第78☆
「トールさん!」
トールと共に現れた、ほかの5人が叫ぶ。
「くそ!真っ先にトールさんを狙うなんて……」
「これはマズイぞ……」
「そんな……まさか……」
口々に、困惑の言葉を漏らす5人。
よほど、トールさんは信頼されていたみたいだ。
「くっ……トーテムさんがいないなんて……」
「違う、トッポさんだ。間違えるな……って誰かツッコめよ!!」
「……無理ですよ。私たちはボケですよ? はぁ……。一人しかいないツッコミから潰すなんて、噂以上の鬼畜ぶりですね」
「鬼畜小学生……ふぅ」
「ロリコンとドMか……だが、それでいい」
「……って困惑の原因はそれかよ! もっと状況をよく見ろ!」
我慢できずに叫ぶ僕。トールさん。余りに不憫すぎる。
その叫びを聞いて、5人組が僕の方をみる。
「ツッコミ……?」
「助かった。コレでカツル!」
……ダメだコイツ等。
マキもため息をついている。
「なんか変な人たちだけどさ……あんた達が、テンプル騎士団の七曜の盾でいいのかしら?」
「イエース、ロリータ! 超タッチしたい!」
盾を持った男性が勢いよく返事をする。
「ハ、ハハ。そいつ等は、僕が、見つけた、マスター、使いだ! たった、二人で、勝てるとぉ……、思う、な、よ」
息も絶え絶えで、呻く団長さん。
……勝てると思うのは僕だけだろうか?
トールさん瞬殺でしたけど。
「ふーん……ところで、この中に、カンダって人はいるのかしら?」
マキが、盾の男に聞く。
「はぁ……はぁ、こ、ここにはいないよ。12時から開催されるシュウカツの試合を見るって言っていたから……というか、ミカちゃん本当に可愛いねぇ……おじさんと、良いことしようよ……はぁ……はぁ……ふぅ……おわ!!?」
チッ!
僕はマキを見て興奮していた盾男に翁を伸ばしたのだが、盾を使って上手く避けられてしまった。
「なにすんだ! このツッコミ男! ツッコミは死なない程度に優しくって教わっただろうが!」
「今のはツッコミじゃねーよ!」
本格的に、ダメだコイツ等。
「……サ、サク兄ぃが、私を守るために攻撃してくれた……」
目をキラキラさせながら、うっとりしているマキ。
マキもダメだった。
どうしよう。ダメな奴しかいない。
「ミ、ミカちゃんが興奮している……おじさんも興……ぐはぁ!?」
「どうした!? シンシ……けぽぉ?」
マトモな人はいないかと思っていると、急に盾のロリコン男が吹き飛び、長剣の男の首が飛んだ。
なんだ!?
「……ミカさんにあんな下劣な言葉を浴びせるなんて、許せませんね」
「はっ! 俺が来たって事は、つまり、心配する事なんて何も無くなったわけだ」
広場を見渡すと、中央にある3本の大きな柱の上に、二人の少年がいた。
見覚えがある。
白銀の髪をたなびかせて立っている、少年。その少年は白銀に光る杖を持っている。顔はまるで陶磁器で作られたかのように真っ白で、その切れ長の目は冷たい印象を受けるが、同時に神秘的な美しさを見ているモノに与える。この少年の名前はシュウ。
その横に立っている少年は金髪の髪をツンツンと立てている。
肌は健康的な小麦色で、その目は狩猟犬のようなたくましさと、生命力に満ちあふれている。
この少年の名前はカツヤ。
確か、星空12の中で一番か二番目に人気のイケメンくん達のはずだ。
そのイケメン君達は、スッと消えたかと思うと、いつの間にかマキの横にいた。
「この人たちの相手は、僕がします……ミカさんは休んでいてください」
「とっとと蹴り入れて、ケリつけてやんよぉ!」
マキと七曜の盾の間に立つ二人。
おお、なんか、少女を守るナイトのようだ。
マキのお転婆ぶりを知っている僕としては、中々好感を持てる光景である。
やっとマトモな人が登場したよ。
「さぁ、行きますよ!『芸術の宝剣』!」
「はっ! 『想像の創造!』」
シュウの周りに、煌びやかな剣が現れる。
カツヤの手には、黄金で出来た棒。
輝きを増した二人は、遠目で見ている僕でも震えるほどの威圧を放っている。
カッコイイ……
そして、二人とも首と胴体が離れた。
……え?
「……人の獲物取ろうとするんじゃないわよ、このクズ!」
マキが倒れていく二人に向かって怒鳴ってらっしゃる。
その両手には二本のクナイ。
えーっと?
マキが倒したの?
……なんで?
「さて、邪魔者が消えたし、カンダって人がいないなら、とりあえずアンタ達から消すか」
マキは残った3人の女性にクナイを向ける。
「まさか、仲間であるシュ……カツ……えーっと、シュ……カツ……」
「あと一文字ですよ! 頑張って!」
「頑張る女性を応援する……それでいい」
3人の女性は、なんか余裕だった。
「……戦わないの?」
とマキ。
「ああ……実力差ありすぎですし、あきらめます。今回の件は私たちが悪いですし……団長さんがイケメンだから、このギルドに入ったんですけど、泣きわめいてる姿を見たら気持ち悪かったんで、殺された後はギルドを辞めようかと思います」
と杖の女性。
「な、に、ぉ……カメ、さん……」
倒れている金髪の団長さんが、驚愕の声を出している。
カメさん? あの杖の人って、カメって名前なの?
「じゃあ、私も辞めるー」
と弓の女性。
「リザー……も?」
「私も辞める……それでいい」
無手も少女も賛同する。
「フシギ……ちゃん……」
団長の顔が徐々に絶望の色に染まっていく。
というか、カメにリザーにフシギ……止めよう。考察すると、危ない感じがする。
「じゃあ、せっかくだから、3人でギルド作りましょうか?」
と杖の女性。
「いいね。どんな名前にする?」
と弓の女性。無手の少女が頷きながら
「マッサラ・タウン……それでいい」
「はい、それよくない!!」
僕は無手の少女に思わずツッコんだ。
色々ギリギリだろ。その名前。むしろアウトだ。
「……ねぇあの子誘わない? やっぱりツッコミって大切だと思うんだ。顔も可愛くて悪くないし……」
「そうだねー」
「異論はない……それでいい」
なんか、3人の女性達が、円を組んでヒソヒソ話している。
「よっし! そこのキミ! おねぇさん達と……あれ?」
突然立ち上がった女性……カメさんが、僕に向けて指を指すと、その下半身が消えていた。
立ち上がったばかりの上半身は、重力に引きずられるまま、地面に落ちてく。
他の二人も、下半身が消え、上半身だけになっている。
「……男子高校生は私のモノだ!」
と意気揚々とした声が聞こえる。
同時に、僕の胸に強烈な吐き気。
……この声は。
「シュウくんとカツヤくんには会えなかったけど……サクくんがいてラッキー。団長も満足に動けないみたいだし……二人ともペロペロしてあげるね」
黒い髪を風に揺らしながらやってきたのは、僕が知る限りトップクラスのヘンタイ。
「カンダ……!」
『瞬間の円盤』という、瞬間移動をする輪っかを操る、女性だった。




