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「その4、多くの刺激と一つの平穏」

 

 虚空千咲を始め、俺を巻き込もうとする少女達はどの子も物語のヒロインに相応しい容姿をしている。言うなれば美少女だった。そのほうがしっくりくるのは分かる。

 だがその美少女がことごとく厄介事を運んでくるとなると、それはもう俺の心に方程式を刻みつけるには十分だ。

 道端で綺麗な少女を見かけようものなら物陰に隠れるか、帽子で顔を覆う。体が勝手に動いてしまうのだ。はっきり言って俺は美少女恐怖症だ。


「ワタル帰るのだろぉ?なら我と共に帰ろうぞ」


 放課後、帰りのホームルームが終わると同時に小さな物体が飛びついてくる。


「くっつくなって」


「うふふふふ、良い匂いであるなぁ」


 吸血鬼の開祖につらなり、その存在は死してなお生きる伝説。最強のヴァンパイヤ。その名はパチトート13世。


「なぁこの後我の屋敷に来るがよいぞ、久しぶりにワタルの美味なる血を飲ませてくれよぉ」


 すり寄ってくる姿はまるで近所にすむガキだ。言っている内容は吸血鬼そのものだが。


「用事がある。だから無理」


 帽子を深く被った俺はパチトートを引き剥がし立ち上がる。

 この後はようやく図書委員なのだ、こいつに構っている暇はない。


「なにぃ?用事とは……うっふっふ、成程成程。あの転校生の娘であろぉ、なんだ?これから乳くり合うのか?のちに夫婦となる男女であるしな、営みは大事であるぞ」


「ば、馬鹿野郎なに言ってんだこのガキっ!」


「ふっふっふ、照れるな隠すな、我は気になどせんからなぁ。ワタルが我の物でいてくれるなら、何人の女を囲おうと許す器量を持ち合わせているのだ」


「だから何言ってんだよお前は、図書委員だ図書委員!虚空千咲は関係ない!」


「図書委員?あぁそっちであったか、そっちの娘であったか。全くワタルの好みも変わっておるよなぁ、悪いとは言わんがちと地味であるぞ?っておいワタルぅ」


「はっ、言ってろ。お前に桜田の魅力は分かるまい」


 パチトートを押しのけ俺は教室を出た。


「ったく、時間をロスした早く図書室に」


「どこに行くんだ、」


「げっ」


 行く道を塞いだのは転校生である虚空千咲だ。未知数で厄介なのに捕まった。


「その、げっ、とはどういう意味だ。今日ずっと君は私を避けていただろう。いったいどういうことだ話す事がたくさんあると言うのに」


「避けてない、避けてないから、じゃあ俺今から図書委員なんだ、さようなら」


「それだ!その態度こそが避けているというのだ。なぜだ君に嫌われることを私はしていないだろう!それ以前にたいして話もしていないでないか、その反応はあまりに予想外で私はどうしていいかわからないぞ」


「予想外って……」


 いきなり許婚宣言された人間がいったいどんな反応するのか俺には予想も立てられないぞ。


「とにかく説明をしたい、話をする時間をくれ。朝のあれだけでは私がまるで非常識な素っ頓狂ではないか」


「自覚があったのか」


「なに!?ではやはり君は私が非常識で素っ頓狂だと思っていたのか!?それは違う誤解だ!」


「そうのか?……そうだろうか?」


 限りなく真実だろ。


「あれは初対面の衝撃を重視したのだ。出会いは肝心だと教本に書いてあったからな。細かい説明は後にしっかりとしよう考えていた。だが君が逃げるから、衝撃だけが残っているのだ。一度ゆっくり接してもらえば私が常識人だと理解してもらえると思う、ここではなんだな屋上に行こう、そこでじっくりと!」


「今から図書委員だと言っているだろ。そんな時間はない」


「むむ、ならばその後でいい。いつ頃終わるんだ?それまで待っているから」


「終わる時間なんて決まってない。その話はまた後日、暇な時にでも聞くから、じゃあな虚空」


「ま、待ってくれ私は」


 背後のか細い声に構うことなく俺は歩き去る。

 まったく時間を無駄にした。早く図書室に行かなくては。


 渡り廊下に差し掛かったところでガラガラと開く窓。


「奴か!?」


 振り向いた先にいたのは予想通りの襲撃者。


「勇者様、放課後お暇ですよね?」


 別世界へと繋がっている鞄をめいっぱい広げているエルフの少女。


「さあ、どうぞ、どうぞ。入ってください」


 その眼は血走っている。


「……」


 言葉は無用だろう。ダッシュだ。


「勇者様、逃がさないですよ!!わたし考えたんですけど、入口が小さいのなら勇者様がそれに合わせればいいんですよ!!わたし力は強いほうなので!!」


 なんだ!?力が強いからってどうするんだ!?


「だから勇者様のこと折りたたみますよ!鞄に入れるほど小さくします!」


「……やばい」


 捕まったら折りたためられる。小さくされる。

 そこから30分に及ぶ逃走劇。最大出力での全力疾走。

 俺はなんとか己の大きさを死守したのだった。


 我が高校には雇われ司書がいるのだが、なかなか忙しい人らしくどうしても放課後に残ることのできない日がある。そういう時は図書室の管理を図書委員が二人一組で受け持つことになっていて図書委員である俺の順番は今日だった。

 図書室の前まで来た俺は被っていた帽子を鞄の中に入れ一息の間をおく。そして扉を開いた。


「遅刻だよ」


 図書室の中で少女、が眉を潜めている。


「悪い、変なのに捕まりそうになってな」


「ふふふ、いつもいつも同じ理由を言うよね日妻くんは」


 クスリと笑うその人はけして美少女でなく、語れるほどの個性もない。


「遅れてきた分、日妻くんには仕事を頑張ってもらうからね」


 だからこそ何よりの安らぎをくれる唯一の人だ。


「おいおい、この前やったのだってかなりの数だったぞ」


 貸出受付用のパソコンを慣れた手つきで操作する桜田。


 桜田は同学年であるがクラスは違う。隣の組の図書委員だ。


「はい、これ今日の所在チェックの範囲。ここからここまで、いつもより多いよ遅れてきた罰」


 画面を指差し意地悪くほほ笑む姿はまるで、まるで背景である。

 そう背景のような、画面端に身切れて映ってそうなオーラはなんとも俺に安心感を与えてくれる。最高だ。最高潮だよ桜田。モブの化身のようなその御身は俺の周りの人間には欠けている至高のものだ。

 書籍の一覧が載った用紙を受け取り、俺は恒例の所在チェックを開始した。

 俺と桜田以外は誰もいない空間。

 吸血鬼だとか、世界樹の魔女だとか、未来のアンドロイドなんて平穏を脅かす者は居ない。


「……安らぐなぁ」


「へ?なにか言った?」


 本棚と目録を見比べていた桜田が俺のほうを見る。やべ口に出していたか。


「いや何も。それより相変わらず人こないよな放課後の図書室は」


 他の高校を知らないが少々狭いほうであるとおもう図書室はガラリとしている。

時折外から生徒が通り過ぎる気配がする程度だ。


「そういえば司書さんも言ってたよ、最近利用者が減ったって。あんまり品揃いもよくない上に漫画と文庫類をなくしちゃったからだね」


「確かに漫画の存在は出かかったかもな」


 半年程前までは少年雑誌や少女雑誌のコミックスがかなりの数置かれていのだが、授業の最中に読む者や、貸出期間を守らない者、紛失する者が続出したため、一斉撤去されてしまったのだ。


 おかげで賑わっていた頃とは比べ物にならないほどに利用者が減ってる。


「そういえば日妻くんあの漫画とか文庫をどうしたのか司書さんに聞いたら、どうしたって言ったと思う?」


 しゃがみながら下段のチェックをしている桜田がこちらを向かずにそう声をかけてくる。


「あーどうだろうな。量はかなりのもんだし。どうしたって?」


 俺もチェックを続けながら返事をする。


「なんともったいない、全部捨てたんだって」


「本当かよ、そりゃ確かに勿体ないな」


 めっきり漫画を読まなくなった俺からしてもその処遇はあんまりだと思う。どこかに寄贈するとかあるだろう。


「せめて古本屋に売ればかなりの額になっただろうにな、捨てるなら俺にくれればよかったのに」


「ははっ日妻くんがめついね。けど捨てられるよりはそっちのほうがずっとよかったよ。本だってその古本屋で新しい人に買ってもらって読んでもらえるんだからね」


「確か校長が良く思ってなかったんだよな、図書室に漫画を置いてんの」


 巻数がバラバラシのシリーズ物を俺は正しく並び替える。


「うん、そうらしいね。撤去も処分も校長先生が主導で進めたらしいよ。学び舎には相応しくない俗物的な書物である、と言ったとか言ってないとか」


「……おいおい今の時代にそんなこと言うのかあの校長」


「うわさ、うわさ。嘘かホントかわかんないよ。もっともあの校長先生ならいいそうだよね」


「言いそうだな」


 なにせ校則で認められてないとはいえ、学校側が完全に黙認している生徒のアルバイトについて淡々と全校生徒を30分間説教した猛者だからな。


「あれ!?」


 と声を突然上げる桜田。


「どうした?」


 桜田の手元、本棚中段を見るとごっそり本のない箇所がある。


「貸出しされているわけじゃないのか?」


「記録にはないよ」


 どうやら紛失しているのは歴史資料の項目であるようだ。

 盗まれるような品とは思えないが。


「とりあえず明日にでも司書さんに報告しとかないとね」


「そうだな、っとこっちは丁度チェックし終わったぞ」


「こっちも今日の分は終わりだよ」


 伸びをしながら桜田がそう返す。


「なら一段落だな」


 少なくても最終下校時刻の1時間前まで待機していないと行けないのでまだ時間がある。

 一仕事終えた俺達は受付カウンターに腰を下ろした。


「誰も来ないね」


 備えつきパソコンのマウスを無駄にカチカチと鳴らす桜田がぼやく。


「今日は一段と来ないな」


 正直、図書委員が二人も詰めている必要はないだろうな。

 だが俺にとってそんなことはどうでもいい事だった。

 なにげない委員の仕事こなし、他愛のない雑談をして、味気ない暇を持て余す。 この平和な時間はとても掛け替えのないものだ。


「ねえ、日妻くん」


「ん、なんだ?」


「久しぶりに聞かせてもらっていいかな、日妻くんの冒険活劇」


「……」


「この前の聞いた話は面白かったなぁ、あの日妻くんが交通事故で死んじゃって、死神の女の子に脅迫されるやつ。最後はちょっと悲しかったけどすごく素敵な物語だったよ」


「ぐぐぐ」


 平穏にぐさりと杭を打ち込まれた気分だ。


「暇だしさ、ね?」


 だが首を傾けてお願いされるのは満更でもない。


「……まあ、いいけどな」


 そういう経験のない者にとって、俺を取り巻くファンタジックなストーリーに興味を持つのは、当然の反応であると言える。

 うん、そう考えれば桜田の平凡性な魅力が引き立たっていると思えてくる。


「ならそうだな……じゃあ、あのときの話でもするか。あれは――」


 桜田に語りながら俺は昔の事を思いだしていた。

 昔の俺と今の俺は考え方がまるで違っている。

 愚かな俺は助けを求める者や、助けてくれた者、それ以外のすべてを受け入れていた。ヒーロー染みた行為で得られる満足感と正義の味方たる責任感。俺がやらなくてはと意気込んでいた。

 しかし俺にそんな資格ありはしなかった。

 力不足なのだ。俺ごときでは到底受け止めきれない。

 そんな俺を尚も巻き込もうとする者達。断れない状況や事象を伴うことで繕うそれに抗うとまるで異端は俺のほうだ。

 相応しくない役目に義務だ、務めだとはあまりに理不尽だ。それに気付いた俺は成長したと言えるだろう。

 だから俺はもう奴らに関わらないと決めた。理不尽に責任など発生してたまるか。

 背負い込む義務も義理もない。これが俺の結論だった。


 彼女らには関わらない、そう決めるのは俺の自由だろう?


「次の日も神社に行ったが鳥居はうんともすんとも言わなくてな。向こうの世界を脅かす存在がいなくなったからだろう。それ以降二度とゲートが開くことはなかった。せめて別れだけはキチンと済ませたかったと今でも思ってるよ……お終いだ」

 時刻はすっかりと夕暮れ時。気付けば窓からオレンジ色の光が入り込んできていた。

 かれこれ一時間は語っていただろうか。かなり疲れてしまった、さて桜田はと言うと。


「なっ」


 な?


「なんでぇええええ!?」


 こんな反応だった。


「なんでって何がだよ」


「お姫様とは?日妻くんとお姫様凄く良い雰囲気だったよ!一緒にこの世界で暮らしてくれないかって言ってたじゃない!日妻くんその返事をしてないよ!」


「だから返事をする前に行き来しいていたゲートがだな」


「聞かれたその場で返事をすればよかったんだよ!はい、姫。我が一生そのすべてを捧げましょうってさ!」


 誰だその返事した奴は、それは誰のモノマネだ。


「……出来なかったものはしかたないだろ」


 言われたその場で返事をすべきだったのは分かっていた。だが。


「どちらにしても姫と一緒になることはなかったけどな。同時進行していた別の物語もあったし、それをほっぽりだして彼女の世界に移り住むなんて出来なかったから」


 それは無責任だと当時の俺は考えていた。それでも返事を迷ったのは甘えであったのだろう。すべてを捨てて彼女と暮らす世界はとても魅力的だった。


「……うー、そうなんだ。なんか日妻くんって大変だったんだね」


 複雑そうな表情する桜田。


「だからなの?」


「なにがだ?」


「今、日妻くんの周りに集まる普通とは違う人達に冷たいのは、そういう辛い体験があったからなのかなって思って」


「まあ、そんなところ」


 したくない話だったため、俺は露骨に嫌な顔をしてしまった。

 桜田とは普通の高校生がするような会話をしたいのだ。


「……そういえば今日、日妻くんのクラスにまた転校生がきたんだよね、どんな人だった?」


 桜田は会話の路線を変更する気はないようだ。


「女だった。長髪で目がキリッとしていて、布を巻いた長物を常備しているような奴だった」


「へー、また美人なんでしょ?それで日妻くん目当て、当たり?」


「……」


 正解だとも。だが肯定したくない。


「ふふ、当たりなんだ。答えなくてもわかるよ。嫌そうな顔してるもの日妻くん」


「表情から俺の心情を察せるなら、気をつかってくれ」


「その転校生の美人さんのこと話たくないほど嫌いなの?」


「いやそういう訳じゃないけど」


 成り行きとはいえ、化け物から救ってくれた恩人だ。嘘、偽りなく感謝している。嫌う理由なんてない。


「なら話ぐらい聞いてあげればいいのに。あんなに必死に日妻くんと話がしたいって言ってたのに。一方的に突き放すようにしちゃってさ。さすがに転校生さんが可哀そうだったよ」


「……あのやり取りを見てたのか?」


 分かっていて転校生の話題を振ってきたな。


「たまたま見掛けたの。そしてその転校生が日妻くんの許婚だって話も朝のうちに人伝で聞いたよ」


「念のため言っとくけど許婚なんかじゃないからな」


 あのインパクトだ。話が広まるのは防げないと諦めていた。

 しかし桜田にだけは誤解のないようにしなくては。


「そもそもあの転校生。虚空って言うんだが。あいつに会ったのは今日が初めてなんだ。いきなり許婚とか言われてもひくだけだ。意味不明だよ」


「けど美人なんでしょ?」


「容姿は関係ない」


「必死だったよ?説明したいって」


 いつのまに桜田の表情が険しい。


「説明なんかされたら後戻りできなくなるかもしれないだろ」


「日妻くんがつらい思いをしてそうするようになったのは分かるよ、ううん私なんかじゃ分からないのかもしれない。けど虚空さんの気持ちならすごく分かる。勇気を出したと思う。告白したんだもん」


「あれは告白とかそういう次元じゃないと思うが」


「いいえ、告白です!」


 声を荒げて前乗りになる桜田。

 お、怒っているのか?なんでだ?


「自分と日妻くんが許婚だって宣言したんだよ?自分はそれを受け入れていますってことじゃない。立派な告白、覚悟と勇気がいるよ。日妻くんは感じなかったの?虚空さんの気持ち」


「……それは、まあ」


 覚悟と勇気。あのときの虚空は真剣そのものだった。

 瞳を見据えて迷いもなく豪語され、俺は驚き呆れた。

 だが確かにその真っすぐな姿に俺は見入ってしまっていた。


「私の勝手なお願いだけど。その覚悟に応えてあげるぐらいさ、して上げてくれないかな」


「……」


 申し訳なさそうに、だが譲れないといった表情は俺の見たことのない桜田であった。

 けっこうお節介な奴だったんだな桜田は。新しい発見だ。


「わかったよ、話だけ聞いてみる」


「本当に!?」


 途端に桜田の表情が明るくなる。


「ああ、話を聞いて俺なりに返事をする。それでいいんだろう?」


「ありがとう日妻くん!そうだよね男の子なら女の子の気持ちに応えてあげないとね!」

 感極まったのか抱きついてくる桜田。

「お、おい、よせよ!」


 引き剥がすと桜田は照れたように笑う。


「ははっごめん、ごめん。けど本当にありがとうね」


「もう礼はいいって。なんで桜田がそこまで気を使うんだよ知り合いな訳じゃないだろう?」


「うーん、知り合いじゃないけど、まったく無関係って訳でもないかな?」


「ど、どういうことだ。まさか……」


 おまえも刀を振り回して化け物を倒すのを生業にしている訳じゃないよな。


 ち、違うよな!?


「ふふ、同じ道を行く者はみんな同志ってことだよ」 


「……なんだそりゃ?」


 危惧した答えではなかったとはいえ。それはそれで聞き捨てならないぞ。


「恋に頑張る女の子を応援するのは、恋する乙女の性ってこと。それがもしライバルだったとしてもね」


 ……ライバル。


「それって――」


「ってやだ、なんかくさいこと言ってるね私、恥ずかしい奴だ」


 自分で言った乙女ちっくなセリフに照れているせいか、それとも夕暮れの光か、桜田の頬は紅く染まっていた。


 気付けば最終下校時刻の30分前。

 今日の図書委員の仕事は終わりだった。

 図書室の戸締りをして鍵を職員室に返し靴箱まできて俺は立ち止まる。


「悪い桜田、忘れ物した。先に帰っていていいぞ」 


「へ、そうなの?それぐらい待っているけど?」


「いや桜田は暗くなる前に帰ったほうがいい。なにかと物騒だしな。黒羊の化け物とか出てくるぞ」


「それにはちょっと興味が。けど……うん。分かった先に帰るよ。じゃあまたね日妻くん」


 外履きに履きかえた桜田はそれ以上の詮索をせず立ち去った。

 と思った所で扉ごしに顔を出す。


「がんばれ、吾妻くん!」


 そんな言葉を言い残しこんどこそ帰っていった。


「俺が頑張ることなんてないって……」


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