第70☆
「【逆に溶かす英雄の翼】この100万度にも達する炎の翼は全てを溶かす……痛い目……いや、痛いと思う間もなく消えたくなければ、大人しく立ち去ってくれないかな?」
ニコリと笑うフレイ。
イケメンが、カッコいい鎧を着て、炎の翼を生やしている……
なんだ!?
この胸のムカつきは!!
男として当然の感情を持っていると、5人組の男たちも同じ感情のようで、大剣を持った男が、前に出てきていた。
「はっ! マスターか。さすがは10大ギルドの一つ、テンプル騎士団。こんな東の島に来るような部隊の隊長でも使えるなんてな……お前たちは下がっていろ。ここは俺がやる」
男性は大剣を抜くと、気合いの声を出す。
「はぁああああああああ……!」
そして、その男性の声と共に、男の持っている大剣に金属が纏わりついていき、巨大化していく。
2倍くらいの大きさになった、剣と言うには余りに無骨過ぎる鉄の塊を構える男性。
「これが、俺のマスター……【鉄塊の大剣】
鉄の魔力を流すことにより、自身の武器を、巨大に、強大にすることができる! しかも!」
3メートルほどの大きさになった大剣を振り回す男性。
しかし、その速さは、通常の剣を振り回しているのと大差ないスピードである。
「魔力の込められた鉄……魔法鉄の効果によって、使用者の感じる重さが少なくなっている。どうだ? 逃げ出すなら、今のうちだぜ?」
ギラギラとした目をフレイに向ける大剣の男。
どうやら、翼の生えたイケメンに怒りを感じていないようである。
この目は、多分闘いを楽しもうとしている目だ。
ソレに、この男性も良く見れば中々のイケメン。
ちっ。仲間じゃないのか。男じゃないな。
「へぇ……話も出来ない野蛮人かと思ったら、まさかマスターを使えるとは」
フレイは炎の翼を消し、両手を広げた。
ソレは、力を見せた大剣の男に対する降伏の証か、それとも
「どうだい? ユー。良ければテンプル騎士団に入らないかい? 今オリジナルマスターを使える者を探していてね……我々の仲間になれば、世界樹で採取も出来る。悪い話ではないと思うが……」
ニコニコと笑うフレイ。
両手を広げたのは、歓迎の意思か。
突然のフレイの申し込みに、目を広げて驚いていた男性だが、すぐに口元も歪ませると笑いの形を作った。
「へっ! ビビリやがって! 誰がお前らみたいな詐欺師グループに入るか! 俺たちは【フェンリルの牙】! オオカミは何モノにも媚びないんだよぉ!」
鉄の塊と化した大剣をフレイに振り下ろす男性。
瞬間。
フレイと大剣の男性の周りが光ったと思うと、消えていた。
大剣の男性の、3メートル以上はあった大剣が。
柄だけ残して
「……ッ!?」
「ふー……言ったはずだ。僕の【逆に溶かす英雄の翼】の熱量は全てを溶かす。月に向かって吠えることしか出来ないオオカミ風情が、太陽に逆らうなんてな」
いつの間にか炎の翼を生やしていたフレイ。
大剣は、フレイの翼で燃やされ、消されたのだ。
「う……うおおおおおおおお!!」
男性はまた声を上げる。
すると、柄だけになった大剣に、金属が纏わりついていく。
「やれやれ。実力差も分からない野蛮人とは……やっぱりいらないな」
先ほどよりも明らかに小さい鉄の剣を振りかざした男性。
その男性を、フレイの翼が包み込む。
「ぎゃぁああああああ!!」
翼の炎が男性の毛皮の鎧を燃やしていき、男性は火ダルマになった。
「ロウガ!! よくも!!」
おそらく、大剣の男性の名前だろう。
後ろで見ていた大剣の仲間たちが、名前を呼びながら、それぞれの武器を持ち、フレイに攻撃を仕掛けて行く。
「君たちも消えなよ……【近づくな愚か者】」
フレイが炎の翼をはためかせると、無数の炎の羽が大剣の男性、ロウガの仲間達に降り注いでいく。
「うわあああああああ!!」
男性達の悲鳴が広がる。
数分後。
そこに人影はなく、黒くなった地面だけが残されていた。
「さて、と。結局PKになってしまったが……まあいい。契約書の写しを見せて、メインク辺りにニボシでも掴ませれば大丈夫だろう」
鎧の男たちを呼び寄せ、何か指示を出すフレイ。
僕はソレをただ見ていたのだが、フレイは僕に気付いたのか、急に話しかけて来た。
「ああ、そう言えば君がいたね……どうする? 君も無駄な特攻をしてみるかい?」
フレイが炎の翼を広げながら、僕に話しかけて来た。
自分は強いぞーってアピールされているようで、中々ムカつく。
目の前で、男性5人組が瞬殺されたのだけど、僕のフレイの評価は、ザコだ。
なぜなら……
「いや……ところで、その翼、100万度……でしたっけ?」
炎の翼を指差す僕。
「あ? ああ、そうだ。あの天空に輝くライジング・サンのように、この翼の……」
「その割には……あんまり熱そうじゃないですよね?」
……
突如、空気が重く、冷たくなった。
あれ? やっぱり悪い事言ったか?
ファイヤーシープの炎と比べるとあまりに熱そうじゃなかったから……アビス・ケルベロスの半分くらいだ。
謝った方がいいか?
ムカついていたから、つい言ってしまったが、100万度だー!なんて思っている人に、熱そうじゃないなんて、よく考えれば失礼な話だ。
「い、いい今、き、君は、なんて言ったのかな? 熱くない? なんて言っていないよな? この、常時100万度、最高で1兆度にも達する、神の翼、【逆に溶かす英雄の翼】に向かって……」
プルプルと拳を震わせながら、顔を真っ赤にして、内なる何かを耐えているような素振りのフレイ。
ヤバい。
ここまで怒ると思って無かった。
素直に、なぜ熱くないと思ったのか理由も付けて、謝った方が良さそうだ。
「すみません。【逆に溶かす英雄の翼】……でしたっけ。その翼から、暖房器具くらいの熱さしか感じなかったので…………すみませんでした!」
ピシリと音が出るくらい綺麗に頭を下げた僕。
完璧な謝罪だ。
コレでフレイさんも怒りを鎮めてくれるだろう。
そう思っていると、
「ふ……ふふふ、ど、どうやら、君も死にたいようだね……僕の【逆に溶かす英雄の翼】で!!」
少し低めに設定されたファンヒーターくらいの温かさを感じた僕は、下げた頭を上げる。
僕の完璧な謝罪が失敗したようである。
そこには、先ほどの倍以上に羽を大きくしたフレイが立っていた。
「い、いや、100万度って言うから、そんなモノ生やしてたらフレイさん自身もヤバいはずなのに、何も成って無いから、言うほど熱くないのかと」
弁明を続ける僕。
しかし、フレイの怒りは収まらない。
「な、何を言っている! 僕が燃やしているんだ! 僕が燃えるはずはないだろうが!!」
さらに翼を大きくするフレイ。
彼の内面を表現しているように、翼はドンドン大きくなっていく。
それに応じて、彼の翼から感じる熱も……多分少しずつ大きくなっている、と思う。
炎の翼がさらに倍以上の大きさになって、
そして、彼は半裸になった。
……なんで?
「消えるがいい! 1兆度の炎……ん? なんだ? なぜ鎧が? え? HPが! なんだ!? 一体何が!? うあああ??」
ジタバタと暴れ出すフレイ。
翼の炎が彼に移っている。
先ほどのロウガ達のように全身を焼かれるフレイ。
「フレイ様―!?」
鎧の男たちが、フレイに駆け寄っていく。
「貴様! フレイ様に何をした!!」
フレイの火を消そうとしている鎧男の1人が僕に訴える。
「え……? いや、特に、何も」
何が何だか分からない僕。
ん?いや、そう言えばマキが……と昨日のマキが教えてくれたマスターについての解説を思い出す僕。
「オイ! 応援を呼べ! 全員でコイツを捕らえるぞ!」
ピーッ!と胸元から取り出した笛を吹く鎧男。
ドコにいたのか、森じゅうからワラワラと同じ鎧を着た男たちが2~30人ほどやって来た
マズイ。退却した方が良さそうだ。
足に力を入れて、駆け出す僕。
「逃がすな! 追えー!!」
「ひいいいい!?」
こんな大量の男たちに追われた経験は……実はけっこうあるのだが、やはり慣れるモノではないし、恐い。
全速力で走る僕。
「何だ!? アイツめちゃくちゃ速いぞ!?」
後ろの方から聞こえる声を微かに聞きながら、昨日のマキの言葉を思い出す。
『1000人に1人』
ソレが、βテストでマスターを使いこなせた人間の割合だそうだ。
『マスターは、思い込むだけで、何でもできるお手軽簡単チートだー。なんて、言う人がいるけどね。思い込むって事はとっても難しい事なんだよ』
『例えば、マスターの仕様を聞いて、皆がよく思い浮かべるのが、剣とかに炎を纏わせる【魔法剣】の類の能力なんだけどさ。結局、マスターで再現出来ないか、再現出来たとしても、威力が弱いか、武器を失うだけなんだよね』
『だって、そうでしょ? 武器に炎を纏わせるって事はさ、武器を燃やすって事なんだよ?そりゃ、強度は落ちていくし、強度が落ちない程度の火力を武器に纏わせても、威力は出ない。なぜ、炎を纏わせても、武器にダメージがいかないのか。【魔法剣】を再現するには、ここまで考えないと行けないのさ』
『思い込むって事は、思いを込めていくって事なのさ。徹底的に、その事に対して、向き合って行く事。生半可なイメージじゃ、再現出来ないか、出来たとしても、矛盾が生じていずれ弾かれる』
『……だから、サク兄が思っている。透視能力を作って、女の裸見放題だぜー。うひょー。なんて能力。どうやって服を透かして裸を見るかを突きつめないと、再現出来ないからね』
思ってねーわ!!
はっ!
回想に突っ込んでしまった。
しかし、多分コレが、フレイが燃えた理由だろう。
100万度の炎に、なぜ自分は焼かれないのか。
そこを、考えていなかったのだろう。
考え込んで、思い込んでいなかったのだろう。
だから、僕の言葉で簡単に火が付いたのだ。
「待て! 報告は聞いたぞ!!」
気付けば、僕の10メートル程前には、鎧の男たちがいた。
何人いるんだよ、テンプル騎士団。
その向こうには、餓死の川が流れている。
「おとなしく投降しろ! そうすれば、まだ……」
鎧の男の警告を無視して、飛び上がる僕。
10メートルくらいだ。
まだ飛べそうだなと思いつつ、アイテムボックスから、翁を取り出す。
「伸びろ!」
川底に翁を突き刺し、そのまま鎧の男たちごと川を超える僕。
「なんだと!?」
「この野郎! 逃げるな!」
対岸でギャイギャイと叫ぶ鎧の男たち。
「何も悪い事してないのに、責められる趣味は無いんだよ」
べーっとあっかんべーをして、そのまま僕は立ち去った。
「クソ! 逃がした! なんてスピードだ」
「なんだアイツ? 10メートル以上ある川を飛び越えやがった。しかも、あの武器。マスターか? 伸びやがった!」
「ココは誰も通すなと厳命を受けていたのに……」
「まぁ、あの人達が何とかしてくれるさ……この先にいるのはテンプル騎士団最速のお二人だからな」
フルーツリーの森は2つに分かれている。
サクラが餓死の川と呼んでいる、バウンドの川を境に、西と東で。
始まりの街から遠い方。
東の森に二人の男女がいた。
女は20代。男は60代くらいだろうか。
2人とも、荘厳な鎧で身を固めている。男が金。女が白。
腰まで伸ばした黒色の髪を一つにまとめながら、金色の鎧の男性に話しかける女性。
「……予想通り、こちらのフルーツの方が質は良さそうですね。錬金術に耐えれそうなフルーツが約5割……西の森の5倍です」
顎の無精ひげをいじりながら、金色の男性が頷く。
「うむ……錬金術で作ったジュー……」
「息が臭いのでしゃべらないでください」
「えー……」
言葉を遮られる男性。女性から話しかけてきたのに、あまりの仕打ちである。
「ま、まぁ、ソレがカンダの良いとこか」
「……顔面を二つに分けたら、口臭は無くなるのでしょうか?」
金属で出来た輪っかを2つ取り出す女性。
男性は思わず身構える。
「ちょちょちょ! カンダの【瞬間の円盤】はさすがにワシでも危ない! まったく……そんなに息臭いかな?」
手で自身の息を受け、匂いを嗅ぐ男性。
「確かめなくても臭いですよ、トールさん。だから死んで臭い」
手に持つ輪っかの数を増やす女性。
「ヒドすぎるぞ! いくら神のごときワシでもそろそろ怒るからな……ん?」
メニュー画面を開き、突然来た彼の部下からのメッセージを確認する男性。
「……フレイのヤツがやられたおった。若造が。報告を見る限り、おそらくマスターでの自滅じゃがな。フレイを倒した奴は、バウンドの川を越えてこっちに来ているらしいぞ」
部下からの報告を読み進めていくにつれ、笑みがこぼれる男性。
無精ひげをいじりだす。
「フレイ……あの雑魚ワキガか……自滅って、炎の翼なんて一周回って逆にダサいマスターを使っていたら、当然でしょうね。けど、自滅なら、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「いや、中々面白そうだと思ってのう。 部下の報告では、ソイツは物凄いスピードで……」
「だからしゃべらないで臭い」
「……お前」
ガシガシと頭を掻き、立ち上がる男性。
「まぁ、いいわい。テンプル騎士団特務部隊【七曜の盾】最速のワシより速いか、確かめてやるとするか……のう小僧?」
男性は、20メートル程後ろの木陰に隠れていた、サクラに話しかけた。
冬の童話祭りに参加しました。
ポクパエリアとたーくんというタイトルです
↓
http://ncode.syosetu.com/n1328bn/
小説というより、絵本の文章みたいになっていますが、お時間がございましたら是非一度ご覧くださいm(_ _)m




