第52☆
「いや、無理だって、諦めろって僕」
未だに後ろ髪を引かれる思いで、しかさんのお店の方を見る。
しかさんのお店に出来ていた行列は、あの道にいた人達だけじゃなく、延々と続いていて、目算だけでも軽く1000人を突破していた。
120名の限定で1000人……しかも、7000人以上の人から残る事を選んだ、厳選された1000人である。どう考えても無理だ。
けど、それでも、諦めきれない僕がいるのだ。チクショウ!
なぜって? ソレは決まっている。
(巨乳美少女……ッ!!)
行列から離れて、一応しかさんのお店、ディアホースを確認しにいった僕は、行列に並んでいる人達の声を聞いたのだ。
『なぁ、お前に連れられて並んでいるけど、しかさんってどんな人なんだ? 男か? 女か?』
『ん? なんだ、知らないのか。女だよ。超美少女。天才クリエイター。[蒼艶のしか]彼女、顔はいつも半分ぐらい布で隠しているから、オレも素顔は見たことないけど、ただな。胸が凄いんだ。作業をするからいつも薄着なんだけど、その薄い布を破らんばかりのミサイルが、彼女が作りだした最強の武器だって言う人もいるくらいだしな。まぁ、実際彼女が作る武器が、課金とか、高難易度イベントクリアの武器を除いて、今の所12☆Worldの中でダントツで強いからな。マスタークラスの職人だよ』
『へー。けど、顔半分隠してちゃカワイイかなんて分からないだろ』
『そんな事言ったら、お前の好きなミカちゃ……たん。悪い怒るな、メンドクサイ』
『ミカたんはなぁ! 顔が半分しか見えなくても、そこら辺に歩いている動く雌豚共が全力で化粧をした10兆倍はカワイイんだよ! ミカたんをなめんなぁ! オレのクナイのサビにしてやろうかぁ!? ああぁん!?』
『やめろ、悪かったから。しかもお前生産職メインだから、あんまり強くないだろ。てか、しかさんも、顔半分しか見えないけど、目とかクリクリしていて、めちゃくちゃカワイかったぞ。少しその、ミカ……たんにも似ていたような』
『てめえぇ!!!! ミカたんが! この世の最高傑作であるミカたんが、そんな脂肪のカタマリにしか価値の無い女に似ているなんて、あるわけがないだろうがぁ!! このクナイでタダの肉のカタマリにしてやろうかぁ!』
『馬鹿! こんな、しかさんのファンが大勢いる所でそんな事を大きな声で言ったら、お前がただの肉のカタマリになるぞ! だいたい、お前の方が価値が無いくせに……』
『おうおうおう!そこのガキども、なんか今聞き捨てならない言葉が聞こえてきた気がしたが……誰の何が脂肪のカタマリだって?』
『す、すみません。こいつが勝手に言ったことですから、僕は関係ありませんから……ギャーー!』
といった会話が聞こえた。
うん。後半はなんか僕もいらない気がする。
ちなみに、この会話の後に始まった乱闘に紛れて列に並ぼうとしたけど、すぐに追い返されました。チクショウ。
本当に、チクショウだ。
せめて、しかさんが、男性とか、普通の女性だったら諦めもつくのだが、超美少女。
しかも巨乳。
一度でも運命を感じてしまった僕の心は、激しく暴れているのだ。狂う程に、無茶苦茶に。
チクショウ! チクショウ! チクショウ!
「早くパスコードを入力してくれませんか?」
「あ、すみません」
受付のお姉さんに怒られて、現実に……、いやゲームの中だけど、現実に戻る僕。
お姉さんに急かされてホログラムを操作する。
僕は今、中央広場に戻ってきている。
戻ってきて、何をしているかと言うと、キャンペーンのコードを入力するためだ。
ほら、あれだ。あの、その。たなプレの……な?
言わせんな! 恥ずかしい!
……その。本当に恥ずかしい。
唯一のたなプレが、150円のジュースに付いているクジ一枚だなんて……
なんか、涙が出そうだ。
パシリをして、たなプレがシールで、墜落死して、運命の人に会えなくて……
だから、いっそ嫌な思い出はさっさと済ませてしまおうと、僕はこのキャンペーンをシールに書いているコードを入力しに、中央広場にあるキャンペーンコード引換所に来たのだ。
どうせ、ココまで不運が重なっているんだ。このシールのコードも当たらないだろう。
ホログラムに、プレエク3に読み込ませてあったコードを入力する僕。
ちなみに、ミツヤリーの12☆World共同キャンペーン。3×4の力は折れないぜ!の商品はこんな感じ。
C賞 ルーキーポーション×3 応募者全員
B賞 マジックポーション×3 1200名様
A賞 3つの蜜のスポーツゼリー×3 360名様
特賞 スター引換券×3 120名様
ハズレは無しで、最低でもルーキーポーション3つは貰えるのだ。
飲まないけど。あんなマズイ物飲めません。
特賞のスター引換券、A賞のスポーツゼリーなんて、喉から手が出るほど欲しいが、無理無理、当たらない。当たるわけ無い。
そんな感じでやる気なく、入力ボタンを押す。
すると、画面が切り替わり、C賞 ルーキーポーション×3などと書かれた文字が画面上を上下に周り始めた。
お守りのルーレットと同じ感じだ。
勢いよく回り始めたルーレットは、次第にその動きを止め始める。
B賞 マジックポーション×3
A賞 3つの蜜のスポーツゼリー×3
C賞 ルーキーポーション×3
C賞 ルーキーポーション×3
と動いていき、C賞 ルーキーポーション×3でその動きを完全に停止した。
やっぱりか、と諦めの境地で天を仰ぎ見た僕だったが、ルーレットから流れた、あと一息といった感じのピコンとした音につられて、画面を見直す。
すると、そこには
特賞 スター引換券×3
と金色に輝く文字が……!
「おめでとーございまーす! 特賞でーす!」
先ほどまで、若干不機嫌そうだったNPCのお姉さんがにこやかな笑顔と共に鐘を鳴らす。
「マジかよ……!」
声が震える。マジか……やっぱり
澤木さん、マジ天使!




