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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月9日(金) 選択☆迷いのキノコ☆孤独竜
71/85

第69☆

5日目突入☆

 人生には、選択する時がある。


 老若男女。何時でも、誰でも、その時は訪れる。

 いや、意識していないだけで、選択という行為は、常に、している行為なのかもしれない。


 朝 起きるか、欲に負けて惰眠を貪るか。

 昼 己を鍛えるか、遊びに興じるか。

 夜 談笑するか、自己の世界に陶酔するか。


 これらは、無意識の選択だ。


 ただ、しかし。


 今この時において、僕。秀早紀 桜は、確実に、選択をしている。

 選ぶという行為に、真剣に、意識して向き合っているのだ。


 意識の選択。


 学校

 部活動

 仕事

 恋愛

 結婚

 家


 その選択は、内容の貴賎に関わらず、人生に大きく関わるだろう。

 なぜなら、人生は自己の意識でのみ、変えていく事が出来るから。







  「巨乳美少女……ッ!!」


 ギリリッ!

 と、僕の歯が重なる音が聞こえる。


 分かって、いるのだ。

 今の僕の選択に、答えは一つしかないと。


 昨日、第2の街トラノモンに着いた事には着いたのだが、マキが放った【スラッシュ】のおかげで、都市機能がマヒしまくりで、とても観光出来る状態ではなかった。


 そこで、最初の街に戻り、マキ達の拠点の足しに、今までの稼ぎ約10万B(ポーションやジュース、モンスターの素材を売って稼いだ。マキが倒したモンスターのドロップアイテムだけで、数万B程あるのが恐ろしい)を渡そうとしたところ、

 『いや、実は近々大きな収入がありそうでだからさ。家を買う資金は足りそうなんだよね』

 と、受け取りを拒否されてしまった。


『私の事はいいから、防具でも買ったら? いつまでもメロ○のままじゃダサいよ』

 とマキ。


 そこで僕は今10万B近くのお金を持っていて、プレイヤーストーンの前にいるわけだ。


 そして、プレイヤーストーンで出品されている装備を見て、見つけてしまった。

 現れたのだ。遂に、出品されたのだ。


 刃殺【蒼鹿ノ角】



 転売品だろうか。

 出品者はシカでは無くマウスとなっていたが、確かに製作者はシカさんである。


 ただし転売品。


 値段は9万9,800B


 以前シカさんが7000台で出していた事を考えると、10倍以上の金額である。

 けど、しかしだ。


 「き、き巨乳美少女ぉお……!!」


 なぜ?

 なぜ神はこのような選択を我に与えた?


 10倍以上の値段だけではないのである。

 本当の選択は、別にある。


 「……スター追加ぁ……!」


 そう。


 超感覚UPを外して、別のスターを付けるためのスターの追加購入に必要な資金12万B に、あと少しで届きそうなのだ。

 今でこそ、ポーションとジュースを売って1日2万B くらいは稼げているが、今後どうなるか分からない。

 マキ曰く、MMOは、サービスの初めのころが一番儲けやすそうだ。

 市場が活性化しているから。

 しかし、そろそろ、市場が安定し始める頃だとか。

 アイテムの適正価格や、必要性をユーザーが分かり始めるのだそうだ。


 つまり、コレから、1日2万Bモノ大金を稼ぐ事は難しいという事だ。




 超感覚で地獄の苦しみを味わうか、巨乳美少女か。

 残酷な選択。


 答えは決まっている。


 But


 決断出来ない。

 選択できない。



 「美少女……痛み……美少女……痛みぃ……!!」


 メリット、デメリット

 

 プラス、マイナス


 両者を天秤にかけて、比べ、選ぶ。

 身を削るような、地獄の苦しみから選んだ選択は……










 風が肌を触る。

 心地よい感覚が、僕を包む。



 「ふぅ……」


 僕の前に広がるのは、フルーツリーの森。

 大量に作ったジュースのおかげで、フルーツの在庫が無くなったので、採取しに来たのだ。


 「また、稼がないとな……」


 腰にある短剣に手をやる。

 そう、僕は刃殺【蒼鹿ノ角】を、美少女と出会えるチャンスを選択した。


 い、いや、コレは別に欲望に負けたとかではない。

 ただ、刃殺【蒼鹿ノ角】はいつ売りに出されるか分からないし、その時の値段が9万9,800Bよりも高いかもしれないのだ。


 その点スターの値段は12万Bで決まっている。


 どう考えても、あの時刃殺【蒼鹿ノ角】を選択する事が正解だったのだ。


 それに、刃殺【蒼鹿ノ角】を持っていれば、シカさんの別の武器や防具も買える。

 ○ロスのような装備もいいかげん変えたいし、この選択はベストな選択なのだ。


 と、自分の選択に理由を付けて納得する僕。

 そのまま歩いて、森に入る。


 そこで、普段見ないモノを見た。


 「馬……車?」


 緑色の馬のような生き物がいる。

 その生物に馬車のようなモノが付けられていて、それが3台ほど、フルーツリーの森に止まっていた。


 「……コレが、マキの言っていた、グリーンドンキー、かな?」

 ドンキー。

 つまり、正確には馬では無くロバのようだが……ロバと馬ってどうやって見分けるんだろうか。

 一緒の生き物にしか見えないのだが。


 とりあえず、このグリーンドンキー。

 第2の街で売られている乗りモノで一番安いそうだ。

 3万B。

 最高速度は時速15キロ。

 遅い。


 ちなみにホワちゃん。

 時速30キロ。

 60万B

 遅いし高い。


 「……でも、確か、走りスター無しでの速度の限界が時速10キロだっけ?」


 とマキの言葉を思い出す僕。

 薬草も、最初の頃半径5キロ圏内のモノを取っている人ばかりだったしな。


 100分で採取出来るギリギリの距離だったのだろう。

 時速10キロで走っても、SPが切れたら回復しないといけないし。


 そう考えると、SP消費無しでコンスタントに時速15キロで走れる乗りモノは、便利なんだろう。


 「けど、僕には必要ないな。フルーツリーの森まで30分で着いたし」


 グリーンドンキーの頭を撫でる。

 毛並みは、イマイチ。

 安いって感じだ。

 もう一度クシャリとグリーンドンキーの頭を撫でて、奥に進む僕。

 そこでも、普段見ないモノを見た。


 「うひゃーお宝だらけだぜぇ!」


 「くひゃひゃひゃひゃ! うめぇ! 2重の意味でうめぇ!!」


 「コレでジュースを大量に作れる!! 大金持ちだぜぇ!」


 などなど、欲に溺れた人間の歓喜の声が森に響いている。


 「……最悪だ」


 この最悪は、色々な意味を含んでいる。

 一つは、今まで人があまりいなかったおかげで聞こえていた、森の音色が、欲望の声で聞こえなくなった事。


 そしてもう一つは、先ほど聞こえたように、他の人がフルーツを採取出来るようになった事で、ライバルが増え、多分僕が販売していたジュースが売れなくなる事だ。

今まで作れば作るだけ売れて、一日60本は売れていたジュースが売れなくなる。

 値下げとかしないといけないのだろうか。


「……てか、何でこんなに人がいるんだ」


 森に止まっていた馬車だと、良くて一台10人が限界である。

 3台で30人。

 けど森には1000人単位で人がいそうだ。

 不思議に思っていると、すぐにカラクリが解けた。


 「……っち! SPが切れた! 俺は一旦ログアウトして、SPを回復してくる!」

 「ああ! またな! くぅー……! 一本3,000Bは下らないからな……価値が下がる前にドンドン採取して生産しないとな!」


 と話していた2人組みの男性の1人が消えたのを見ていた僕。


 つまり、この森にいる人たちは、馬車で来たばかりの人達ではだけではなく、昨日くらいからずっと森に籠っていたんだろう。


 SPが切れるまで採取して、無くなったらログアウトして回復して、また戻って採取して……の繰り返し。


 フルーツを食べて回復しないのは、SPの最大値が増えるのを警戒しているのだろう。


 「こりゃ、必要なモノだけ採取して、さっさと別の場所に移動した方が良さそうだな」


 んで、ポーションとジュース以外の金儲けの方法を考えた方が良さそうだ。

 ポーションも、馬車の普及のおかげでライバルが増えそうだし。

 とりあえず、ミックスジュース用に、ブドウとリンゴだけ採取しようと決めて走る僕。


 そして世界樹に来たのだが、

 そこでさえも、普段見ないモノを見た。



 「ちょっ! どけよ! 採取出来ないだろう!」


 「採取出来ない? 申し訳ないが、ここで採取出来るのは、我々テンプル騎士団のみだ」


 「はぁ!? なんでだよ!」


 ギャイギャイと揉める人達。

 世界樹の周りを、ヤリを持っている重厚な鎧を着た人達が囲っていて、採取を妨害しているようだ。




 「馬車を使う時に、署名したはずだ。我々テンプル騎士団の採取を妨害するような一切しないと」

 と鎧の男。


 「だから別に妨害はしていないだろ! ただ、世界樹で、リンゴを採取させろって言ってるだけだろうが!」


 獣の毛皮のよう装備を身につけている、人間の身長と同じくらいの長さの大剣を背負った男が、鎧の男に詰め寄っている。

 その男性の後ろに、似たような格好の人が4人いる。仲間だろうか。



 「我々が今この世界樹で採取しているのだ。一つの木で採取出来るフルーツの数は、全プレイヤー共通で1日に約1200個。世界樹はその大きさから、それよりも採取出来るかもしれないが、それでも限りあるアイテムだ。君たちが、この世界樹で採取するということは……つまり私たちの取り分が減る。ソレは採取の妨害に当たる」


 「ふざけんな! 1万Bも料金取ったくせに!……」



 なんか、嫌な話みたいだな……

 ただ、話を聞いている限り、この大剣の人達は、テンプル騎士団の馬車に乗せてもらって、フルーツリーの森に来たようだ。


 その条件が、1万Bと、テンプル騎士団の採取を妨害しない……か。


 「じゃあ、僕は関係ないんだよな」


 自力で来たし、署名もした覚えは無い。


 悠々と世界樹に向かって歩いていると、鎧の男たちに止められた。

 なんでやねん。


 「こら! 話を聞いていなかったのか? ココで採取は出来ない! 別の所に行け!」


 と、大剣の男と揉めているヤツとは別の鎧男に肩と掴まれる僕。


 「……いや、僕は馬車に乗っていないんで」


 手を払い、前に進もうとする僕。


 「……はぁ、くだらん。街からフルーツリーの森までは50キロもあるのだ。乗りモノのグリーン・ドンキーも我々が買い占めている。我々の馬車に乗る以外で、この森に来る方法は無い! いいからさっさと消えろ。これ以上は契約違反で、痛い目に会うことになるぞ!」


 ヤリを僕の首に突きつける鎧男。

 いやいや。

 めちゃくちゃだな。オイ。


 「契約って、約束してないし、それに、むやみにPKしたら、警察が来るんじゃないのか?」


 なんか、マキにも同じ事を言った気がするが、一応鎧男にも聞いておく。


 「はっ! 契約違反をしているくせに偉そうな! 警察が来たとしても悪いのは私たちではない! お前だ!」


 だから、そんな約束した覚えないってーの!

 と思いつつ、けど、どうせ言葉では止まんないだろうな、とも思う僕。


 どうするか。と悩んでいると


 「どうしたんだい!? サブボーイズ!」


 急に空から声が聞こえたので、見上げてみると、赤色の長髪の男性が、上から落ちてきた。


 長髪の男性は鎧の男たちと同じように、重そうな鉄の鎧を……明らかに装飾とかは、他のヤツらよりカッコいいのだが、その鎧を身につけていたにも関わらず、音も立てずに地面に着地した。


 そして、そのまま僕達に近づいてくる。


 「はっ! フレイ隊長! 申し訳ございません! このガキが、契約を無視して世界樹に近づこうとしておりましたので注意をしておりました」


 姿勢を正して、敬礼のポーズをする僕に掴みかかっていた鎧の男。


 「ふーん……君もそうなの?」


 「はっ! 契約内容について再度説明しておりましたが、ご納得されず、どうしたものか……」


 大剣の男たちと揉めていた鎧の男も敬礼しながら、フレイと呼ばれる男性の質問に答える。


 「なるほどね……どうかな? 君達。書面で契約している以上、僕達としては正当な権利を行使しているつもりなんだけど……ココは大人しく引き下がってくれないかな?」


 ニコリと微笑むフレイと呼ばれた長髪男。

 ちょっとイケメンなのがムカつく。

 しかし、彼から発せられるオーラ的なモノは、明らかに僕達を威圧していた。


 ……なんでオーラとか分かるんだろう。僕。


 自分の感じた感覚に戸惑っていると、大剣の男たちが、フレイに向かって次々に抗議を始めていた。


 「書面だぁ!? あんな小さい文字で書いてあるの全部読む奴がいるわけないだろうが!」


 「そもそも、妨害を禁止しているだけで、世界樹で採取出来ないなんて、一言も書いてないぞ!」


 大剣の男たちの仲間だろうか……5人の男性が声を荒げている。


 「やれやれ……話も通じない野蛮人とは……君も彼らの仲間かな」


 フレイは、肩をすくめながら、僕の方を見て来た。


 「……いや。ただ、僕は、そもそも馬車に乗ってないんで、書面に何か書いた覚えも無いんですけど」


 率直に、事実を述べた僕。


 しかし、彼は大きくため息をついた。


 「あーあ。暴力なんて、あのガールと同じような野蛮な方法は取りたくないのだけど……話も通じない、ウソツキ。こんなヤツら相手ではしょうがない……か」


 急に、フレイの体が光り始めた。


 彼の背中から、何かが生えていく。


 「【逆に溶かす英雄の(ウイング・オブ・ヘリオス)】」


 5メートルほどの長さの炎の翼が、イケメンに生えた。


ルーズ「広場で、『美少女に痛みを!』とつぶやいているヘンタイがいるという通報が多数よせられているニャ……」

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