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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月5日(火) 200万人☆金色リンゴ☆笑顔のおじさん
7/85

第6☆

 

 昼食は、カレーにした。

 ニンジンは入れなかったが、約束を破った場合、大量のニンジンを入れる準備があるとマキに知らせるためでもある。

 僕がカレーを作っている間に、マキはプレイエクスぺリエンス3の設定などをしてくれていた。


 そして時間はお昼の12時。

 マキはもう自分の部屋に帰っている。


 サービス開始は12時12分からだが、ログイン自体はもう出来る。


 僕は、カギの確認や、火の元のチェックをし、ついでにマキの家の戸締りも確認する。


 バーチャルリアリティの世界に行くことは、ある意味外出することと一緒だ。

 現実から隔離されてしまうため、安全な場所でプレイをしなくてならない。

 一応部屋に置いてある監視カメラ付きロボットの画像をゲーム中に見ることも出来るが、戸締りはしっかりしなくては。


 まぁ、この周辺には、常にストーカーが2~3人、三すくみ状態でいるから、ある意味安全といえば安全ではあるのだけど。


 もろもろの確認を終えた僕は、エアコンをつけて部屋の空気を最適な状態にし、タオルケットを体にかぶせる。

 そして、プレイエクスペリエンス3を頭に装着し、ベッドに横たわる。


 VR機でゲームをするのは初めてではないが、五感を完全再現すると言われるプレエク3と、現実より現実だと絶賛される12☆Worldの最強タッグのバーチャルリアリティだ。

 

 僕は、ワクワクする気持ちを抑えつつ、頭の付けた機械を起動する。


 データを読み取る機械音と共に、僕は仮想世界へと旅立った。



 真っ暗な世界が徐々に明るく、白い世界を作り出す。

 完全に世界が作りだされた時、僕は白い部屋の中にいた。

 周囲には、壁と同じ白い石像が並んでいる。

 

 ねずみ うし トラ ひつじ いのしし ……


 十二支だろうか?少し数が多い気がするが、大量の石像の中心に僕と、そして黒い2足歩行している猫がいた。


 手と顔の周囲は白いのだが、足には生地が長くのびてダルダルした靴下。

 ルーズソックスだっけ?を履き、手には指揮棒のようなモノを持っている。


 その二足歩行の猫は僕に語り出した。


 「こんにちニャ。私は12☆Worldのあんニャいにんをさせていただいております、ルーズと申します。これからよろしくお願いいたしますニャ」

 ペコリと頭を下げるルーズと名乗る2足歩行猫。


 あんなに長い靴下履いて、歩きにくく無いのだろうか?


 疑問を持ちつつも、僕はつられて頭を下げる。


 するとルーズは僕に近づいてきて、鼻をピクピクさせながら僕の体の匂いを嗅ぐ。

 「ニャニャ!? お兄さん。今日はカレーを食べましたかニャ? カレーは私の大好物ですニャー」

 ルーズはテンションが上がったのか、僕の体の匂いを嗅ぎまくる。

 まるでマタタビを与えられた猫のようだ。


 って、いやいや、リアルを再現するって聞いていたけど、まさか体の匂いまで再現されるのか?

 スゴイな!プレエク3!

 さすがモノ作り日本を復活させた機械!


 って感心している場合ではない。

 ルーズの身長は、ちょうど僕の腰の部分ぐらいの高さなので、ルーズが匂いを嗅いでいる場所はちょっとヤバい場所だ。


 僕はトリップしているルーズの顔を引き剥がすと、ルーズの顔を叩く。

 うーむ。触感も本物みたいだ。


 指に挟まるルーズのふさふさとした毛の感触と、叩いた時に感じる衝撃に感動しつつも、ルーズを現実へと呼びもどす。

 仮想現実で現実とはこれいかに?


 まぁ、そんなどうでもいい僕の疑問は置いておいて、顔を叩いていると、ルーズは、やっと気がついたのか、ハッと目を開き、そのまま後ろに下がって僕に頭を下げた。


 「も、申し訳ありませんニャ。ついカレーの匂いに負けてしまって」

 ペコペコと何度も頭を下げるルーズ。


 僕は手をひらひらさせて気にしてない事をアピールする。


 「そんなことより、さっさと進めてくれないかな?」


 「そ、そうでございますニャ。それでは、進めさせていただきますニャ。」

 「まず、お兄さんのお名前は何ですかニャ?」


 「えーと、サクで」


 もっと凝ったハンドルネームでも考えようかと思ったが、時間も無かったので、単純に本名を短くした名前にした。

 マキとかサキもサク兄ぃとか言うし。


 「サク様ですニャ。サク様は、私のチュートリアルを聞きますかニャ?それとも聞かずに遊びますかニャ?」

 ルーズは、案内人らしく手を横に向けると、突如黒板のようなモノがルーズの横に現れた。

 チュートリアルは、この黒板を使っての、ゲームの仕組みなどの解説だそうだ。


 しかし僕はマキから昼飯時に色々と説明を受けているので、チュートリアルで知れる知識は身につけているつもりだ。


 僕はチュートリアルを聞かない事をルーズに伝えると、ルーズは肩を落として残念そうにしている。


 「そうですかニャー。まぁ、もし分からない事がありましたら、中央街の図書館に足を運んでくださいませニャ。そこに行けば、この世界の色々な事を知ることが出来ますニャ」

 肩をがっくりと落としたまま、ルーズは説明を続ける。


 「では、これから初期スターの設定と、特典の授与を行わせていただきますニャ。まず、この120ある基本スターの中から、お好きなスターを12個選んでくださいませニャ。その際、一つは職業スターを選ぶのもお忘れニャく」

 ルーズが横にある黒板に触れると、おびただしい量の文字が黒板に書き込まれていく。


 スター


 この12☆Worldの特徴の一つ。

 他のゲームでは、スキルやアビリティと呼ばれるモノと、ほぼ同じような意味だ。


 12の基本職スター。

 54の特技スター。

 54の補助スター。

 その他、職業によって選べる武器や、職業特技スター。


 合わせて120以上のスターを組み合わせて、育てて、ゲームを進めていく。


 プレイヤー自身にもレベルは存在するが、このスターを上手く育てていかないとゲームを進めるのは困難らしい。


 「んー職業かー」

 僕は腕を組んで悩む。


 このスターを選ぶ中で、一番重要なのは、職業スターだそうだ。


 選んだ職業によってゲーム内で出来る行為が変化するし、HPやMP、攻撃力などのステータスに補正がかかる。


 たとえば、戦士になれば、筋力が上がるので重い斧や大剣を振り回す事が出来るが、MPにマイナス補正がかかるため魔法は使えない。


 逆に魔法使いになれば知力やMPに上昇補正がかかるので強力な魔法を使う事が出来る代わりに、筋力が下がるため杖や短剣などの軽いモノしか装備出来ない。


 まぁ、戦士と魔法使いの職業を選ぶ事で、大剣を振り回しつつ、魔法を唱える事も出来るらしいが、ステータス補正がお互いを相殺しあって、あまり賢い選択とは言えないらしい。


 「なぁ、この中で一番走れる職業ってなんだ?」

 僕はルーズに聞いた。


 よくよく考えたら、僕は,ナンバーワンプレイヤーとかを目指しているわけではない。

 ただ、この現実よりも現実と言われる12☆Worldで、走れない鬱憤を晴らしたいだけなのだ。


 「ニャ!? 走るんですかニャ!? ニャー……まぁ、動き回りたいなら、SP (スタミナポイント)の補正が高い職業ですかニャ?」

 せっかく異世界の空気を味わえるのに、走りたいなんて言い出す奴は珍しいのか、ルーズは少し驚きの表情を見せた後、いくつか職業の候補を出す。


 「えーと、サク様の希望だと、戦闘系職業なら、旅人、忍者、狩人、盗賊。

 生産系の職業ですと芸人さんなんかもSPは高いですニャー。騎士になれば、動物の上に乗って行動できますので、行動範囲は広がりますが、サク様の言い方ですと、自分で走って行動したいんですニャ? だとすると、やっぱり最初の5つですニャー」

 とルーズが候補の職業と、それぞれの職業によって変化するステータスを見せてくれた。


 うーむ。


 僕はそれぞれの職業を見る。


 旅人は平均的なステータスで、SPとHPに補正がかかる。

 ステータスの上昇率が低い代わりにほぼ全ての武器と補助スターを付けれる初心者用の職業らしい。


 次は忍者。SPと、行動の早さや正確さを決める瞬発力のステータスが上昇し、攻撃に状態異常の効果が付与する代わりに、防御力やHPが極端に低くなるようだ。


 そして狩人。SPと命中率にプラス補正がかかっていて、代わりにMP や魔力、魔法抵抗力が低くなる。武器スキルも弓矢や銃など他の職業では装備出来ない珍しい武器が多い。

 

 盗賊と芸人は、論外だ。


 盗賊は、別に人からだけアイテムを盗む訳じゃなくて、モンスターの素材なんかも盗めるらしいが、名前の響きなんかやだ。盗みとか大嫌いだ。僕は正々堂々紳士でいたいのだ。僧侶の職業と組み合わせると、義賊とかの上位職になるらしいけど、義だろうが、なんだろうが、人のモノを盗む時点でもうアウトだ。


 芸人は生産職業の一つで、レベルを上げて派生していけば、歌手や俳優になってお金を稼げるらしいが、人前で芸をするなんて無理だ。


 なにそれ恥ずかしい。


 となると、やはり候補は旅人 忍者 狩人だ。


 この3つだと……


 「じゃあ、旅人で」


 僕は初心者向けの、あまりステータスに補正がかっていない旅人を選ぶ。


 せっかくゲームをするなら,走るだけじゃなくて色々やって楽しみたい。

 それなら、あまりステータスが極端にならない方がいいだろう。

 

 他の職業は、なんか色々補正が効きすぎている。


 狩人の命中率なんて、そんなにモンスターばかり倒す予定はない。

 このゲームは鍛冶とか調薬とかで作ったモノを売って遊ぶこともできる。

 強いアイテムの製作にはMPを使うらしいし、MPにマイナス補正がある狩人は止めておいた方がいいだろう。

 忍者は、ある少女のイメージが強すぎて、そいつのファンと思われてしまいそうだから止めておく。走るってより動き回るってイメージだし。


 初心者向けということは、一番遊びやすい職業なんだろうし、SPに一番高い補正がかかっていたのが旅人だ。マイナス補正が無いのもありがたい。


 マキは『VRMMOで一番大切なのはチームプレイ。チームプレイで大切なのは個性。出来ることを極限まで極めた個性を最大限に発揮することで、一人で出来ない大きな事が出来るんだよ。それがVRMMOを楽しむコツさ』

 なんて言っていたが、僕はケガが治るまでの暇つぶしにこのゲームをする気なので、チームやギルドに所属するつもりはない。


 ソロプレイだ。


 ソロプレイでするにはやはり個性よりも万能を目指すべきだろう。


 「かしこまりましたニャ。旅人ですと、専用スターもニャいので、その他のスターを選んでくださいニャ」


 さて、あと11つのスターを何にするか。


 基本スターはゲーム内でも買えるらしいが、一つ12万B(バンコール)もするため、あまり適当に選ぶのも良くないだろう。

 スターを育てるには経験値も稼がないといけないし。


 まず、戦う時に必須な武器スターを選ぶ事にする。

 武器スターを付けていないと、武器でダメージを与える事が出来ない。

 素手で戦うことも出来るが、素手でのダメージに補正がある武道家にでもならない限り、武器で戦う方がいいだろう。


 「えーと、旅人が装備可能な武器は……」

 万能な職業らしく、旅人はほとんどの武器スターを習得出来るようだ。


 「何にしようかなー。あんまり大きな武器だと走りにくそうだし。だとすると短剣かな? けど短剣をモンスターに当てるのって難しそうだ」

 僕は格闘技の経験が無い。

 喧嘩の経験もあることはあるが、好きな性質ではない。

 ゲームとはいえ12☆Worldは現実に近い。

 人より大きな化け物に、刃渡り10センチほどのナイフの刺しに行くなんて、

なにそれ恐い。


 「じゃあ、銃かなー。けど弾代とか高そうだし。反動がキツイんだっけ? マキの話だと」

 銃は遠距離から攻撃出来て、強力な分、撃った後の反動でしばらく行動出来なくなるらしい。

 上位の武器には反動が無い銃もあるらしいが、序盤の銃は反動もキツイし、弾切れも早い。前衛で戦ってくれる仲間がいないとまず戦えない武器との事だ。


 「うーん。遠距離と言えばあとは弓だけど、弓も持ち歩くのは大変そうだしなー……お?」

 とここである一つの武器スターに目が行く。


 これは良い。

 持ち運ぶのにコンパクトだし、モンスターに近づかなくても攻撃できる。

 何より旅人っぽい。

 旅人というか、冒険家?

 僕はその武器スターを選び、残り10個のスターを何にするかまた考える。


 「あとは、やっぱりこれだよな」

 僕は、マキにあらかじめ聞いておいたスターを選ぶ。

 「職業スター 錬金術師。旅人…錬金術師」

 僕は自然に頬が緩むの感じていた。


 錬金術師は、僕の好きな平成マンガの主人公の職業だ。

 錬金術師が作ると言われる賢者の石を題材にした小説も好きだし、本当平成のファンタジーは傑作ぞろいだと思います。

 100年前の作品でも、超面白い。


 12☆Worldだと、錬金術師は生産系の職業に分類されるので、僕の好きなマンガみたいに地面から槍を生やしたりして戦えないみたいだが、MPを消費することでアイテム同士の合成が出来るらしい。


 「錬金術師ですかニャ。ではどんなアイテムを合成したいのか選んでくださいニャ」

 と錬金術師専用の職業特技スターをピックアップして見せるルーズ。


 そうか、確か生産系の職業は、その職業と一緒に、細かい分類のスターを選ばないといけないんだったな。


 たとえば、武器を生産する鍛冶職をしたい場合。


 職人という職業スターを選んだ上で、さらに職人専用の特技スターの中から、鍛冶のスターを習得するのだ。

 すると、鉄を打って武器を作り、販売することが出来るようになる。


 錬金術師の場合、金属と金属を化合する調金や、薬草などを混ぜて薬を作る調薬、

食材を混ぜる調理なんかもある。


 「じゃあとりあえず」

 僕は2つのスターを選択する。

 

 薬を作る調薬と、食事を作る調理だ。


 調理を選んだのは、料理が僕の趣味だから。

 そして調薬を選んだのは、小説の影響だ。

 薬草からポーションを作ってぼろ儲けなんて、この手のゲームを題材にした小説の主人公が良く通る道。

 ふっふっふ。お金持ちになれそうだ僕は。


 「さて、あと7つか」

 僕はスターの一覧を見る。

 何がいいか悩んでいるとルーズが、何かモジモジと言いたそうにこちらを見ている。


 ってか距離が近い。

 そんなにカレーの匂いが好きなのだろうか?

 「……どうした?」

 僕はルーズに聞いた。 


 「いえ、あのー、サク様は走りたいのでございますニャ?」


 「ああ、そうだけど」


 「でしたら、ニャんで走りのスターを選らばニャいのかニャーと思いまして」

 ルーズが苦笑いしながら首をかしげる。

 

 何!?


 走りのスターだと!?


 もう一度スターの欄を見ると、確かに特技スターにスター 走りがあった。


「そういえば、マキが言っていたな。特定の行動をするにはそれぞれスターが必要だって」


 走りのスターの近くには、ジャンプや泳ぎ、木のぼりなんかのスターがある。


 スター 買い物 とか スター 販売とかあるけど、もしかして買い物するのにもスターがいるのか?

 とか思っていると


 「別になくても走ったり出来ますが、速度は一定ですし、正直遅いですニャ。いくら他のスターのレベルを上げても早く走れるようにはならニャいですし……」

 だからチュートリアルは聞いて欲しいニャー!とルーズ。


 ふむ。

 つまり、行動自体は出来る事は出来るが、スターが無いと上手く出来なかったり、一定の範囲までしか出来ないという事か。


 「じゃあ、とりあえず走りとジャンプのスターを習得っと。あと5つか」

 こう考えると、選べるスターが12って多いな。


 どうするか、また職業スターでもとるかと悩んでいると、ちょうど5つ1セットのようなスターを見つけた。


 「感覚UPのスターか。コレでいいか」

 僕は聴覚UP 視覚UP 嗅覚UP 味覚UP 触覚UPの五感UPスターを習得する。


 なんか、初めは慎重に選ぼうかと思っていたが、最後は適当になってしまった。


 (まぁ、いいか)


 僕は黒板にあるスターの決定ボタンをタッチする。


 「はい、コレで基本スター12が決まりましたニャ。この基本スターを育てて、この12☆Worldを楽しんでくださいニャ」


 「では、次は課金特典でございますニャ」




2012/07/26 改稿

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