第73☆
前の話は、実はこの話を含めて一話の予定だったのですが、文字数が多すぎて2つに分ける結果に……
前回の話の簡単なあらすじは、
カンダの【瞬間の円盤】で体をバラバラにされた主人公は、カンダの能力で高所に移動させられて大ピンチ!
さて、主人公はこの絶対絶命の窮地から抜け出せるのか!?といった感じです。
ちなみにこの話も、火星を支配している害虫の王が出てくるため、一応注意です。
面白いよテラ○ォーマーズ。
数分ほどたっただろうか。
高所から飛び降りると、着地前にヒトは意識を失うという話を聞いた事があるが、ゲームではそのような事はないようだ。
だから、僕がコレから落ちるだろう場所を、僕はしっかりと視認出来る。
最悪な事に。
ウソだろ?
なんだよ今日は。厄日か? 大殺界か?
落ちる場所がせめて普通の地面なら、文句は無い。
いや、あるが。
死にたくないが。
痛いし。
けど、コレは無い。
あんまりだ。
何がしたいんだ? 神様?
「ゴキブリ……!!」
僕の眼前に広がるのは、以前見た黒き閃光の群れ達。
ムービング・コックローチの大群が森を横断していた。
そこに、コレから、僕は落ちる。
いや、ホント、ふざけるなよ?
「うがああああ!!」
ムリヤリ手を動かして、何とかログアウトを試みるモノの、やはり強風で上手く動かない。
万事休す。
せめて意識を失っていれば、何も知らずに死に戻り出来たのだが。
何とかしなければ、何かしなければ。
ない知恵を絞っていると、急に僕の腰辺りが振動を始めた。
「……翁?」
ワープされた時、僕の腰に戻っていた翁は、さらに振動を強くし、そして腰から外れた。
僕と一緒に自由落下する翁。
「……そう言えば、黒き帝王が苦手だったな」
このままだと、翁も一緒にブラックナイルに落ちてしまう。
だから一生懸命抜け出したのだろう。
「悪かったな、気付かなくて」
せめて、翁だけでも、害虫の王から逃がしてあげようと翁に手を伸ばす。
そして、なんとか翁を掴んだ瞬間。
力強くブルッと震えると翁はその身を伸ばした。
あの、黒い四万十川に。
「翁!?」
ダークマターの群れに突っ込む翁。
手には、しっかりと地面に食い込んだ感触。
翁は、その身をゆっくりと傾ける。
僕はそのまま、何事も無く、何もない地面に着地出来た。
「翁? 翁?」
着地後、すぐに地面から、黒と油の集合体から翁を引き抜く。
翁の体は、汚れていた。
土と、それと、……ダメだ!コレは言葉で表せない!
翁のあまりの惨状に、僕はただ息をのんだ。
翁は不規則に、ビクッ! ビクッ! と痙攣を繰り返す。
「お前……! 僕のために……!」
翁の痙攣は徐々に弱くなっていく。
それは、まるで生命の灯が消えるように……
「おい!? しっかりしろ! 僕は、まだお前に何もしてやれてないんだぞ?」
思えば、僕はこの竹槍に助けられてばっかりだった。
《オキちゃんを大切にしてね》
というノゲイラの言葉が再生される。
「しっかりしろよ! そんな、まだ出会ったばっかりじゃないか!」
翁の振動は、手で感じるのが難しいくらい弱々しくなっていき、そして、完全に沈黙した。
「うわああああああああああああああああああ」
今日一番の絶叫が、僕の口から絞りだされた。
「いや、まぁそうだよな」
僕は自分の右手を見る。
そこには、元気にピコピコ動く翁の姿があった。
あの後、せめて翁の体をキレイにしてあげようと、ポーションと【子鬼の布】(売らずに取っていたもの。一応、モンスターが落としたモノは2つずつ確保して、売却している)を使って、翁の体を拭いてあげたら、普通に復活して、元気に振動を始めたのだ。
なんでも、失神しただけらしい。
ん? 誰から聞いたのかって?
翁自身からだよ!
言わせんな! 恥ずかしい!
……うん。僕も驚いたのだが、なんと、振動の機能を使って、音声を出せるようになったとか。
《今度彼奴等と対峙いたした時は、まろは全力でお主を守るでおじゃるよ!》
と右手の翁が話かけてくる。
ちょっと、平安風なのは、アレか、一応竹取の翁から来てるからなのか。
《あの太鼓オヤジも、輪っか女も、今のまろなら勝つ事が出来るでおじゃる》
その自信はドコから来るのであろう。
ただ話せるようになっただけの分際で。
しかし、助けられたばかりである。
そこは追及せずに、普通に感謝の言葉を述べる僕。
「……ありがとう。でも、今回の件は、マキに相談した方がいいと思うんだよな」
普通に翁と会話する僕。
いや、驚いたりとかのくだりはもう終わっているし、それよりも重要な事があるのだ。
《それは、なぜでおじゃる? 復讐しないのでおじゃるか?》
くにゃりと、首を傾けるように、曲がる翁。
ホント、コイツの構造はどうなっているんだろう。自由すぎる。
とりあえず、翁の疑問に答える僕。
「いや、アイツらがやっているの普通にマナー違反だろ? だったら、個人的に報復するんじゃなくて、しっかりと運営とかに報告した方がいいと思うんだよ。けど、僕は、報告とかの方法を知らないからな。マキに頼もうと思っている。アイツ有名人だしな」
素人の僕が報告するより効果があるだろう。
《なるほど。それでは、これからどうするのでおじゃる? ログアウトでおじゃるか?》
「うーん。そのことなんだけどな」
僕は再びメニュー画面を開く。
「ログアウトできないんだよな」
灰色になっているログアウト画面。
押しても目線操作しても、一向にログアウト出来る気配が無い。
マキに連絡を取る事も出来ないようだ。
まさかな……
「にゃはははは……大変な事になりましたニャー」
背後からの突然の声に翁を構えて振り返る
《何モノでおじゃる!》
翁が震える。
「……お前は!?」
だぼだぼのダルダルな靴下を履いた、指揮棒を持った黒い猫。
コイツは
「お久しぶりですニャ。サク様。あんニャい人ルーズ。今回は12☆Worldの監視人として、御前に参上しましたニャ」
ペコリとお辞儀をする黒猫。ルーズ。
「さて、お気づきでしょうが、今、12☆Worldはログアウト出来ないデスゲームになってぐぼはぁ!?」
黒猫の顔面に蹴りをめり込ませる僕。
ふははっはは! 復讐の時間だぜぇええ!
僕は意気揚々とルーズを蹴りまくった。
……なんかしゃべり始めました(^_^;)
あ、12☆Worldはデスゲームじゃないですよ(・_・)




