壁の外
登場人物&設定
※必要のない方は読み飛ばしてください
※すでに描写されている範囲で簡単に記述します
※少しでも読みやすくなれば、という試みですのでご意見募集いたします
一人称部分の視点変更時には一行目を【語る人間の居場所】とします。
次の行、もしくは数行以内に「俺」「私」などの特徴となる一人称を入れます。
以下設定を参考に誰視点か確認いただければ幸いです。
(書き分けろ!と言われたら返す言葉もございません)
【登場人物/三人称】
地球側呼称《マッチョ爺さん/インドネシアの老人》
現地側呼称《副長/黒副/おじいさん》
?歳/男性
:インドネシア国家戦略予備軍特務軍曹。国際連合軍少尉。国際連合軍独立教導旅団副長。真面目で善良で人類愛と正義感に満ち満ちた高潔な老人。経験豊富な人材であり、その経歴はナチス親衛隊の戦犯に匹敵する。もちろん、どのような意味でも犯罪者ではなく、経歴を謙虚に控えめに自慢こそしても隠してはいない。
詳細は本編第34部分 「素晴らしき哉!人生!! 」など。
【用語】
『合衆国大統領』:元合衆国駐日大使が日本列島の異世界転移後、合衆国憲法に基づき「生存確認ができる最高位の文官」として大統領に就任。在日米軍を中心とした合衆国政府組織を掌握し、在日国民を統括。本拠地は赤坂元合衆国大使館、地名からもじって「レッドハウス」と呼ばれている。女性初の合衆国統合参謀本部議長を引退後、駐日大使をへて現職。国際連合軍の指揮は彼女が執っている。
合衆国軍の勝利。
合衆国の敗北。
例外なく連綿と続く事実から学び取れる、真理。
ゲーム理論など棄ててしまえ。
自衛は愚鈍。
報復は愚劣。
先制し殲滅すべし。
《合衆国大統領訓令、一部抜粋》
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎後】
彼女は馬の首を軽くたたき、加速させた。
あたしから離れた青龍の公女。
馬を駆り隊列の先頭へ。青龍の女将軍が、銃を片手に後ろに付く。青龍のサトウ殿、シバ殿が、左右に着く。
二人とも轟音をたてる鋼の、馬型ゴーレムにまたがったまま。
心なしか、背後の土竜隊列も距離を詰めてきた。
防御を意識した進軍陣形。
――――――――――これで、あたしと青龍の貴族が、この隊列の中央になった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うわね。
青龍の貴族が安全な中央にいるのは、あの娘を抱いているから。あたしがその背後、更に安全な真ん中にされたのは、妹分を乗せてるから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だったら良かったけど。
あたし
――――――――――どーせ、あたしも子供って範疇よね!!!!!!!!!!
256歳なんですけど!
【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
俺は目を疑った。
よって、フリーズ中。ってか、ナニコレ?見渡す限りの、人、人、人
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の向こうに、太守府。
まっすぐに進む、砂利で整備された幅広な街道。
街道に踏み込まぬように。街道を挟み込むように。街道に顔を向けたたまま。
――――――――――人々が、草原を埋め尽くしている。
三佐は念のため、先頭に回った。
佐藤、芝が両側面。
まあ、銃器が無い世界、今のところ。外周を囲み、距離を取れば、シスターズの安全は図れる。ColorfulはHMMWVの中だし、あっちには軽装甲機動車もいる。
ドワーフたちも、また例のミニガンやらM-19自動擲弾銃を持ち出しているだろう。
うんうん。
・・・・・・・・・・・・・・・・また命令するの忘れてた。
戦争や暴動って雰囲気じゃないがな。
元カノは念のため、だろうが、M-14を構えている。プロテクターは付けないが、兵器は山ほど持つタイプ。戦闘服のみだが、誰も気にしないのな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・両脚だけで馬を操る、いや、従えるってスゴいな、オイ!
その元カノは500m、いや、コイツなら1000m圏内は管制出来る。誰かが弓を構えたら、そんな気がしたら、矢を放つ前に射殺。
――――――――――馬上射撃で、ありえねー!当たるわけねー、って常識が囁くが。
元カノは、馬体にM-14をもう一丁。
銃の留め具は外してる。
各々弾倉に20発、合わせて40発。
装弾済みなら後二発。
弾倉交換無しで連射可能
だから何だ。
命中するか!って、思うじゃん?
元カノの性格を知らなきゃね。
いやいや、伝説の殺し屋チックな話じゃない。もちろん、射撃は得意だけどね、コイツ。だが、うまいから当たる、って話じゃない。
あくまでも、性格。
性格の、いや、性格が、問題。
あいつは間違いなく、弓っぽい仕草を見かけたら、連射する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・周りの、おそらくは、無関係な住民を無視。
結果は推して知るべし。
そして、後続のHMMWVが、擲弾とミニガンで1km圏内皆殺し。護衛艦のミサイルと近場のチヌークで、見渡す限りを掃討。
――――――――――また虐殺フラグか!!!!!!!!!!
何度目だ!!!!!!!!!!
三佐がいるから軍法会議は大丈夫って思ってすいません!!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・スケープゴートの予感。
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎後】
あたし
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・強いのに。
そりゃ、青龍の騎士ほどじゃないし、青龍の貴族なんか、あたしは眼中にないだろうけど。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・強さは。
――――――――――強さだけよね。
眼中にないのは??????????
あたしの強さに興味がないだけよね??????????
「ねえ様、殿方に護られないような、そんな女になりたいんですか?」
妹分は自信満々。
あたしは不安でしょうがないのに。
そりゃ、まあ、何故か、要不要はあれだけど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嬉しいわよ。
護られるって。
女、として、青龍の貴族に護られるなら。
あたしたちエルフは、男が女を守る。見知っていようがいまいが。それがエルフでなくとも。だから、戦になれば女は後方、子供は避難。
まあ、大抵の戦が人間相手。女は特に、つかまりたくはない。
でも、青龍には、女を護るって発想はないみたい。
青龍の女将軍やマメシバ卿は、女だけど、特に護られたりはしない。真っ先に突撃したり、騎士達を指揮しながら戦ったり。
むしろ、常に最前衛。
魔法を誰もが自由に操る、青龍の世界。
体の差違は、強大な魔力の前では、誤差に過ぎないんでしょうね。
ならば青龍には女を、その全般を護る習慣が、必要が、そもそもないのも納得できる。まあ大陸だって、男が女を護る、と考える種族はエルフくらい。
他種族は、死ねば死んだだけ産めばいい、って感じだし。
よほど愛されているか才能か美貌が無い限り、女だから、って理由で護られたりはしない。
護る価値がない。
それが大陸。
護る必要がない。
それが青龍。
女を護らない
――――――――――大陸と青龍で、結果は同じで、理由が真逆。
だけど、なら、青龍が女を護るなら。
それは個人的理由ってこと。
つまり、その点は大陸の慣習とおなじ。
だから、その、ちょっとは、特別な?ところがあるから、だから護る、
「自分の女を護る」
そうそれ
――――――――――ちょ!!!!!!!!!!
「はばかりながら、ねえ様」
はい。
「女だから護る、って言われたら、嬉しいですか」
全然。
「わたくしなら」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「好きな方に告げられたら、泣きます」
――――――――――よね。
まるで相手にされず、義務で、なんて、ふられたようなもの。
「どうでもいい方に言われたら、やっぱりどうでもいいですけれど」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・受け流しちゃいそうよね。
「もちろん、ご領主様は、そんなヒドイことを仰いませんが」
でも、妹分は、強くなった?
泣くだけで済むの?
「仮にですけれど。十日前なら。泣かずに喉を突いたかもしれません。あきらめを知っておりましたから」
青龍の貴族に出会い、好きになり、想いが通じて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それなりに、通じて。
「もう出来たか、これから出来るか。叶う叶わない、ではなく、いつ叶えるか」
――――――――――青龍の在り方。
そっか、だから、強くなったのね。
「おじいさんに、教えていただけましたから」
港街で出会った。褐色の老人、青龍の高位騎士。
青龍の考え方を、あたしたちに噛み砕いて教えてくれた。あの世話好きな、青龍のおじいさん。
「だから、わたくしは、泣かずにすみます。嬉しいです」
あ――――――――――。
「わたくし、たちをご領主様が護ってくださるんですから」
彼の女として、ね、たぶん、おそらく。
そうだとしたら、うっ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――嬉しい。
心配だけど。
攻め一本、殺戮一筋の、彼。
青龍の貴族は、護りに入ると殺されてしまいそうだし。
青龍って、防御魔法がない・・・・・・・・自分を護る発想がないみたい。
――――――――――本人が、自分を護る気がないから。
でも、あたしが青龍の貴族に守られているのは確かだけれど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・素直に喜べない。
妹分は気がついてないけれど。
あたし、たちが護られてるのは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・子供、扱い、だからじゃないのかしら。
――――――――――とは、言えなかった。
言いたくなかった。
それだけ、なんて、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・泣かないし。
【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
ムービーモードで進行中。俺はプレイヤーですか?製作者の良識を疑います
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・創造主出てこい!!!!!!!!!!
どーせメール問い合わせしてもスルーだろ!!!!!!!!!!
サポートセンターの電話番号は??????????
いや、指示しなくても、何もしなくても、プロセスが進むから、俺はギャラリーか?
状況が判らなくて心配なんですが。
質問してないからね。
誰も教えてくれないよね。
・・・・・・・・・・・・何も、誰も、言ってこない。ってことは、問題ないんだろうな。たぶん。
子供たちよ。騙されてはいけない。
他人に訊く前に自分で調べろ?
そんなことをぬかす大人は、無知か怠け者。助言のフリでサボっているだけ。自分で調べるのは、何人かに訊いた後にしましょう。
いや、答え合わせは必要だよ?
でも、ゼロから調べて時間を無駄にする必要はない。
大人はどうするのかって?
もちろん、自分より賢い他人に訊くのさ!
人類の半分は、より優秀な人たちだからね。
統計上。
その辺の人に声をかければ、優秀な人に訊ける確率が二分の一。
カンタンカンタン♪
で、本題。
解決は簡単。
ウソつかない。
何が起きてる?
って、曹長か坊さんかマメシバ三尉に訊くだけ。
即答されるね(確信)。
問題は、たった一つ。
僅かに一つ。
重すぎる一つ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・子供たちが見ている。
もう一つ教えよう。
訊くは一時の恥、訊かぬは一生の恥。
・・・・・・・・・・・・・嘘だからね?恥って一生もんだからね?
【太守領中央/太守府南街道/青龍の騎士団本陣/馬上/青龍の貴族の乗騎後】
不本意。スッゴく不本意。
それは
――――――――――あたしが、子供扱いで護られていることよ!!!!!!!!!!
しかも、彼、青龍の貴族だけじゃない。
青龍の騎士達も、なら良いけれど。
青龍の女将軍までが、あたしを子供扱い!!!!!!!!!
普段からことごとく、恋敵として絡んでくるくせに!!!!!!!!!!
それはそれ、これはこれ、ってワケ??????????
なんか、腹が立つ――――――――――。
ここまで徹底していると
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の、感性、かしらね。
習慣や考え方、じゃない、と思う。
美醜と同じなのかも。
あたしの能力が理解されない、訳じゃない。
判断力も体術も剣も弓も、エルフ特有の鋭い五感も。
役に立つ、戦える、強い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それとこれは別、つてこと、か。
子供。
どんな基準かわからないけれど、そう認識されたら、護られる。
理屈じゃないし、手段でもない。
だから、常に合理性を柱に据える青龍の、思慮の枠、その外。
きっと青龍は、そう生まれたのだろう。
仮に。
子供しか魔法を使えない世界になったら?
青龍は子供を戦わせずに、大人が殴り合いをするでしょうね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・戦わない、って選択肢はなさそう。
青龍だし。
仮に。
子供を生け贄にしないと世界が滅びるとしたら?
青龍は子供以外の全てを投じて、それでダメなら、努力しながら胸を張って滅びるだろう。
諦める青龍
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有り得ない。
青龍だし。
もちろん、青龍にも逸脱者はいるけれど。
青龍の女将軍が拷問死させたような、青龍の公女が生きながら灼いたような、子供を好んで陵辱するヤツら。
(※本編第27部 修羅場 より)
だからこそ。
手順も何もなく。
ヤツらの地位も無視。
――――――――――まっすぐ八つ裂き、虐殺する。
それが、青龍の感覚。わかりやすい、わ。
まあ、護るなら護るで、先頭に立つのは、止めて欲しい。
先頭であたりを睥睨している、青龍の公女。
危ないのに。
それに、投石一つで、この邦が滅ぼされちゃうんだけど。あたしは、まあ、いいけど。でも、あの娘が気にするのよね。
青龍の鎧なら、矢ぐらい弾くのに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青龍の公女は、騎士服のまま。
革の防具すらなし。
青龍の公女、この人の攻撃魔法はこの中で最強。ううん、世界で最強かも。街一つ軽く滅ぼす魔獣を気軽に召喚して、天空から星を呼んで望みの場所を貫かせる。
でも、青龍は、相手の攻撃を無効化するような防御魔法が、ない、はず。
だから、魔法素材の鎧を工夫して、使役するゴーレムや竜を盾にする。
だから、青龍の公女は防御力なし。
なんで、先頭?
あたしたちを護る為。
陣形を作る為。
一番危険な位置に、一番偉い人物を。
ならやっぱり、実は、防御魔法の使い手
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たぶん、違う。
青龍の優先順位。
この場に居る、誰もが疑問すら抱かない、揺るぎなき基準。
それが、当たり前に、彼ら青龍を動かしている。
【太守領中央/太守府南街道/軍政・黒旗団混成戦闘部隊本部(前衛)】
ふと視線を感じる。
熱を伴う視線。
魔女っ子だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺も、魔女っ子の気持ちに気がつかないほど鈍くはない。
なんか、いや違う、間違いない。す――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ごく。
好意的に誤解されてる。
信頼、尊敬、憧憬・・・・この子達、優しすぎるよね。
地球人類は、そんなに大したもんじゃないよ?
科学技術なんて千年あれば自分で発見できる。
いや、ホント。
俺たちがそうだったんだから。
特に、俺はまったく、人類の発見に関係ないし。
地球技術を代表してないので、尊いものを見る眼差しがつらいです。
この世界は魔法がある。
俺たちが来なかったら、どんなハイブリット文明ができたのやら。来ちゃったから、こちらで組み合わせ始めてるけどね。
元カノやマメシバ三尉が。
恥の多い人生を生きてきました。
これからも生きていきますんでよろしく。
っていうか、綺麗すぎる鏡を見せられて石になりそうです・・・・・・などという事実から目そらし。
俺の見渡す先。
高い壁。
頑丈な門。
広い縄張り。
壁と門は旧王国時代に、数世紀かけて築かれ補強された防御施設。まあ、この邦は大陸の他地域から地形障害で孤立している。
王国時代は内戦すらなく、外患の可能性も低い、ってか無かっただろう。
攻めて来るなら、海、港街に、だろうしな。
なのに立派な壁や門。
――――――――――公共事業かな?
あるいは、誰かの見栄か。ゆっくり急がず、創り上げるのに数世紀かけただけに、分相応なのかもな。
まあ、無駄でなかったとはいいがたい。
壁を築いた国が滅びたというのに、高い壁には傷一つない。
帝国の飛竜、航空戦力に打ち破らすらしなかった。飛び越えられ、王城を陥とされ、平和裏に、と言って悪ければ非戦闘的に開門。
立派な門扉は、かなり、継ぎ接ぎ。
まあだから、飾りたてられた重厚さがわかる。
――――――――――元カノが壊したからだが。
俺たち軍政部隊が派遣される前に、掃討作戦で来訪。対装甲ミサイルで門をぶち壊して、街に乱入。まあ、街中茫然自失。抵抗なんかなかったから、死傷者ゼロ。だから良かったけど
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いかん、毒されてる。
かくして、二回めの侵略でも壁が役に立たなかった件。
その後、元カノが初対面で魔女っ子のトラウマを増やしたのは、記憶に新しい。
※本編第12部「あなたのご子息は我々が殺害いたしました。」
その時壊した門扉。
俺たちが来る前に、だいぶ治したんだな。
まあ、固定してある部分を壊して引きずり倒しただけで、粉々に砕いたわけじゃないし。引き上げで、立てて、補修したのか。
城壁がない都市なんて、殻のない貝みたいなもの。
って時代だしね。
圧制者でありながら、守護者でもある太守を失った直後。城門を破った挙げ句、なにやらわからん俺たちが訪問予約。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・殻の修理を急ぐ訳だよ。
いや、役に立たない、ってわかってるからこそ、安心の為。
気休め気休め。
――――――――――怖かったんだろうな。
魔女っ子をはめて、責任を押し付けたのも、逃避がなせるワザだったのかも。
赦さんけどね?
なにもしないけどね?
そんな権限ないけどね?
そして、門前、ってか、都市全体の前に広がるスペース。
埋め尽くされた、スペース。
まあ、人口統計は無いみたいだけど、港街の推計人口が5万前後。俺たちがやらかした後、工房、造船所、人足手配師、船主に同業者ギルドなど日常的に多人数を使っている方々の協力で割り出した数字。
なら、港街と一・二を争う都市の太守府の人口もそんなものだろう。
ご多分に漏れず、ここ太守府も城塞都市。資材強度と建築学の限界で高層化に制限あり。だから、人口を収容するために広い縄張りをとっている。
その、広い広い、まあ俺がいる地べたの上から見上げる分には横広がりな太守府の前。
城塞の常として、敵の接近を見つけやすいように、壁を越える足場にされないように、木々は切り開かれ草原が広くとってある。
その、広く広く広いスペースをはみ出す、数万かと見える群集。
・・・・・・・・・・・・・・えーと。
誰も何も言ってこないってことは、俺たちは問題ないんだろう。危険なら危険で、マメシバ三尉や曹長が見逃すはずがない。
対処が必要なら必ず伝えてくる。対処が始まった後に。だから俺は何もしなくていいわけだが。
俺たちがそのまま街道を進み、群衆の間に入ると同時に、太守府、その城門が開き始めた。




