番外編 黒と赤
どこかの惑星、どこかの国、大都会から離れた小さな小さな町
夕方の路地を歩く1人の男、ウォーム。彼の5メートル程後ろに全身黒い服を着た怪しげな男が歩いている。
すると、急に黒ずくめの男が消えた。周囲の人々はざわつき始めた。ウォームは何のざわつきなのか解っていなかったため、少し不思議そうな顔をした。
そして、自宅へ帰るのに近道をしようと路地裏に入った。…と、いつのまにか前に黒ずくめの男がたっている。
「………??うわぁ!!!」
ウォームはびっくりして大きな声をだした。
ずると、黒ずくめの男もしゃべり始めた。
「シー!静かにしてくださいよ。」
ウォームは確かに驚きすぎたと少し反省している。
「ところであなた、ウォームさんですか?」
「?はい。そうですけど…」
黒ずくめの男は彼のことを知っているらしい。
「あなた、今欲しい愛がありますよね?」
ウォームは不思議に思った。彼には妻子がいるからだ。そんなはずあるわけがない。
「いや…べつに。」
その言葉を聞いた黒ずくめは幾度も確認をした。
「え?リールさんという女性に恋をしているのでは?」
「リールは妻ですが。」
何故妻の名前を知っているのか。怪しい。しかし黒ずくめの男は予想外だったらしい。
「妻…?」
「はい。」
ウォームが答えると、黒いフードから、わずかに見える顔が青ざめた。
「いやだ…いやだ…」
急に男はとりみだした。
「…?どうしたんですか?」
さすがにウォームも心配した。
「失敗したのね。」
急に後ろから女達の声がした。女達は赤い服に身をつつむ4人組だった。
「フィード…」
黒ずくめの男は彼女たちを知っている様子。
「?」
状況についていけないウォーム。
「どうしっ……?????」
急に女たちに身を押さえられ、何か薬を飲まされた。意識が遠のいていく。
「クローズ様のところに連れていくわ。行くよ、ライト、マイ、メイ」
「はい。」
ライトが言う。次に双子の息のあった返事が。
「はい!」
女達がウォームを連れて去っていった後、
黒ずくめの男の後ろに、また1人の黒ずくめが現れた。
「アララー、赤にとられちゃいましたネェ」
さらに不気味な男だ。
「す、すいませんでした!」
あわてて謝る。
「私達の仕事は愛を欲しがっている人をみつけてその人に売ることデス。しかし決してその他の人に正体を知られてはいけませン。」
「はい。解ってます。」
仕事を黒ずくめが失敗したとき、赤の集団が秘密を知った人に群がり、その記憶を喰らう。黒ずくめは愛を売ったときの代償となるその人の生命を喰らう。つまり、1つの餌を赤の集団にとられたのである。
「赤の集団はまだ記憶を喰う力しかもっていないものの、このままいけば奴らは私達と同じく生命を喰らい、後には人そのものを喰う力を得てしまいマス。そうなったら私たちは死ぬことになりますヨ?そんな事させるわけにはいきませン。」
不気味に微笑む。
「さっさと部屋にもどりなサイ。彼がまってマス。」
黒ずくめの男達は一瞬で消えた。
暗い狭い部屋に黒ずくめの男が3人。
「失敗したんだって?」
「す、、、すいません!!!」
「あなた自身も消さないと危ないですネェ」
1番不気味な黒ずくめが微笑む。
「赤が次に記憶を喰らうとき、俺らと同じ力を手にするようだ。これは大きな失敗。俺が責任をもって消しておくんで赤の事はよろしくお願いしますよ?」
「わかりまシター♪」
数分後、同じ部屋では男の叫び声がした。
一方、よくにた暗い狭い部屋では赤い服を着た集団が集まっている。リーダーらしき男、クローズが言った。
「これで黒のおこぼれをもらう日々は終わりだ。」
「この男どうします?」
ライトがウォームを指さして言う。
「マイが遊ぶー♪」
「ちがうー、メイが遊ぶのー!」
双子達がさわぎ始める。
そこに不気味な声がまじわった。
「私がもちかえるゥー♪」
黒ずくめの男だ。
「おや、取り返しにくるとはおどろきですね。」
クローズは黒ずくめの男を睨みつける。
「いやぁ、うちのヘッポコが失敗したようで、ご迷惑をおかけしまシタ…ネェ……」
黒ずくめの男が話している途中で赤の集団とウォームは消えていた。
「チッ、できそこない集団がこざかしい。」
珍しく怒り気味な声で言った。
そして、黒ずくめの男も姿を消した。
その後の、赤の集団とウォームの行方は黒ずくめの男が知っているようです。
愛を売ろうとする黒ずくめが現れたら、欲していなくても買っておいたほうが一時は身のためかもしれません。…「一時」は。
ここまで読んでくださってありがとうございました。




