第54☆
※注意 この話は人によってかなり気分を害する恐れがあります。
ゴ○○○が平気な人は読んでください。
一応、次の話の前書きに、この話のあらすじを載せます。
僕は走る。足を、腕を、背筋、腹筋、あらゆる筋肉を総動員して走る。
(落ち着け……!)
僕は自分に心の中で言い聞かせる。
聞こえたのは少女の悲鳴。
僕が見ている世界はゲームの世界。
そして禍々しい森の中。
これらの符合が意味するモノは一つ。
「モンスタァーだぁ!!」
12☆Worldを始めて10時間以上。
僕はゲームを始めたのに、一度もモンスターを見ていない。
某竜のゲームシリーズの7でさえ、ココまでモンスターと戦わない事は無かった。
あまり、喧嘩とか好きではないし、トラックくらいの大きさのドラゴンなんかと戦うのは恐いと思うが、それでもゲーム中だし、モンスターと戦いたいと密かに思っていた僕。
森の中から聞こえた少女の悲鳴。
あまりにお決まりのモンスター襲来イベントフラグに心が躍る。体が奔る。
風のように木々を駆け抜け、悲鳴が聞こえた所へ向かう。
「大丈夫か!」
僕は悲鳴をあげた少女の元へ着いた。
少女は7歳くらいで、黒くて肩くらいの長さの髪に緑の目をしていた。
服はカラフルで、ひざ下までの長さのワンピースを着ている。
カラフルなワンピースの少女は、その緑色の目に涙を浮かべて、腰を抜かしながら森の中を指している。
その人差し指は、ブルブルと細かく震えていた。
「……どうした? 何があったか教えて?」
僕は膝まづいて、少女に聞いた。
優しく、穏やかに。
明らかに少女は動揺している。
「あ……あ……」
口をパクパクと動かして、声にならない言葉を出す少女。
よほど恐ろしい目にあったのだろう。
「……大丈夫。大丈夫だから。ほら、コレでも飲んで、落ち着いて?」
アイテムボックスから、【美味しそうなイチゴジュース(錬金)200ml】を取り出して、少女に渡そうとする。
しかし、少女は受け取ろうとしないまま、僕に何かを告げようとする。
「……ゴ、ゴ……」
「ゴ?」
僕は少女の言葉に首をかしげつつ、少女の指差す方角を見る。
そこには、ただ木々が生えているだけだった。
(……まさか、お姉さんとかがモンスターに攫われたとかか? ゴって……ゴブリン?)
マジかよと頭を抱える僕。
ゴブリンと言えば、ファンタジーゲームでの代表的なモンスターでほとんどのゲームで序盤の雑魚敵として登場する。
この12☆Worldでも登場して、雑魚敵であることに変わりは無いが、ただ、雑魚と言っても一番弱い雑魚では無い。
ゴブリンは、西の島で言えば、第2ステージ、愛見の草原で出るレベルのモンスター。
いきなり戦うモンスターとしては、ちょっと怖いレベルだ。
(まぁ、ギリギリ大丈夫か? ノゲイラとも戦ったし、【黄金の竹槍(翁)】もある)
僕は、まだ震えている少女の肩に手を置く。
「大丈夫。僕が何とかするから、何があったか教えて?」
少女は、僕の言葉にこくんと頷き、言った。
「ゴキブリがいたの」
僕はこけた。
「ゴメンなさい、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げる、カラフルなワンピースの少女。手には黄色い布で出来たハンドバックを持っている。
名前はカンナさんと言うそうだ。ちなみに彼女は人間ではない。
「いや、大丈夫。それよりも、コビット族……だっけ?」
森を歩きながら、カンナさんと話す僕。先ほど少し自己紹介をした。
なんでも彼女はコビット族と言うそうだ。
背が小さい種族で、だいたい、大人になっても人間の半分くらいの大きさしか身長が無い。
彼女も、7歳児くらいの大きさしかないが、年齢は17歳。僕とほぼ同い年である。
そういえば見た目も子供というより、大人を小さくした感じだ。
「はい。この森を抜けた先に、私たちコビット族の村があるのですが、そこに向かう途中で、その……あの、例の黒い悪魔がいて……」
うつむきながら、悲鳴を上げた理由を話してくれるカンナさん。
「でも、森を抜けた先の場所で、ゴキブリを見たんなら、さっきの場所で悲鳴を上げるっておかしくない?」
カンナさんが倒れていた場所から、10分は歩いている。
僕は悲鳴を聞いたからあそこに行ったわけで、距離がかなり離れているが……
「いえ、森を抜けた先では我慢して、走って逃げたんですけど、走り疲れて木に手を置いて休んでいたら、その木にあの……黒い暴風が……」
「ああ、そういう事」
だから、彼女は木を指していたのか。
「けど、たかがゴキブリを見ただけで、あんな悲鳴を上げるなんて、カンナさん、本当に17ですか? あっはっはっは」
「もう! 笑わないでください! しょうがないじゃないですか! あんなの見た後で、また、一匹でも見たら、悲鳴くらい誰でもあげます!」
「はいはい。まぁ、僕に任せて下さいよ。ゴキブリの一匹や二匹……」
僕達は森を抜けた。その先に見た光景は……黒い洪水だった。
ゴキブリ達が……大量の黒き覇王達が、まるで黒い川のようにうごめいている姿だった。
「……………………失礼します」
僕は踵を返して森に戻る。戻ろうとした。
けどカンナさんが僕の○ロスのような服の襟を掴んでソレを許さない。
「いやだぁ。いやだぁ。おうちに帰してぇーーー!」
泣き叫ぶ僕。なんだよアレ。恐いよ。キモいよ。死んじゃうよ。
「た か が 、ゴキブリなんでしょ? 何とかして下さいよ」
「一匹や二匹って言ったぁ! 僕は一匹や二匹って言ったんだぁ! あんな大量の黒い魔王だなんて聞いてない!」
「サクさん、冒険者なんですよね? 冒険者は困った人を救うのが仕事ですよね? 私は困っているんです。 この【桜の蜜】を早く村に持って帰らないといけないんです。だから、あの大量の黒い混乱をどうにかしてください!」
「知らないよ! そんな設定! 冒険者なんて設定聞いてないよ! だいたいなんでゲームの中で! 楽しい楽しいゲームの中で! 連邦の黒い兵器を退治しないといけないんだよ!」
そのまま10分間ごねました。
「……やるしかないのか」
僕達は今、森の中にいる。
あの、最終兵器G達は、道にあるちょっとした段差に沿って動いているようで、森の中に入れば、姿は見なくて済む……かさかさと音は聞こえてくるが。
あの、黒光りの魔獣たちは、ムービング・コックローチというそうで、年に1回、ああやって、僕達のいる【マリンの森】から南の【ロストルームの森】へ一週間かけて大移動をするそうだ。
カンナさんはどうしても今日中に【桜の蜜】を村へ持って帰らないと行けないんだって。
だから、無理やりにでもあの黒い破滅を渡らないと行けないわけだが……
「でも、どうやって、あの黒い銃弾の雨を抜けるんですか? 幅は10メートルくらいありますが」
「んー、コレを使おうかと」
僕は【黄金の竹槍(翁)】をカンナさんに見せる。
「黄金の……竹ですか? コレをどうするんですか?」
「コレ伸縮自在に伸びるから、あの黒い流星の中に指して飛び越えようかと」
餓死の川を越えた方法だ。たぶん同じ事が出来るはずだ。
「え……大丈夫ですかソレ?」
「うん。幅もアレくらいなら余裕で越えたから、大丈夫なはずだよ」
僕は立ち上がる。
「じゃあ、僕が初めに飛び越えるから、カンナさんは、そのあと僕が伸ばした竹に掴まってよ。縮めて渡らせるからさ」
「……油の王が付いた奴を触らないといけないんですか?」
嫌そうな顔をするカンナさん。
「大丈夫。長く伸ばして、ブラックナイトメアに触れて無い所を掴めるようにするからさ」
颯爽とぼくは森を抜けて、黒き光の川の前に立つ。上を見ながら。見れません。とてもじゃないが直視出来る光景ではない。ああ、空が青い。
「よぉーし! 伸びろ!」
僕は【黄金の竹槍(翁)】に命じた。
【黄金の竹槍(翁)】は、僕の意を汲んで、その身を……伸ばさない。
「……え? なんで伸びないんだ?」
ぺチぺチと【黄金の竹槍(翁)】を叩く。
故障かな?
あるのか?
壊れないんじゃなかったけ?
「おーい。伸びろよー。伸びてあの黒くて平べったい奴の所……っぶ!」
急に【黄金の竹槍(翁)】が伸びた。
僕の方に。僕の顔面に。
切っ先じゃなくて、柄の方だが。
……コイツ、もしかして
「もしかして、あの黒い大群に突っ込みたくないのか?」
【黄金の竹槍(翁)】は、僕の手の中で小刻みに震えた。
そうか、っていうか
「お前、意思があるの!?」
また小刻みに震える【黄金の竹槍(翁)】
マジか。なんだこの設定。
「でも、お前は武器だからな。お前のご主人様は僕だ。僕の言うことは聞かないといけない。そうだろ?」
反応しない【黄金の竹槍(翁)】
「だから、いいか? 僕達はあの黒い濁流を越えないといけない。超えるためには、お前の力が必要だ。お前が、あの黒の魔弾の中に……おふっ!」
また伸びた【黄金の竹槍(翁)】
伸びた先は、僕の黄金。
僕はその場で悶絶した。
「よし、こうなったら、諦めよう!」
「だめですよ!?」
10分間ほど悶絶していた僕は、気を取り直して森に戻っている。
「って言っても、【黄金の竹槍(翁)】は言う事聞かないし、他に渡る方法思いつかないし」
「そんな……他に無いんですか? こう渡るんじゃなくて、あの黒き災厄を吹き飛ばすとか、殲滅するとか」
色々アイデアを出してくれるカンナさん。
けどなぁ
「僕、魔法とか覚えて無いし、【黄金の竹槍(翁)】が最強の武器だしなぁ」
闘いに使えそうなスターなんて無いし……
【暴食】で食べる? 死んだ方がマシだ。
さっき取ったスターも、レベルが低いから、使えたもんじゃないし……
「あ、アレがあった」
僕はステータス画面で、スターを切り替える。
スター【調木】
木を変化させたり、加工するスターだ。
森に行く事が多かったし、岩壁から落ちた時に、森林が広がっていたから、使う機会もあるかと思って習得したスター。
コレと、【百年魔桐(松)】、対虫効果のある木を使えば、虫よけの何か出来るのではなかろうか。
さっそく、試す事にする僕。
っと、その前に。
「カンナさん。この森で虫よけの植物ってある?」
一応聞いておく。他にあるなら、それで何か出来るかもしれない。
「ええっと、私が聞いたことがあるのは、魔桐くらいですね。魔杉は人型の魔物。魔松は精霊に強くて、魔柊は悪魔の魔物に強いと聞きましたが」
ふーむ。どうやら、虫よけ、対虫効果のあるのは、【百年魔桐(松)】だけのようだ。
「じゃあ、まずはこの【百年魔桐(松)】を……調木しますか」
【百年魔桐(松)】は、調木しか出来なかった。
手にある桐に魔力を込める……フリをする。
すると、僕の手にあったタダの枝だった桐は姿を変えて、綺麗な直方体の木片に変わった。
この木片は【百年魔桐(松)(錬金加工済)】というそうだ。
「……ん? 今度は分解が出来るのか」
調木が選択出来なくなって、分解が出来るようになっていた。
……新スターの調木の出番が終了した。速い。
とにかく、その木材を今度は分解してみる。すると、僕の手には大きめの瓶が
瓶には【百年魔桐(松)の木くず】と書いてあった。
木くずって!
木くずから分解は出来なかった。
(どうしよう……って調薬が出来る?)
分解の変わりに、今度は調薬が出来るようになっていた。
なんだろう。このたらい回しにされている感じ。
とにかく今度は調薬だ。瓶に魔力を込める。
すると、僕の手に白い玉が現れた。
【虫よけ魔玉(錬金)】
(アイテム)虫が嫌がる魔力を発する玉。使うと白い煙状の魔力が身を覆い、使用者を守る。効果時間30秒。
「こんなん出来ましたけど」
出来た白い玉をカンナさんに見せる。
カンナさんはソレを手に取り、しげしげと見つめて、無言で頷いた。
匠か!
とにかく、合格を貰えたようだ。
何に合格したのか分からんが。
「じゃあ、とりあえずコレを……」
「30個作ります」
僕は周囲の桐の木の枝を折りまくった。




