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完全侵略マニュアル/あなたの為の侵略戦争  作者: C
第三章「掃討戦/文化大虐殺」

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131/996

始業前/On time.

登場人物&設定

※必要のない方は読み飛ばしてください

※すでに描写されている範囲で簡単に記述します

※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします


一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。

次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。

以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。

(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)


【登場人物/一人称】


『俺』

地球側呼称《司令官/閣下/大尉/大尉殿》

現地呼称《青龍の貴族/ご主人様/ご領主様/我が君》

?歳/男性

:地球人。国際連合軍大尉(陸上自衛隊三尉)。太守府軍政司令官。基本訓練以外は事務一筋。


『あたし』

地球側呼称《エルフっ子》

現地側呼称《ねえ様》

256歳/女性

:異世界人。エルフ。『あの娘』の保護者。姉貴分。ロングストレートなシルバーブロンドに緑の瞳。長身(数値不明)。革を主体とした騎士服にブーツに剣が常備。


『わたし』

地球側呼称《魔女っ子/幼女》

現地側呼称《あの娘》

10歳/女性

:異世界人。赤い目をした魔法使い。太守府現地代表。ロングストレートのブロンドに赤い瞳、白い肌。身長は130cm以下。主に魔法使いローブを着る。


『わたくし』

地球側呼称《お嬢/童女》

現地側呼称《妹分/ちいねえ様/お嬢様/愛娘》

12歳/女性

:異世界人。大商人の愛娘。ロングウェーブのクリームブロンドに蒼い瞳、白い肌。身長は130cm以下。装飾の多いドレスが普段着。


『僕』

地球側呼称/現地側呼称《若い参事、船主代表》

?歳/男性

:太守府参事会有力参事。貿易商人、船主の代表。年若く野心的。妹がいて妻の代わりに補佐役となっている。昔は相当な札付きであったようだが、今は特定の相手以外には紳士的。



【登場人物/三人称】


地球側呼称《坊さん/係長》

現地側呼称《僧侶》

?歳/男性

:国際連合出向中地方公務員。得度した僧侶。浄土真宗らしい。軍政司令部文官。



【用語】


『青龍』:地球人に対する異世界人の呼び名。国際連合旗を見て「青地に白抜きでかたどった《星をのみほす龍の意匠》」と認識されたために生まれた呼称らしい。


『軍事参謀委員会』:国際連合の参謀本部。


『太守府』:帝国の行政区分をそのまま国連軍が引き継いだ呼び名。領地全体の呼び名と中枢が置かれる首府の呼び名を兼ねる。帝国ではおおむね直径60km程度を目安に社会的経済的につながりが深い地域で構成する。南北が森林、西は山脈、東は大海で大陸のほかの地域からは孤立している。ただし、穀倉地帯であり海路につながっているために領地としての価値は高い。10年前までは古い王国があり帝国に滅ぼされた。


『参事会』:太守府を実質的に支配する大商人たちの集まり。五大家と呼ばれる5人が中心メンバー。


『Colorful』:ハーフエルフの最高級愛玩奴隷たち。髪の色がいろいろなために神父により命名。一人一人の名前も髪の色に合わせて白・朱・翠・蒼・橙と主人公に名づけられた。前領主(帝国太守)が奴隷商人に発注し、引渡し前に戦争開始。占領軍の太守資産接収に伴い軍政司令官に引き渡された。軍属として雇用契約を結んでいるので日本の労働法が適用される。


『ハーフエルフ』:エルフと人間の間に生まれた混血種族。エルフに似た美しい容姿と不老、不妊、それ以外は人並みの種族。異世界全体として迫害される


『アムネスティ』:日本の異世界転移後、国連より早く再建された国際的な人権団体(NGO)。売春合法化の実地試験を兼ねて、日本で育成した娼婦を雇用し異世界大陸国連統治下で営業している。なおアムネスティの「売春合法化論」は現実に準拠しており小説上の設定ではない。ただし、支部ごとの独自性が強い団体なので全体の総意と言えるかは微妙。




みんながやっていることを、あなたは何故やらないの!


―――――人間的反応―――――


みんながやっていますから十分です。私がやる必要はありません。


―――――非人間的反応―――――


「一番難しい」ってことはですね、実際に何度もやったからわかるんですよ?

※参考:イトゥルップ島( Итуруп)魔法研究所


―――――非人道的反応―――――




【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


世界には。


一日一回、大問題を起こさなければいけない。

――――――――――――――――――――というルールがあるんだろうか?


異世界には。


俺が地球にいた頃は、こんなことなかったのにな~。




【太守領中央/太守府壁外門前/青龍の騎士団中央/青龍の貴族の馬前】


僕は青龍の貴族の前に立つ。


新議長が続いて立ち上がり、背中を伸ばした。

ヤ―――――――メ―――――――ロ!!!!


参事会の大先輩は、そもそも平伏せずに片膝ついていただけ。

後の二人は恐る恐る、僕に続いた。



魔女、青龍の腕の中、が目配せしたことに誰も気が付かなかったようだ。アレは立ち上がり、説明しろということ。しかも可及的速やかに。

魔女は僕らに配慮しているのか、青龍の貴族に不快感を与えたくないのか。


どちらでも同じこと。

僕は魔女に感謝するだけだ。



そのまま僕は青龍の貴族、への挨拶を省略。他の参事たち、新議長以外は、僕の無礼な振る舞いに驚愕している。

時候の挨拶から始まって、ご機嫌をうかがい、褒めそやし、感謝して、お茶がいきわたってから本題に入る

・・・・・・・・・殺されるわ!!!!バカども!!!


魔女はまた、皆に視線を走らせる。

―――――――――――――――――――――青龍の貴族が、いらだったら、お終いだ。



僕は早すぎず遅すぎず、余計な口を挟まれぬように話の切れ間、付け込む隙を与えずに押し切った。僕以外が余計な口を挟んだら、そこで終わる。


皆、何が求められてるかわかっていない。だが、青龍の恐ろしさを知っている五大家当主たち。判らない焦りと不安を必死に取り繕う。

何が何だかわからずに、この場で皆殺しにされやしないか、と気が気じゃないのが二人。

愛娘しか心配していない、愛娘を喰い者にしている憎き男に憎悪を燃やす大先輩。


そして、誰も彼もが自分に注目している、と勘違いして喜ぶバカ女。

もちろん、注目されているのは、僕ら参事会だ。



青龍は巧みな馬捌きで僕らを、五大家当主だけを隔離。しかも、青龍に集まっていた視線関心を、僕らに押し付けて見せた。


万に届く農民たち、平伏しながら、地面から窺い見上げる。

城内、城壁上から覗く市民たちの背後には、太守府の全住民、その目が覗いている。


青龍の貴族を、見ているわけじゃない。

青龍の貴族に、伺いを立てる僕ら参事会を、見ている。



事態収拾をすべて青龍に任せようとした、僕の目論見は図る前に潰された。孤立無援に追い込まれ、邦中の、と言ってよいほどの注目が集まる。


ここでしくじれば、僕ら参事会の責任、に見える。

だが、解決は青龍、青龍の貴族その人にしか出来ない。


故に功績があれば、青龍のモノだ。

そして、青龍は功績など気にしない。


領民の感嘆も賞賛も、感謝すら必要ない、ならばわざわざ参事会、いや、僕を矢面に立ててきたのは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・罰か?


いや、それなら、僕を殺している。

―――――――――――――――――――――あるいは、邦ごと僕を消している、か。



僕らが考えるような、罰の概念が在るのかどうか。


僕が青龍を利用しようとした。

青龍の貴族は、わざわざ僕と同じ舞台に踏み入れた。仕掛けを、同じ舞台の同じやり方でひっくり返して見せる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・警告かとも思ったが、ちがう、な。


青龍の貴族は相変わらずの無表情。

だが、抱かれている魔女は、気まずそうに笑っている。

――――――――僕を見て。


実利ではなく、警告でもなく、となれば、稚気、か。


卓上遊技に見立てれば、洒落のつもりなのかもしれない。

付き合わされる身に

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なる、訳がない。

僕は手元の札を捨てて、勝負を降りる。

――――――――そもそもゲームを挑んだのが僕の失敗。


ここは正直にいくしかない。




【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族に抱かれて】


わたしは、困り顔をしていたのだと思います。

若い参事さんが気づかれて、皆さんたってくださいました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬の上って、高いです。


若い、といっても、遥かに年上の皆さん。


すごく、申し訳ありません。

見下ろして楽しいわけがありません。

わたしが馬を降りればいいのですけれど。


その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

また、ご主人様が、えと、強く抱いてくださって

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。


わたしは欲張りです。

礼儀より――――――――――を、優先しちゃいました。


立っていただいて、それでなお、わたしは皆さんを見下ろしてしまっています。

申し訳なく、そう思いながら、なんだか解らないなりに、若い参事さんのお話を聴きました。




・・・・・・・・・・・つまり、周りに集まっている皆さん。

参事さん、衛兵さん、用心棒さん、たち以外の皆さん。


・・・・・・・・・・・・・・・・村々の、邦中の村からいらっしゃいましたか。


村一つから数人、地域によっては複数の村々から数人。

西の山以外、東西南北の村々、その長、かそれに近いみなさん。

えーと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご主人様に、お会いに、最初からではな

いけれど、今はそれが目的?


では、皆さん、お会いしましたから、もうお帰りですか?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・皆さん、秋の、税のお話を、聴きたいん、ですか?


税は、今年は、いらないって

・・・・・・・・・・・・・・・・・・みなさん、ご存知?

ならなぜ


・・・・・・・・・・・・信じられない、ややや、やめてください!!!!!!!!!!

ご主人様を疑うなんて!!!!!!!!!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・直接、聴かないと納得出来ないんですか?

だから、ずっと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そんなに、何日も、ご主人様のお帰りをまってらしたんですか!!!!!!!!!!


大丈夫なん

――――――――――わけない、ですよね。


街を囲んでる人たち、囲まれてる人たち。

お金を切り詰めて、野外で耐えている皆さん。

街中で用心して、閉じこもっている皆さん。


?????


――――――――――なんで斬り合うお話に??????????





【太守領中央/太守府壁外門前/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】


ほほう。

何万人かしらないが、一人一人、数人数人、全員に、同時に、免税措置を説明しろ、とな?

・・・・十人の話を同時に聞く王子様の逸話は知ってるが、逆バージョン拡大版かよ。



タイミングがズレると暴動、とな?

スピーカーで怒鳴っても無駄?

音割れで聴こえやしない?


あ、疑問形じゃないんだ。


――――――――――俺が、やんの?

語尾あげなし。


なんてこった!!!!!!!!!!


俺の代わりに責任者募集中。

神様仏様、お願いします管轄外ですかそうですか。ここで食い下がれたら立派なクレーマーになれる。


異世界には神様いないしね。

異世界転移後4ヶ月目に置いて、未確認。


神様がいないなら、神殿ってなんだ?

っておもうじゃないか。


だが、神殿っていうのは、実は地球語(日本語他すべて)に置ける近似値に過ぎない。

誰が決めた訳でもなく、魔法翻訳の結果だが。


俺たちにも現地住民にも正体不明な、異世界間自動翻訳。

コレのおかげで、俺たちと現地住民の間で、会話も文章もやりとり可能。その翻訳基準は解析中だから、まあ、具体的に言い直す。


神殿、と俺たちが呼んでいる建物、施設。

これは、どういったものなのか?



Colorfulたちにゆっくり一晩かけて話を訊いた事がある。

勤務時間外、雑談の流れだったのだが、後で手当てを付けなおしたのは言うまでもない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、Colorfulが心持ち、機嫌が悪くなってね?

雑談して、話題になって、一緒に考えて、最初は楽しそうだったんだよ?

まあ、いつの間にか残業になってりゃ怒るよね

・・・・・・・・・・・・・・・・・と思っていたのだが、その後、残業扱いを断固拒否された。


モノが欲しいのではありません!!


とのこと。

・・・・・・・・・・・すっごく怒られました。

その後土下座されました。

その後泣きすがられました。

凍り付いている間に、なんか、解決いたしました。

良かった良かった、いや善くない。

原因不明につきご意見募集中。


何故だ?

報酬を得られるだけの特殊技能なんだがな。



現地の言葉や文章を、音節ごとに分け、単語を抽出し、その一語一語の意味を書き出してもらい、ニュアンスを説明してくれたColorful。

この娘らは十代半ば位。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・学校の先生向きなんじゃないだろうか?


特に教える側の思考力が問われる小学校低学年向け。


以後、小学校高学年から高校生くらいまでの教師は、訓練教官と同じ。カリキュラムが勉強じゃなくて訓練(学習と呼ぶ)だから、反復を強制出来りゃいい。

――――――――――むしろ生徒に思考を禁じないと効率が落ちる。


そーいう役割なら、Colorfulには向かない。

元カノには向いてる。




まあ、それは置こう。

最初に大喜び、途中から不機嫌、最後は苦笑しながら付き合ってくれたColorful。

解析作業自体は苦痛ではなかったらしい。


Colorfulたちは以後も時々やってきて、休憩時間や寝る前に同じような言葉の解析を教えてくれるようになった。

俺にとっては面白い話。趣味みたいなものだから勤務時間外で構わない。

Colorfulについては

・・・・・・坊さんが上手くやってくれるらしい。

すべて金銭で片づけるより、贈り物や配慮で示すべきところもあるべきだとかなんとか。

酒席を設けておごってやるとかそういうやつか?もちろん、上司は最初だけ顔を出して5分以内に急用を思い出して帰宅。代金は払っておくとかそういうやつ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・経費でいける、な。Colorfulの士気が上がり軍事参謀委員会特命の言語解析が進むのだから、文句は言わせない。


だがしかし、相手が男でも女でもなく、女の子。そー言うのは不慣れなので、坊さんに一任した。


アムネスティのお店も出ることだし、娼館が基本だけれど、飲食のみもあるらしい。

ケーキバイキングでもしつらえるといいかもしれない。



そんなColorfulに5人がかりで解析して貰った結果。




神殿≒祈る場所、らしい。


巫女神官≒祈る人。


誰に祈る?

何に祈る?


誰何ってのがあれば神様発見!

責任引き渡し、といけるが

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・祈る対象はない、という。


巫女は豊作を祈る。


誰かに、じゃなく、ただ、こうなって欲しい、と祈る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・強く意識的に願う、感じか。


それを赤い瞳の者が行う。

まあ、瞳の色は同じでも魔法使いじゃない者が。


すると、かなう、らしい。

らしい、っていうのは、まだ国際連合的に未確認だから。


祈りの結果を、こちらの異世界では奇跡と呼んでいる。

その効果は魔法より判りにくくい。


魔法のように目の前で炎や雷を発したりしない。しかも、効果がでるまで、たいてい時間がかかる。


例えば、癒やす。

魔法ならその場で血を止めて傷口を塞ぐ。

祈りなら疲れにくくなり、病気にかからない。


――――――――――わからんわな。

効果があったのか、無かったのか。


他にも冬の寒さを和らげる祈り、雨を求める祈り、雨をやませる祈り

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・検証に何年かかることか。



まあ、異世界では経験上、効果が信じられている。何百年も続いたからと言って、効果がある保障にはならないが、記録を見る限り信じるに足る状況は起きたらしい。


特にこの邦など、地形障害を無視して等間隔に神殿を配置する、凝りようだ。


もちろん、国際連合は、信じていない。

当たり前だが、否定もしていない。信じないとは、否定の意味を持たない。



保留検証待ち。

というか、今の地球人類指導者は、信じることに縁がない。あるいは、これこそが、異世界の神様なのかもしれない。





【太守領中央/太守府東街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎前】


誰が狙った訳でもない、だからこそ、やっかいなこと。


あたしは200年くらい、人の世界を見て来たけれど

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無いわね。

こんなこと。

結局、青龍、みたいなモノが、かつてあったわけがないんだけれど。



バラバラに、まちまちに、集まった農民たち。本来の目当ては、新しい支配者を目で見て確認する、だけだったんでしょうに。


それが、一変してる。


南から伝わった、青龍の貴族、その布告が伝播したから。北からも、西からも、東からも、そして、税の免除を聴いている南の農民が太守府に来た。

青龍の様子を見にきて、青龍の貴族が不在で、待つしかやることがない。

誰かが、囁く。



今年の秋は、麦を納めなくていいらしい。




――――――――――皆、バラバラなのに、一つ、それだけしか考えられなくなってしまうわよね。


余りにあまりな話。

誰もかれもが、確かめること以外考えられなくなっている。

――――――――――他のことを考えるなど、できるわけがない。



彼らが聴きたいのは、青龍の貴族、その言葉。

今年の秋、収穫を差し出す必要は、ない。

単純な事実

――――――――――信じられるわけ、無いわね。



人の世が始まってから、初めてのことだもの。

侵略者、征服者、支配者

――――――――――青龍。


しかも類例がないほど圧倒的な力を持ち、常識外れなほどに強権的な暴君

――――――――――その青龍が、税はいらないから、と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、終わり。

それ以上一言もなし。



恐怖にかられる訳だわ。


でも、信じたい。

疲弊した農村には、救済、唯一の希望。

信じたい、信じられない、帰るに帰れない。

こんなにはっきりしてるのに、半信半疑よりなお悪い。


あきらめて、今聞いた話だけを、帰って村人に伝えたら?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殺されかねない。


村人たちが費用を出し合って、ここまで来たんだものね。

皆の命にかかわる風聞を持ち帰ったら、ただじゃ済まない。


まだ、何も聴かなかった方がマシ。

御領主様に会えなかった、と、諦めて帰れば村は納得してねぎらってくれる。


参事会が手を出せない訳よ。


主導する若い参事が不在中。手間と危険を恐れたり、愛娘の事しか考えられなかったり、結果として事なかれに徹した参事会。

気付いてみれは、集まった村人の数が多すぎて、追い払えない。


若い参事が、青龍の貴族に、税金の話をを確かめたのが、昨日。それを、参事会の名前と信用で農民達に知らせて安心させれば

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理。


よりにもよって、農民たちがバラバラだから。

一人一人、数人数人に、個々に話しかけて伝える?大声で怒鳴ってみる?多人数を動員して手当たり次第に布告する?

焦って、いらだち、消耗している連中。

どこかで、誰かが、全員が聴きたいことを、誰かが知らせ始めたら。


一斉に殺到するだろう。


――――――――――皆が聴きたがり、駆け寄り、参事会には答えられな質問が、重複して飛び交い、それが聴こえない連中が更に殺到し

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・暴動と変わらない。


まとめ役さえいれば。誰か、何人かの統制役がいれば、なんとか出来る。でも、個々の村々で別れている農民たち。

秩序の基盤がない群集は、災害に等しい。


せめて、それなりの人数の騎士団が威圧して押さえつけていれば、群集を抑えられるけれど。彼らが聴きたいことを聴き終えるまで。

――――――――――もちろん、そんなモノは、いない。


今ここにいるのは?

案山子に等しい衛兵たち。

数の少ない私兵や傭兵。

そして青龍の騎士。


・・・・・・・・・・・・・青龍の騎士団は、強い。

千人の従来騎士団を、十人で追い払うだろう。青龍の貴族が決めれば、召還獣で、邦を滅ぼすでしょう。村人たちを一掃できても、村人たちを収めることにはならない。



全員に、同時に、布告を飲み込ませるなんて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしは、彼、青龍の貴族を見た。――――――――――どうするの?



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