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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月8日(金) パン戦争☆土の牛☆マスター
68/85

第66☆

 「お願いします。どうかスターを元に戻してください」


 「いや、無理じゃから」


 願いを聞き入れてもらうため、人として最大限出来る誠意を見せる方法として僕が選んだのは、土下座でした。


 しかし、そんな僕の土下座を見ても、僕の願いを聞き入れてくれない、青ネズミ。


 「ぞんなぁあ……お願いしますよぉおお……痛い目にあいたくないでしょ……僕があぁああ」


 「いや、そんな事言われてもなぁ……スター自体消えてしもうたしなぁ」


 ミズネの腕を持ち、ブンブンと振る僕。


 「もう! いい加減にしなよ!」


 マキが僕を背中から抱きついて、ミズネから引き剥がそうとする。


 「だって! だって! やっと痛くないと思ったのに! ようやくマトモにゲームの世界を楽しめると思ったのに!」


 またあの地獄の痛みを味わうのか!? 嫌だ! 絶対嫌だ!!

 僕は手を顔で覆い、メソメソと泣いた。


 「大丈夫だから! これから、第二の街までは私がサク兄ぃの事守るから! どんな奴も私が倒してあげるから」


 「ホントかぁ……」


 マキの顔を見る。

 ああ、天使に見える。


 「うん。何があっても、サク兄ィの事は、私が守るよ」


 「マキィイイ!」


 僕はマキに抱きついた。

 よくよく考えると、別にマキに守って貰わなくても、このままゲームをログアウトすればいいし、そもそもゲームをしなければいいのだが、ノリを優先してみた。


 「おふぅう……と、年上の男性が、サク兄ィが泣きながら甘えてきた……た、耐えろ私の理性」


 などとマキがほざいていたが、まぁ、ノリを優先しよう。


 「……では、この件はコレで終わりでよいな。それではサク。これはわしからの贈りモノじゃ」


 とミズネは輝く玉を取りだした。


 「……これは?」


 「【子の守玉】じゃ。スターの合成、もしくは強化をおこなったモノに、進呈しておる」

 

 僕は、ミズネの持っていた【子の守玉】を受け取る。

 【子の守玉】は、青色の透明なガラスのような素材で出来ていて中に《子》の文字が見えた。


 「これが、12億を手に入れるために必要な、十二支の宝……」


 ゴクリと喉を鳴らす僕。

 12億を手に入れられるつもりは毛頭ないが、いざその可能性を提示されると、ヘンな感じだ。

 欲が出てくるというか、僕でも12億もらえるんじゃないかという期待感というか……


 「ソレを持っておるのは、お主で314人目じゃな」


 「多いな!?」


 いや、少ないのか? 一応200万人が遊んでいるゲームだし。

 ただ、コレで僕が12億を手に入れる可能性は消えたな。


 「ちなみに一番最初は私達だよ」


 エヘンと胸を張るマキ。


 まぁ、そうでしょうね、トップクラスのギルドだしね。


 「ふん……そんなモノを貰って何を喜んでいるのか知らんがな……皆聞きたがるから順位を教えているが、もっといいモノがあるだろうに……」


 とブツブツというミズネ。


 「もっといいモノって、例えば?」


 なんとなく気になったので、聞いてみる僕。


 「ふん! そんなモノに心奪われるような奴に今言っても何も分かるまい……まぁ、お主なら、もしかしたら、時期が来たら分かるようになるかもしれんがな」

 

 ちゅっちゅっちゅと笑うミズネ。


 「さぁ、そろそろ行け……アビス・ケルベロスがまた倒された。正式な冒険者が来るようになって、もう4日目。わしの所にも訪問者が増えてくる頃じゃ。またスターのレベルが上がったら、わしの所に来い。強化と合成をしてやるわい」


 そして、僕達はミズネの小屋を後にした。

 途中で、騎士の格好をした集団とすれ違ったが、マキの姿を見るなり、盾を構えて、臨戦態勢になった。

 しかし、何も起きず、そのまま僕達は森を出て、第二ステージにあたる愛見の草原へとやって来た。


 「……あの騎士たちとなんかあったのか?」


 ほわちゃんに乗って移動しながら、マキに聞いた。

 明らかに、あの森ですれ違った騎士たちは、マキに敵意を持っていたからな。

 マキは僕の腕の中で、片手を高速に動かしながら、草原の敵を殲滅している。


 《プレーリー・ゴブリンを倒した。4B獲得。プレーリー・ゴブリンは【子鬼の布】を落とした》

 とか表示されているが、もう慣れたし、戦うのは恐いので、特にツッコミはしない。


 「んー……。別に、アイツら、テンプル騎士団っていうギルドなんだけど、私たちをしつこくギルドに誘って来たから、一度殲滅しただけだよ」

 

 こともなげに言う、マキ。

 まぁ、実際。別に大した出来事でも無かったのだろう。


 「しかし、マキを誘うとか、命知らずにも程があるな……」


 星空12の強さは、僕でも知っている。

 主にマキが見せて来た、発売前のβテスターによるプレイヤー同士の戦いの映像のおかげなんだけど。


 「βテストの時は、ほとんどのプレイヤーは【マスター】について知らなかったからね……正式サービスが開始されて、説明書にも乗るようになって、使えるようになったから、自信でも付いたんでしょ。吹けば飛ぶような軽い自信だったけどね」


 「……また【マスター】か、そろそろ、ソレが何なのか、教えてくれないか」


 ずっと疑問だった。

 だいぶ前から、聞いている気がするが……


 「良いけどさ。ちょっとココじゃ難しいかも……言葉だけじゃイマイチ分かり……あ!」


 と、マキが声を出した。

 マズイ! といった感じの声だ。


 「すげぇ嫌な予感がするんだけど、何した?」

 

 僕はマキを睨む。

 

 マキは困ったような顔をしながら、僕を見る

 

 「えーっと、クナイを投げて、草原の敵を殲滅していたんだけど……」

 

 「だけど?」


 「……ヤバい奴に攻撃当てちゃった」


 テヘッと舌を出すマキ。


 「……ヤバいってどれくらいヤバいんだ」

 

 ふつふつと湧きあがる感情を押させて、マキに聞く。

 ドドドドド……と、地面が揺れている。


 「えーっと……このまま戦ったら、普通に皆殺しされるくらい?」


 地面の揺れがさらに大きくなる。

 僕はマキを睨むのを止めて、何か近づいてくる気配のする方向を見た。


 「…………冗談だろ?」


 僕が見た方向には、1キロ先程で土煙が上がっていた。

 その土煙の中には、大型トラックと同じくらいの大きさの生き物がいた。

 その生き物が走りながら近づいて来ている。額にクナイが刺さっているように見えるその生き物は、怒っているようで……


 「……愛見草原最強のモンスターで、十二支の一匹……【憤土の牛】だね♪」


 「♪じゃねーーーー!! ってか、この前倒したって言っていたよな? 倒せないのか?」


 「んー……さすがに、サク兄ィと2人きりじゃ無理かな? βテストの終盤では、ソロ狩りもしてたけど、正式サービスになって【憤土の牛】も強くなったし、私の装備も弱くなったし」

 

 「じゃあ、逃げるぞ!」



 【憤土の牛】から逃げるために、ほわちゃんを右に旋回させて、走らせる。

 しかしほわちゃん超遅い!

 ドンドン【憤土の牛】が近づいてくる


 「ちょっと! コレ、僕が走った方が速いんだけど! これ以上スピードでないのか?」


 「はぁ!? ほわちゃんは、第2の街で買える、現状一番早い乗りモノなんだけど!?時速30キロの超ハイパースゴイ恐竜さんなんだよ!」


 

 「遅いな!!」

 

 僕はマキを抱えて、ほわちゃんから降りる。


 「笛を吹けば……戻ってくるよな。このまま僕が走って逃げるぞ!」


 「ちょっと……!?」


 マキを抱えて、地面を蹴る。

 加速して、グングンと【憤土の牛】を引き剥がしていく


 「……ホントに、ほわちゃんより速い……【マスター】使ってるじゃん」


 「ああ!? なんだって!?」


 「なんでもなーい!」


 ギュっとマキが力強く抱きついてくる。

 ありがたい。コレで走りやすくなる。


 さらに加速しようと地面を蹴った瞬間。僕の目の前に黒い集団が現れた。


 


 「まてぇえええええい!」


 「うおおおお!?」


 急ブレーキをかける僕。

 僕の目の前に現れた黒い集団は、あのヘンタイ黒忍達だった。

 そのヘンタイ黒忍のなかでも一際豪華な装備の……隊長だっけ? 殺されたけど、復活したようだ。

 が、泣きながら、僕に話しかけてくる。恐い。



 「な、なんだよ! 危ないし、危なくなるだろ! そこをどけ!」


 「ならん! それ以上……ミカ様とイチャイチャしてはならん!!」


 「それどころじゃねーだろ!!!」


 トンデモないことを言いだす黒忍隊長。

 イチャイチャしてないし、それ以上に、そんな事で逃走を止められても困る。


 「だいたい、お前らマ……ミカの護衛だろうが! 今はミカのピンチ

でもあるだろうが!」


 「心配いらん! 我々がミカ様をお守りする!!」


 グッとサムズアップして、僕の腕の中にいるマキにニッと笑う隊長さん。

 マキはウザッっと顔をしかめている。


 「行くぞ皆のモノ! 我々の主人! 我々の命! ミカ様の危機である! 全身全霊で、ミカ様をお守りするために戦うのだ!!」


 オオオオ!!と雄たけびを上げて【憤土の牛】に突っ込んでいく黒忍達。

 僕達はソレをただ黙って見ていたのだが……


 「超必! 紅蓮……ぐわあああああああああ!?」


 「解放せよ! 我が腕に宿り……ぐへぁああああ!?」

 

 「星☆空★裂王斬魔……ひゃぇえええええ!?」

 

 「うぉおおおおお……!! その身に受けよ! 我が主人の愛! ミ・カ・た・ん! ラブストリーム!!!! ほうぇえああああああ!?」


 【憤土の牛】の人間大のツノの一撃で見事に散っていった黒忍達。

 マキも

 

 「……【マスター】の無駄使いだよ」


 と呆れている。

 そして、そんなコントみたいなやられっぷりを見ていたせいで、【憤土の牛】に追いつかれてしまった。

 【憤土の牛】は、大型トラックくらいの大きさで、全身が茶色針金のような毛でおおわれている。

 とても美味しそうに見えないその体は、筋肉の隆起がコレでもかと見られ、黒忍達を葬ったツノは、黒く輝いている。

 

 そんな、【憤土の牛】と僕達の周りに、白い境界線が張られ、逃げられなくなった。


 「……どうすんだよ、コレ……」


 「ココまできたら、やるしかないね」


 マキを降ろす僕。

 マキはクナイを構え、僕は【翁】を手に持つ。


 「どうする? 痛いのが嫌だったら、私が首を撥ねて、安楽死させてあげるけど?」

 

 とんでもない事を言い出すマキ。

 なんて発想しやがる。


 「いや、さすがにソレは無いな……2回も首を撥ねられたくない。ソレに、いくら痛くても、大切な妹をこんなところで1人にするのは、兄貴じゃない」

 

 ニヤリと笑う僕とマキ。


 「それじゃあ、いっちょやりますか……少しでも隙を作ってくれたら、私の【マスター】で決めれるんだけど。そこまで期待して無いから、適当に逃げながら、そのヤリで突いていてよ」


 とマキ。


 「生意気な……まぁ、実際僕は足手まといだろうからな。適当に、邪魔しない程度に頑張るよ」


 マキと拳を合わせて、僕は後ろに、マキは前へ飛ぶ。


 【憤土の牛】は、僕達が別れた瞬間、後ろ脚で大きく立ち上がり……


 「《ドモオオオオオオオオ!!!》」


 と心臓が止まるくらいの大きな声を出しながら、持ちあげた前足を地面に叩きつけた!


 「おわああああ!?」


 激しく揺れた地面に、僕はバランスを崩す。


 そんな隙だらけの僕を【憤土の牛】は見逃すはずも無く。


 「ドモオオオオ!!」


 と【憤土の牛】が突っ込んで来て


 「危ない!」


 と、ドコから来たのか、前に向かったはずのマキが僕を突き飛ばしていて


 「えっ……?」


 僕を突き飛ばしたマキが、【憤土の牛】と接触して


 ゴチョリと、堅いモノと液体が溢れたような音が響いて……


 「マキィ!!!」


 マキが、木の葉のように、宙に舞い上がった。


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