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12☆World  作者: おしゃかしゃまま
2112年7月8日(金) パン戦争☆土の牛☆マスター
66/85

第64☆

 焼ける 燃える 焦げる


 二足歩行の地獄の番犬が放つ、奈落のような色をした炎が僕の全身を覆い、世界を、僕を、黒く染める。


 瞳を閉じ、薄れゆく僕の意識を占めていたのは、この事態を引き起こした妹的存在にどのようなお仕置きをしてやろうかという、健全な兄のとしての精神だった。


 全身が焼けるという、この筆舌に尽くし難い、熱さを、苦しみを、あの小学生に……熱さ……ん?

 そこで、気付く。

 僕の全身を覆っている異常に。


  あれ?


 ……熱くない?


 目をしっかりと開き、もう一度世界を見る。


 世界は変わらず、黒い光で、つまり黒い炎で覆われていたのだが、燃えている、という感覚が一切ない。

 いや、なんとなく、全身を覆っている感覚があるのだが、その感覚は炎が燃えているというよりも、こたつに入っているという表現がしっくりくるような、何とも言えない温かさである。


 なんだ?


 ファイヤー・シープに全身を焼かれた時とのあまりの違いに混乱して、立ちつくした僕。


 そんな、仮にもボスと戦闘中であるのに、あまりにも気の抜けた行動を取っていた僕に、当然と襲いかかるアビス・ケルベロス。


 「げっ!?」


 とっさに腕でカードしたものの、そのまま僕はアビス・ケルベロスに蹴り飛ばされた。

 僕は、木々をなぎ倒しながら数十メートル吹き飛んでいく。


 「いっ…………?」


 倒れた木々を見ながら困惑する。


 なんだ? 一体?


 スピードが落ちて、そのまま地面に転がりながら着地した僕は、自分の体に起きた異常に混乱していた。


 「全然……痛くない」


 立ち上がる僕。

 服こそ、地面を転がったため汚れていたが、体に傷は一切ない。


 ってか、服が汚れるって、スゴイなニボシ。


 しかし、服が汚れるくらいである。


 これだけ地面にこすられたら、全身を細かい痛みが襲うはずだし、何より、アビス・ケルベロスに蹴られた腕など、現実でも折れたんじゃないかと勘違いしてしまうような鈍い痛みがあるはずなのだが……


 と、ココでふと思いつく。

 思いつくというか、思い出す。


 アビス・ケルベロスと戦う前に、マキがしていた行動。

 僕は自身の装備スターを見る。


【装備スター】

 職業 旅人 Lv24

 職業 錬金術師 Lv28

 職業 武道家 Lv3

 職業 何も持たざる者 Lv☆

 走り Lv37

 ジャンプ Lv18

 調薬 Lv23

 格闘術 Lv3

 聴覚UP Lv22

 視覚UP Lv21

 武器 ムチ Lv10

 暴食 Lv☆

 【控えスター】

 

 

 調理 Lv21

 調木 Lv18

 触覚UP Lv41

 嗅覚UP Lv13

 味覚UP Lv16


 触覚UPの代わりに、調薬が装備されていた。


 「コレか……」


 コレで色々説明が付く。

 炎が熱くない理由。蹴られても痛くない理由。そして、今までの、理由。


 そうだ。コレはゲームなのだ。ゲームの大前提。ゲームは人を傷つけてはいけない。

いくらリアルさが売りのゲームといえども、過剰な痛みで、人を苦しめてはいけないのだ。

 傷付くような痛みなど、感じさせてはいけないのだ。

 望まない限り。プレイヤー自ら、痛みのリミッターを解除しない限り。


 「ふっふっふっふっ…………」



 思わず、口から声が漏れる。

 笑える。

 なんだコレ。

 

 今までの、地獄のような痛みが、僕の中でフラッシュバックしていく。

 痛くて、苦しくて、辛くて、泣きたくて。

 そんな思いをしてきたのは、なぜなのか。

 その理由が何なのか。


 全部自分のせいだったなんて……


 パン!


 と顔を叩く僕。

 痛くない。

 そう、痛くないのだ。


 コレが大事だ。


 過去のあれこれを考えるのはやめよう。

 無駄な事は止めよう。痛くない。痛くない。


 「ふぅー……」


 空気と共に、暗い感情を体から出す。


 「すぅー……」


 空気と共に、新たな感情を入れる。


 新たな感情が巡る。回っていく。


 痛かった事は忘れよう。


 そう。今は、痛くない。


 つまり


 「ヤル気出て来たぁあああああああ!!」


 駆け出す僕。


 ドコに?決まっている。


 僕を蹴っ飛ばした。あの舐めた黒いクソ犬人間の所だ。


 「ボッコボコにしてやるぜぇ!!!」


 だって、そうだろ?

 もう痛くないのだ。

 気分は、重厚な鎧を全身に纏った騎士だ。

 これなら、楽しめる。

 ゲームの世界を、戦いを楽しめる!


 「覚悟しろおらぁあああ!!泣いても許さないからなぁ!」


 ヤル気を心に、翁を片手にアビス・ケルベロスの所へ戻った僕が見たのは






 「キャイン!キャイン!」




 涙目に成りながら逃げまどう黒い筋肉三つ首犬と





 「良くもサク兄ィを蹴りやがったなぁ!」




 クナイを片手にソレを追いかける小学生の姿だった。



 「とどめだ! 喰らえ! 桜炎華おうえんか!!」


 その小学生のクナイから、桜色の炎が上がり、あっという間にアビス・ケルベロスを包み込む。


 「アオーン……」


 と、弱弱しく鳴きながら、アビス・ケルベロスは消滅していった……


 「って! なにやってんだーーー!?」


 やっと言葉を出せた僕。いや、正直目の前の光景の意味が分からなくて、一瞬全ての動きがフリーズしていたのだ。


 「……っは!? サク兄ぃに自分の実力を分かってもらおうと、アビス・ケルベロスと戦わせてみたけど、サク兄ぃが攻撃されるのを見てられなくて、つい自分で倒してしまった」


 自分の手をワナワナと震わせながらそんな事をほざく小学生。


 「この自分を抑えられない感情……これが恋?」

 

 「それは……否定しづらいな」


 けど、恋っていうか愛に近いと思うけどな。恋って……こう、もっと憧れとかに近いと思う。少なくても、


 「犬を虐殺するのは恋じゃないな」


 マキの耳を引っ張る僕。


 「痛い痛い痛い! いいじゃん!ビビってたし、私が倒しても良いじゃん!」


 「せっかくヤル気を出していた所を邪魔されたらムカつくだろ!」


 マキの耳から手を離す僕。


 「まぁ、でも勉強になったよ。色々痛かったのは……痛すぎたのは、触感UPを付けていたからなんだな」


 「今更だね……」


 耳を抑えるマキ。


 「触感UPはレベル上げには最適なんだけど、ゲームに付いてる感覚コードの限界を越えちゃうからね……説明書にも乗っているニボシの注意事項の一つだよ」


 「なるほどね」


 さすが地雷スター。ゲームに対するやる気を削ぐまで感覚を上げるとは……

 と感心していると、マキが何かを僕に手渡してきた。


 「……なんだコレ」


 「ポーションだよ。ボスの攻撃を喰らったんだし、回復しなよ」


 とマキ。


 受け取るのをためらう僕。正直いらない。見た所普通のポーションだ。

 普通のポーションなんて、あんなゲロ不味いモノなんて……と思いながら、ある事を思いつく。

 もしかして……


 「……じゃあ、ちょっと貰うか」


 マキからポーションを貰い恐る恐る口を付ける。


 「……普通に飲める」


 ちょっと苦い、濃い目に入れた緑茶みたいな味だ。

 そのままマキから貰ったポーションを飲み干すと、自分でルーキーポーションを取りだし、飲んでみる。


 こちらも、普通のポーションに比べて、少しクセのある味だったが、問題無く飲めた。

 以前は、味覚が破壊されるかと思ったのに……


 「味覚スターを装備していないからか……さすが地雷スターだな」


 今度は口に出てしまった。

 しかし、だ。


 地雷スターを選んでいる自覚はあったが、まさかここまでとは思わなかった。

 僕は、あまり闘いの無い東の島にいたから良かったが、普通に西の島に行って、ポーションとか使わないといけない状況になっていたら、心が折れていたと思うぞ。

 ……まぁ、東の島でも普通に心は折れていたけど。


 と、味覚スターは無くても、口が何か苦い感じがしたので、口直しに、ジュースでも飲もうとしたところで、森の奥から、何かが歩いてくるのを発見する





 「ちゅっちゅっちゅっちゅ……アビス・ケルベロスが倒されたかと思えば、やはりお前だったか……」


 現れたのは、杖を持った、髭を伸ばした1メートルほどの青いネズミだった。


 「……なぁ、アレ。なんだ」


 「アイツは、【子籠の鼠】。十二支の一匹で……スターの合成と進化を請け負う。クエストモンスターだよ」


 「ネズミではなく、ミズネと呼べと言っておるだろうが、まったく……」


 ちゅっちゅっちゅ……と、笑う大きなネズミを見て、僕は思った。







 青色キターーーーーーーー!!


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