型的な官僚主義共同無責任ポケット完成!!
よくあるよくある。
今日でも日常的な風景である。
※人道的な人体実験とは、臨床試験や試験飛行/走行/運用など。
「今は亡きソビエト連邦政府の人道的姿勢と、厳正なる断罪に敬意を!」
俺は起きたらシャワーと決めている。
まあ、日本にいる時は、だが。
異世界に来て、むしろ贅沢になって、朝風呂だったりする。
まあ、王城に居るときはね。
遠征中だと、水やお湯の衛生管理が怪しい時があるからな。
とはいえ、この邦の、中世とは思えないくらいの衛生環境。
その原因を、毎日味わうゆっくり浸かる。
そう、温泉である。
邦中津々浦々、とまでは言わないが最大都市に泉脈があるのは大きい。
水利に恵まれお湯が豊富。
本当に津もある浦もあるんだこの邦は。
単に体を流すだけでも、公衆衛生は飛躍的に向上する。
情報や上流階級が集まる都市。
その習慣は少なからず邦全体に伝播する。
もちろん燃料費を考えれば、お風呂が普及する訳がない。
だが、農業地帯故に、いや、逆か、水利が優れているからこその農業地帯。
北国だけに冬はともかく、一年の大半は水浴びをする。
性的な禁忌が乏しいだけに、男女とも普通に路上で全裸になって水やお湯を使うそうな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜ伝聞か?
いや、俺、くつろいでる異世界人見たことないんで。
俺のせいなんて、思ってないですよ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・寂しくありません。
常に両手の指ほどの人数に囲まれて、賑やかです。
やっぱり気楽にしている異世界住民は見たことありませんが。
シスターズ&Colorfulも、それなりに緊張してるしね。
気を抜くと慌てて緊張し直すくらいに。
だらけていてもいいんだよ?
そんなわけで
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・湯に水に浸かる習慣が普及すると、当然、水質汚染を厭うようになる。
誰でも汚物に跳び込みたくはない。
人間に限らないが。
動物だって昆虫だってトカゲだって竜だってそうだろう。
帝国の様に人命より水道を優先する国家の統治を受けたから、公衆衛生の概念を叩きこまれたってのはあるだろう。
一度で理解しないと普通に処刑される国造り。
それが俺たちの嫌な敵にしてこの邦を10年も統治していた主体。
彼等にとって、どんな珍奇な考え方でも身に付こうってもの。
だがもともと、この邦には汚物廃物を川に投棄する習慣は無いらしい。もちろん、それと知っても俺たちは生水を飲んだりはしないが。
衛生的だと香水なども普及しない。
この邦では、香水は恥だとか。
特殊なやむを得ない体臭をごまかしている、とみられるからだ。
人間に限らず臭いで安全性有用性を見分けるのは、動物一般の本能です。
鼻が弱い俺には過ごしやすい。
離れたところから香りに誘われて距離を詰める。
すると見えない臭気結界にとらわれて撃墜。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悲しい戦訓だ。
現代人日本人は衛生的な環境で古くから過ごしているってのに、何故にわざわざ臭気爆弾を身にまとうんか。
性別問わず、そのたぐいの匂いお化けは香水に慣れて、鼻がバカになってるんだろうな。
生き物は刺激を受けると順応し、その刺激を意識からフィルタリングしてしまう。
それは自動自律機能で制御できない。
香水を使えば使うほど、自分自身は感じられなくなり、つけている実感が失われる。
刺激を取り戻すためにさらに香水香料を増加して刺激を強め、更にフィルタリングされ、感じられなくなりそれを取り戻すため
・・・・・・・・化粧の仕方は義務教育に取り入れるべきだと思うんですよ?
余計なお世話ですかそうですか。
異世界で俺の鼻を救ってくれた
――――――――――――――――――――――温泉様々である。
効能を挙げればきりがない。
生死を分ける衛生環境、生活を左右する匂いのお話、そして生命を左右する核廃棄物処理。
温泉、火山脈、地震、海岸線、津波。
国際連合認定
――――――――――この邦は原子力不適合地域。
今、日本が、いや、国際連合が一番必死なのは、核廃棄物最終処分場探し。
原子力適合地域。
海岸線から最低50km離れており、最低十万年間地震がない強固な地盤。
それを探して異世界中の可能性がある地域をボーリング。
哨戒気球や高高度偵察機が地形や植生を調べてアタリをつける。
IAEAとUNESCO合同部隊が派遣され、穴を掘り、地層を抽出し、発破を仕掛けて振動を精査。
コミュニケーション可能な住民や通行人が居れば即時拉致して薬漬け。
伝承や記憶をひとかけらも残さずに絞り出す。
日本中の原子力関連施設を埋めるためだ。
放射性物質を処分するには、埋めるしかない。
十万年間露出を防げば解決する。
日本には不幸にして、山のような放射性廃棄物が溢れている。
いつか立派な原爆に。
その為にカバーとしてでっち上げた、原子力の非軍事利用。
え?
イラ○や北○鮮かって?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・天が下に新しきは無し。
ただ、我が民族は、演技力が高すぎた。
――――――――――自分を騙してしまうくらいに。
いつの間にか、原子炉を山ほどこさえてしまった、ほどに。
どーすんだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コレ。
適合する立地は、日本列島には皆無。
コスト度外視。
安定した爆弾ならともかく、常に核反応中(安定の真逆)の原子炉ですぜ??????????
核兵器開発を偽装する為に捏造した安全性やコスト計算数値が、だれも検証出来ずに一人歩き。
いや、だれもおおっぴらに言えないからだが。
原子炉なんて飾りです!!!!!!!!!!
日本人の日本人による日本人の為の原爆を造りたかっただけです!!!!!!!!!!
エラい人には解らんのです!!!!!!!!!!
うん、言えない。
まあ、エラいひと、政治家達は嘘でごまかして、本音を追求するつもりだった。
役人には通じなかったよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・書類に書いていないことは存在しないからね。
辻褄が合わない、ライト過ぎるファンタジー、あんぜんせい、や、こすとしさん、は何故か認められている。
認識されている、ではなく、承認されている。
義務教育を通過していれば、成り立たないって解るのだが。
書類に、成り立つ、って書いてある
――――――――――書いてあるから、仕方ないね。
考えるじゃない!!
読むんだ!!!
有り得ないと嗤うなかれ。
誰もが有り得ないと知ってなお、誰も十字軍を否定でき無かった。
欧州文明で起きた精神病が、近代日本で起きない理由などないじゃないか。
犯罪者と病人は、誰もが可能性を秘めている。
その結果、俺たちが苦労、ってか破滅しそうなんである。
これを本末転倒という
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・目的と手段が転倒する、ってよくあるよね?
繕って繕える話じゃない。
今、異世界転移後、地球人類の居住空間は限られている。
北は択捉島・カモイワッカ岬から南は沖ノ鳥島・北小島まで、東は南鳥島・坂本崎から西の与那国島・西崎まで。
どーいう基準で転移してるのかだれにもわからない。
が、ソレはまた別の話。
つまりいわゆる日本列島だけ。
そこだけが日本人、っていうか、地球人の生活圏。
チェルノブイリ級の破綻が起これば、地球人類が滅びる。
それがどんな事態かといえば、事故当時の対応を見ればわかるだろう。
事故発生直後、30km圏内の人民十数万を強制避難させたのだ。
それは、平和主義と人権尊重を謳っている国家の話じゃない。
兵士は畑から採れる。
銃は二人で一丁。
ドイツ兵に殺されるより政治委員に殺された人数の方が多い。
あの、赤い、コミュニストの楽園、世界に冠たるソビエト連邦帝国の、赤色貴族たる共産党指導部が、だよ?
損得財政赤字なんか考えずに、致命的被爆を防ぐ唯一の手段を実行した。
・・・・・・・・・・・・・いやまあ、当たり前、ってか、普通のことだけどね?
それが出来ないなら、国家じゃないけどね?
いやしくも国連に加盟出来る、その程度に他国から信用されている、国ならばね。
出来なかったら、国とは見なされなくなるけどね。
でも、あの、ソビエト連邦ならやりかねないって思うよね?
ソビエト連邦なら、官僚主義で予定外の行動がとれないとか、直ちに影響はないからヘーキヘーキとか、最悪の事態が起きたって連絡が来ていないから様子見でとか、やりそうじゃないですか?
だから、ソビエト連邦を侮り過ぎていたのだろう。
民族強制移住のノウハウが生きました。
おげで人命も生きました。
共産党の人道主義をネタにしている、共産趣味者大激怒。
真面目にやれ!!!!!!!!!!
ってまあ、防護手段が人類の手に無いことを承知で、ソビエト連邦軍に突撃を命じたから許してやれ。
兵士に、死ね、って命じるのは軍隊の基本。
生きろ、って命じるのはファンタジーの基本?
俺は後者を推薦します
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上官殺して降伏出来るし。
という訳で、暴走原子炉に突撃した赤いアトミックソルジャーの大活躍。
おかげである程度、封じ込めできたしね
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ある程度。
もちろん、事故を起こした生存関係者はシベリアに強制避難。
死ぬより辛い地獄へ連行。
シベリア以外の強制避難は、未だに解除されていない。
様々な錯誤を経てなお、最善を尽くしたと言えるだろう。
あの、ソビエト連邦指導部をして、人道に邁進させる。
そこまで世の理を乱した、突き動かしたモノは。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・原子炉破綻は、核攻撃より恐ろしいからだ。
核爆弾の残留放射能は、燃えカスが原因だ。
破壊エネルギーに変換されなかった放射性物質が拡散し、周辺を汚染する。
基本的に、長期間は続かない。
普通は威力を上げる為に、出来るだけ放射性物質を消費させるからだ
・・・・・・・・・・・あえて反応を抑えた、汚染目的の核爆弾もあるにはある。
だが、原子炉破綻は、根本的に違う。
存在する限り、汚染を撒き散らし続ける。
そりゃそうだ。原子炉は、爆弾じゃない。
核燃料を安定的に反応させ続ける装置だ。
核燃料をとにかく燃え尽きさせよう、なんて考えはない。制御を失えば、誰にも手を出せない不完全な核反応が続く。
不完全な核反応は、核燃料を極々一部だけ消費。
生まれたエネルギーで核物質を撒き散らす。
――――――――――撒き散らし続ける。
当たり前だが、散った核物質は、消えない。
物質が消えていくなんで、そんな非科学的なことが起こるわけがない。
風向き水流により流され沈降沈殿するだけ。
そこはホットスポットとよばれる致死地帯。
ウクライナのあちらこちらにチェルノブイリのホットスポットがある。またまた当たり前に、ホットスポットから風や水流で撒き散らされ、致命的ホットスポットが移動を続ける。
核物質が存在する限り、ざっと
――――――――――――――――――――十万年くらい。
だから、ソビエト連邦政府があれだけの手を打ってなお、汚染も被害も続いている。
人類は、それを留める手段を持たない
――――――――――――――――――――チェルノブイリ・ネックレス。
若い世代に大流行。
多発する甲状腺ガンの手術跡がネックレス状に見える。
若者に流行った、のではない。
・・・・・・・・・・・・・・・若者だったから流行ったのだ。
当時、十代以下だった世代。
二十代、までが一番被害をうける。
新陳代謝で体細胞が更新される度に、放射線によるエラーが蓄積されるからだ。
成長期以後の世代とは、被爆の意味が全く違う。
事故から、10年、20年ぐらいから増えて、十万年くらい続く。
偉大なるソビエト共産党の指導をもってしても、原子炉は統制できなかった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ベストを尽くさなかった、とは言えないが。
もしかしたら日本の官僚体制なら制御できるかもしれない。
書類の中では「安全です」って書いておけば済むし。
書類の外では何が起きていようと気にしないから。
異世界に転移した地球人類は
――――――――――そんな自滅を待つ気はない。
だから、一瞬でも早く、日本列島から核廃棄物を搬出する。
地震を防ぐ方法はない。
津波を防ぐ方法もない。
その破壊を防ぐこともできない。
日本列島の地勢を考えれば、100年破綻しないことは有り得ない。
次の瞬間から、50年後まで、いつでもあり得る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なら、日本列島を捨てればいい?
気が合うね。
俺もそう思った。
フィクションの敵役宇宙人みたいな発想だけどね。
停止させてなお安定させる為だけに稼働させ続ける原子炉多数。
莫大なエネルギーを供給し続けなくては、安定を維持することすら出来ない一輪車。そんな核物質を廃棄出来る場所、原子力適合地域。
大陸には必ずある
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・が広いから探すのが大変だ。
半面、地球人類居住可能地域は、惑星全体としては圧倒的な極々一部でも、すでに確保した範囲だけで十分にある。
原子力適合地域ほど条件が厳しくはないからだ。
なら地球人類を避難させた方が早い。
一億人の避難場所を造るくらいなら、一年もあれば足りるだろう。
それをしないのは、やはり異世界生態系との接触リスクの方を高く見たからか?
――――――――――それを聴いた三佐は、キョトンとした。
そして、笑って、言った。
「正解」
それで、俺にもわかった。
ああ
――――――――――――――――――――その時がきたら、か。
三佐は嘘つきだ。
だが、この時は、すべてを言わなかった、だけ。
日本列島と異世界大陸は、最低400km離れている。
国連軍十数万。
各所に設けられた出島、巨大物質集積拠点。
第七艦隊や海上自衛隊の大半は遊弋状態。
航空自衛隊も合衆国空軍も全て異世界大陸に展開した。
アムネスティのような、選抜された民間人も増え続ける。
何故、三佐みたいな黒幕体質が、前線の異世界大陸にいる?
父親の議員、国連の黒幕、その代理だと思っていた。
まさにその通りそのまんま
――――――――――――――――――――文字通り、か。
バックアップ。
本体が不能になれば、パージして立ち上げ直せる。
異世界に移住するリスク。
日本列島に止まるリスク。
政治家は、どちらかを選ぶ気など、ない。
道が二つあるのなら?
進んでみないとわからない。
原子力技術の危険性とは、立地条件ひとつの問題。
立地が基準を満たしていなければ、100%破滅する。
日本列島のみが転移してきた以上、立地は異世界にしか求められない。
それ以外の要素?
60年代型の欠陥技術とは違って、21世紀型の原子炉について事故の可能性は、ほぼ、ない。IAEA基準の施工をされていればなおのこと。
最終処分場を含む立地が確保されれば、莫大なエネルギー供給源として異世界大陸各所に原子力プラントが設置される。
今度こそ最終処分までコスト計算をされた後で、異世界の隅々にまで電力を供給するだろう。
日本本土がどうあろうと、だ。
・・・・・・・・・・・日本列島にやたらと建設されている60年代型の、公共事業手抜き施工の、不適合立地にしか存在しない原子炉がどうなるのか。
三佐が言っていたじゃないか。
「世界は理屈通りにしかならない」
誰にでも予想できる。
あとは、廃棄場所確保と解体が間に合うかどうか。
ダイスとコインの出番だ。
開戦理由。
俺たち地球人が異世界に転移すると同時に開始された侵略戦争。
核廃棄物最終処分場探し、だけでもないとは思っていたが。
いったい、いくつ、開戦理由があるのやら。
日本人はそこまで愚かではないのだ。




